[O-0419] 加速度計を用いた機械的ストレス測定の信頼性および妥当性検討
キーワード:変形性膝関節症, 加速度, 機械的ストレス
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)の発生要因として慢性的に膝関節に加わる異常な機械的ストレスがあげられ,それが膝関節に慢性的に加わる事で,直接的軟骨基質障害と軟骨細胞の代謝変化を引き起こし,関節破壊に至る。その結果,関節変形が進行し,痛み,膝関節伸展制限,大腿四頭筋筋力低下などが引き起こされ,歩行障害を引き起こす。
機械的ストレス計測には,三次元動作解析装置と床反力計を用いて外部膝関節モーメントを算出している報告が多いが,高価で,場所も制限されるため,臨床で使用するのは難しい。一方,加速度計を用いた機械的ストレス計測も報告されている。木藤らは,膝OA患者の加速度は立脚初期において多峰性の波形を示し,パワースペクトルは健常者が二峰性であるのに対して,膝OA患者は一峰性であったと報告している。加速度計は非侵襲的で簡易に計測できるため臨床応用に期待されているが,加速度計を用いた機械的ストレス計測の妥当性を検討している報告は少なく,外部膝関節モーメントと比較したものは見られない。
また機械的ストレスは力として捉える必要があるため,加速度だけでなく,運動方程式(F=m×a)を用いて,側方加速力(以下:スラスト力),および前方加速力(以下:ラジアル力)としても捉える必要がある。そこで,今回は外部膝関節モーメントと加速度および加速度データから算出したスラスト力,ラジアル力を比較し,加速度計を用いた機械的ストレスの計測の信頼性および妥当性について検討する。
【方法】
対象者は健常な成人男女16名,年齢23.3±1.8歳,身長163.6±7.5cm,体重58.4±9.2kgであった。被験側は左で,歩行条件は10mの自由歩行とした。3歩行周期平均を1試行データとし,3試行の平均値を個人のデータとした。外部膝関節モーメント計測には,アニマ社製三次元動作解析装置と床反力計を用いた。加速度計測はマイクロストーン社製加速度計を膝関節外側に取り付け行った。得られたデータは処理用PCに取り込み,立脚初期における外部膝関節内反モーメント,外部膝関節屈曲モーメント,スラスト力(加速度側方成分×体重),ラジアル力(加速度前方成分×体重)の最大値を算出した。なお,歩行周期は床反力計のデータから特定した。統計ソフトにはSPSSを,解析には級内相関係数ICC(1.3)を用い,加速度データの信頼性を検討した。さらにピアソンの相関係数を用い,外部膝関節内反モーメントとスラスト力,外部膝関節屈曲モーメントとラジアル力の関連性を検討した。有意水準は0.05未満とした。
【結果】
側方加速度のICCは0.967,前方加速度のICCは0.935であった(p<0.01)。外部膝関節内反モーメントと加速度(r=0.18),外部膝関節屈曲モーメントとラジアル力(r=0.045)には,有意な相関はみられなかった。外部膝関節内反モーメントとスラスト力(r=0.66)に中等度の正の相関がみられた(p<0.05)。
【考察】
本研究結果より側方加速度,前方加速度共にICCは高い数値を示し,加速度計測は高い信頼性があると考えられる。
また,外部膝関節内反モーメントと外側加速度に相関はみられなかったが,外部膝関節内反モーメントとスラスト力には有意な正の相関がみられた。三次元動作解析装置により計測されたデータは空間座標系で示されるため下肢の関節角度などの影響を受けにくいが,加速度計は加速度計自体が座標系を持つ極座標系で示されるため,下肢の関節角度などの影響により加速度計,座標軸の向きが変化する。ラジアル方向は膝の関節運動による加速度計の極座標の変化が大きく,体重による補正ができず,外部膝関節屈曲モーメントとの相関がみられなかった。しかし,スラスト方向は膝の動きが小さく,加速度計の極座標の変化が小さいため,体重という質量を用いる事で,それを補正する事ができ,外部膝関節内反モーメントとスラスト力に相関がみられた。
本研究結果により,外部膝関節内反モーメントとスラスト力に併存的妥当性があることが示された。外部膝関節内反モーメントは膝関節内側に加わる機械的刺激を反映していると言われていることから,スラスト力も機械的刺激を反映していると考えられる。これは臨床現場で加速度計と体重データを用いてスラスト力を算出する事で簡易に機械的ストレスを計測できることを示している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,膝OAなどの機械的ストレスが問題となる疾患の予防を目的とした動作分析やその改善のための理学療法介入の効果判定に有効であると考えられる。
変形性膝関節症(以下,膝OA)の発生要因として慢性的に膝関節に加わる異常な機械的ストレスがあげられ,それが膝関節に慢性的に加わる事で,直接的軟骨基質障害と軟骨細胞の代謝変化を引き起こし,関節破壊に至る。その結果,関節変形が進行し,痛み,膝関節伸展制限,大腿四頭筋筋力低下などが引き起こされ,歩行障害を引き起こす。
機械的ストレス計測には,三次元動作解析装置と床反力計を用いて外部膝関節モーメントを算出している報告が多いが,高価で,場所も制限されるため,臨床で使用するのは難しい。一方,加速度計を用いた機械的ストレス計測も報告されている。木藤らは,膝OA患者の加速度は立脚初期において多峰性の波形を示し,パワースペクトルは健常者が二峰性であるのに対して,膝OA患者は一峰性であったと報告している。加速度計は非侵襲的で簡易に計測できるため臨床応用に期待されているが,加速度計を用いた機械的ストレス計測の妥当性を検討している報告は少なく,外部膝関節モーメントと比較したものは見られない。
また機械的ストレスは力として捉える必要があるため,加速度だけでなく,運動方程式(F=m×a)を用いて,側方加速力(以下:スラスト力),および前方加速力(以下:ラジアル力)としても捉える必要がある。そこで,今回は外部膝関節モーメントと加速度および加速度データから算出したスラスト力,ラジアル力を比較し,加速度計を用いた機械的ストレスの計測の信頼性および妥当性について検討する。
【方法】
対象者は健常な成人男女16名,年齢23.3±1.8歳,身長163.6±7.5cm,体重58.4±9.2kgであった。被験側は左で,歩行条件は10mの自由歩行とした。3歩行周期平均を1試行データとし,3試行の平均値を個人のデータとした。外部膝関節モーメント計測には,アニマ社製三次元動作解析装置と床反力計を用いた。加速度計測はマイクロストーン社製加速度計を膝関節外側に取り付け行った。得られたデータは処理用PCに取り込み,立脚初期における外部膝関節内反モーメント,外部膝関節屈曲モーメント,スラスト力(加速度側方成分×体重),ラジアル力(加速度前方成分×体重)の最大値を算出した。なお,歩行周期は床反力計のデータから特定した。統計ソフトにはSPSSを,解析には級内相関係数ICC(1.3)を用い,加速度データの信頼性を検討した。さらにピアソンの相関係数を用い,外部膝関節内反モーメントとスラスト力,外部膝関節屈曲モーメントとラジアル力の関連性を検討した。有意水準は0.05未満とした。
【結果】
側方加速度のICCは0.967,前方加速度のICCは0.935であった(p<0.01)。外部膝関節内反モーメントと加速度(r=0.18),外部膝関節屈曲モーメントとラジアル力(r=0.045)には,有意な相関はみられなかった。外部膝関節内反モーメントとスラスト力(r=0.66)に中等度の正の相関がみられた(p<0.05)。
【考察】
本研究結果より側方加速度,前方加速度共にICCは高い数値を示し,加速度計測は高い信頼性があると考えられる。
また,外部膝関節内反モーメントと外側加速度に相関はみられなかったが,外部膝関節内反モーメントとスラスト力には有意な正の相関がみられた。三次元動作解析装置により計測されたデータは空間座標系で示されるため下肢の関節角度などの影響を受けにくいが,加速度計は加速度計自体が座標系を持つ極座標系で示されるため,下肢の関節角度などの影響により加速度計,座標軸の向きが変化する。ラジアル方向は膝の関節運動による加速度計の極座標の変化が大きく,体重による補正ができず,外部膝関節屈曲モーメントとの相関がみられなかった。しかし,スラスト方向は膝の動きが小さく,加速度計の極座標の変化が小さいため,体重という質量を用いる事で,それを補正する事ができ,外部膝関節内反モーメントとスラスト力に相関がみられた。
本研究結果により,外部膝関節内反モーメントとスラスト力に併存的妥当性があることが示された。外部膝関節内反モーメントは膝関節内側に加わる機械的刺激を反映していると言われていることから,スラスト力も機械的刺激を反映していると考えられる。これは臨床現場で加速度計と体重データを用いてスラスト力を算出する事で簡易に機械的ストレスを計測できることを示している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,膝OAなどの機械的ストレスが問題となる疾患の予防を目的とした動作分析やその改善のための理学療法介入の効果判定に有効であると考えられる。