第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述62

生体評価学3

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:河野一郎(九州大学病院 リハビリテーション)

[O-0472] 地域在住高齢者における50m歩行テストの信頼性と妥当性

八谷瑞紀1,3, 村田伸2, 大田尾浩1, 上城憲司1, 溝田勝彦1, 浅見豊子3 (1.西九州大学, 2.京都橘大学, 3.佐賀大学大学院)

Keywords:50m歩行時間, 信頼性, 地域在住高齢者

【はじめに,目的】
我々は,高齢者の歩行能力を評価する方法として開発した50m歩行テストについて,下肢筋力,持久力,バランス能力との関連から,その評価方法の妥当性を第49回日本理学療法学術大会において報告した。しかし,50m歩行テストの信頼性は確認されていない。評価方法を臨床応用可能とするためには,測定値に含まれる誤差の種類とその許容範囲を明らかにする必要がある。そこで本研究は,50m歩行テストの信頼性と妥当性を検討することを目的とした。

【方法】
対象は,認知症予防事業に自由意思にて参加した地域在住高齢者を対象とした。50m歩行テストの信頼性の分析対象者は女性19名(年齢76±5歳)とし,妥当性の分析対象者は31名(男性12名,女性19名,年齢75±6歳)とした。歩行能力の評価は,50m歩行テストのほかに10m歩行時間を実施した。身体機能の測定項目は,握力,Functional reach test(FRT),片足立ちテスト,Timed Up & Go Test(TUG)とした。50m歩行テストは,10mの歩行路間に配置したコーンを2.5往復折り返して合計50mを歩いてもらった。測定は歩行開始から50mに到達するまでの所要時間をストップウォッチで測定した。測定方法は,開始前の姿勢は静止立位とし,コーンの横に立つ。対象者には,検査者の合図で歩き出すこと,目印の外側を往復することを伝え,歩行条件は最速歩行とした。ストップウォッチの操作は,歩行開始から40m(2往復目)までは10m毎に区間経過時間の計測を行い,50m終了時にストップを押す。記録する評価項目は,50m歩行の所要時間,およびラップ1から5の10m毎の所要時間である。統計学的分析は,50m歩行テストおよびラップ1から5の信頼性の検討について,同一検者が測定した測定値の再現性を検証するために級内相関係数(ICC 1,1)を求めた。絶対信頼性の検討にはBland-Altman分析を用いた。系統誤差の確認後に,測定値の標準誤差(SEM),誤差の許容範囲である最小可検変化量の95%信頼区間(MDC95)を求め測定誤差を検討した。50m歩行テストの妥当性は,各測定値との関連をピアソンの相関係数から検討した。なお,ICC,相関分析にはSPSS statistics 22(IBM)を用い,Bland-Altman分析,SEM,MDC95はR2.8.1を用いて算出した。

【結果】
50m歩行テスト(ICC=0.97),ラップ1~5(ICC=0.93~0.96)ともに高い信頼性が確認された。Bland-Altman分析より系統誤差の存在は認められなかった。測定誤差の程度は,50m歩行テストのSEMは1.5秒,MDC95は3.1秒であった。ラップ1~5のSEMは0.3秒,MDC95は0.7~1.0秒であった。次に,50m歩行テストの妥当性を検証した結果,50m歩行テストは10m歩行時間(r=0.84,p<0.01),握力(r=-0.51,p<0.01),FRT(r=-0.69,p<0.01),片足立ちテスト(r=-0.43,p<0.05),TUG(r=0.91,p<0.01)と有意な相関が認められた。一方,10m歩行時間は,握力(r=-0.60,p<0.01),FRT(r=-0.69,p<0.01),TUG(r=-0.82,p<0.01)との間に有意な相関が認められたが,片足立ちテストとは有意な相関は認められなかった。

【考察】
地域在住高齢者を対象に50m歩行テストの信頼性を検討した結果,いずれのICCも高値であり50m歩行テストとラップ1~5の高い信頼性が確認された。Bland-Altman分析の結果,50m歩行テスト,ラップ1~5ともに,真の値に偏りをもたらしてしまう系統誤差は存在しないことが確認できた。次に,測定値に含まれる測定誤差の程度を検討した結果,50m歩行テストの測定誤差は1.5秒であり,その許容される範囲は1.5秒であった。ラップ1~5の測定誤差0.3秒であり,その許容される範囲は0.7~1.0秒であった。いずれの測定誤差も,程度が小さいことから臨床応用上問題ないと判断できた。次に,50m歩行テストと10m歩行時間とを比べるために,各測定項目との相関関係と相関係数を比較した。50m歩行テストは,すべての身体機能と有意な相関が認められたものの,10m歩行時間では片足立ちテストとは有意な相関は認められなかった。このことから,50m歩行テストは10m歩行時間よりも身体機能を反映すること評価法である可能性が示された。本研究の結果から,50m歩行テストは臨床応用可能な評価法と考えられる。

【理学療法学研究としての意義】
50m歩行テストの信頼性および妥当性が確認され,高齢者に対する有用な歩行能力評価法であることが示された。