[O-0477] 超音波診断装置を用いた下肢形態測定の有用性
循環器入院患者と健常者の比較検討から
キーワード:形態測定, 筋厚評価, 内部障害理学療法
【はじめに,目的】
内部障害理学療法において,運動耐容能や筋力といった身体機能評価は,効果的かつ安全な運動処方とアドヒアランスの向上に有用である。日常臨床における理学療法評価は,客観的かつ再現性が高く,より簡便な検査法である事が望ましく,近年では超音波診断装置を用いた理学療法評価の報告が散見されるようになった。そこで我々は,従来から形態測定として汎用されている巻き尺を用いた下肢周径測定に加え,超音波診断装置による下肢筋厚評価を入院期の循環器疾患患者(IN-Pt)と健常者(Ctrl)に実施し,その有用性を検討した。
【方法】
対象は,IN-Pt群(男性7名,女性5名,平均年齢71.8±11.6歳)とCtrl群(男性7名,女性5名,平均年齢70.0±6.7歳)の2群で計24名であり,男女比,平均年齢,身長,体重,BMI,体脂肪率,除脂肪体重の各指標で2群間に有意差は認めなかった。対象者に対し,巻き尺を用いた大腿周径測定と下腿周径測定および超音波診断装置を用いた大腿前面筋厚測定,大腿後面筋厚測定と下腿後面筋厚測定を実施し,2群間の平均値の差を対応のないt検定および多重ロジスティック解析により有意水準5%(両側検定)として各指標の有用性を検討した。尚,周径測定位置は,大腿骨大転子から外側膝関節裂隙の中間(50%)部を大腿周径,外側膝関節裂隙から腓骨外果の近位30%部を下腿周径とし,同位置の前面中央点および後面中央点を筋厚測定部位とした。
【結果】
IN-Pt群とCtrl群の平均値の差について,対応のないt検定では大腿周径(p=0.29),下腿周径(p=0.18),大腿前面筋厚(p<0.01),大腿後面筋厚(p=0.03),下腿後面筋厚(p<0.01)という結果であった。IN-PtかCtrlかを目的変数とした名義ロジスティック解析では,大腿周径(p=0.78,オッズ比1.05,95%信頼区間0.76-1.48),下腿周径(p=0.35,オッズ比0.81,95%信頼区間0.48-1.27),大腿前面筋厚(p=0.04,オッズ比0.14,95%信頼区間0.01-0.90),大腿後面筋厚(p=0.66,オッズ比0.66,95%信頼区間0.09-4.09),下腿後面筋厚(p=0.84,オッズ比0.75,95%信頼区間0.04-17.12)となり,下肢周径測定による正解率は62.5%であったのに対し,下肢筋厚測定による正解率は83.3%という結果であった。
【考察】
本検討により,従来の巻き尺を用いた下肢周径測定に比べ,超音波診断装置による下肢筋厚測定の有用性は非常に高いと考える。特に大腿前面筋厚については,それを測定する事により循環入院患者と健常者を明確に区分けする事が可能であり,その正解率も非常に高いものである。対象患者に不必要な身体的負荷を与えない点や客観的な数値として鋭敏にその変化を検出する事が可能な点において,筋厚測定をはじめとする超音波診断装置を用いた形態測定は各分野の理学療法評価において,今後ますますの応用が期待できるものであると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,従来から広く理学療法評価の一翼を担っていた周径測定を主体とした形態測定に対し,新たな評価ツールの提案およびその有用性を実証するものであり,より客観的かつ汎用性の高い理学療法評価を確立し,科学的根拠に基づいた評価と治療,教育と研究の推進に繋がる。
内部障害理学療法において,運動耐容能や筋力といった身体機能評価は,効果的かつ安全な運動処方とアドヒアランスの向上に有用である。日常臨床における理学療法評価は,客観的かつ再現性が高く,より簡便な検査法である事が望ましく,近年では超音波診断装置を用いた理学療法評価の報告が散見されるようになった。そこで我々は,従来から形態測定として汎用されている巻き尺を用いた下肢周径測定に加え,超音波診断装置による下肢筋厚評価を入院期の循環器疾患患者(IN-Pt)と健常者(Ctrl)に実施し,その有用性を検討した。
【方法】
対象は,IN-Pt群(男性7名,女性5名,平均年齢71.8±11.6歳)とCtrl群(男性7名,女性5名,平均年齢70.0±6.7歳)の2群で計24名であり,男女比,平均年齢,身長,体重,BMI,体脂肪率,除脂肪体重の各指標で2群間に有意差は認めなかった。対象者に対し,巻き尺を用いた大腿周径測定と下腿周径測定および超音波診断装置を用いた大腿前面筋厚測定,大腿後面筋厚測定と下腿後面筋厚測定を実施し,2群間の平均値の差を対応のないt検定および多重ロジスティック解析により有意水準5%(両側検定)として各指標の有用性を検討した。尚,周径測定位置は,大腿骨大転子から外側膝関節裂隙の中間(50%)部を大腿周径,外側膝関節裂隙から腓骨外果の近位30%部を下腿周径とし,同位置の前面中央点および後面中央点を筋厚測定部位とした。
【結果】
IN-Pt群とCtrl群の平均値の差について,対応のないt検定では大腿周径(p=0.29),下腿周径(p=0.18),大腿前面筋厚(p<0.01),大腿後面筋厚(p=0.03),下腿後面筋厚(p<0.01)という結果であった。IN-PtかCtrlかを目的変数とした名義ロジスティック解析では,大腿周径(p=0.78,オッズ比1.05,95%信頼区間0.76-1.48),下腿周径(p=0.35,オッズ比0.81,95%信頼区間0.48-1.27),大腿前面筋厚(p=0.04,オッズ比0.14,95%信頼区間0.01-0.90),大腿後面筋厚(p=0.66,オッズ比0.66,95%信頼区間0.09-4.09),下腿後面筋厚(p=0.84,オッズ比0.75,95%信頼区間0.04-17.12)となり,下肢周径測定による正解率は62.5%であったのに対し,下肢筋厚測定による正解率は83.3%という結果であった。
【考察】
本検討により,従来の巻き尺を用いた下肢周径測定に比べ,超音波診断装置による下肢筋厚測定の有用性は非常に高いと考える。特に大腿前面筋厚については,それを測定する事により循環入院患者と健常者を明確に区分けする事が可能であり,その正解率も非常に高いものである。対象患者に不必要な身体的負荷を与えない点や客観的な数値として鋭敏にその変化を検出する事が可能な点において,筋厚測定をはじめとする超音波診断装置を用いた形態測定は各分野の理学療法評価において,今後ますますの応用が期待できるものであると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,従来から広く理学療法評価の一翼を担っていた周径測定を主体とした形態測定に対し,新たな評価ツールの提案およびその有用性を実証するものであり,より客観的かつ汎用性の高い理学療法評価を確立し,科学的根拠に基づいた評価と治療,教育と研究の推進に繋がる。