第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述8

がんのリハビリテーション

Sat. Jun 6, 2015 4:10 PM - 5:10 PM 第5会場 (ホールB5)

座長:八並光信(杏林大学 保健学部理学療法学科), 皮居達彦(横浜市立脳血管医療センター)

[O-0537] 前立腺癌骨転移により対麻痺を呈した患者への理学療法

病態が進行していく症例に対し運動プログラムを変更しながらいかに心理支持を行うかを中心に

岩田英之1, 岡山太郎1, 和佐潤志2, 増田芳之1, 石井健1, 満田恵1, 森田恵美子1, 田沼明1 (1.静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科, 2.静岡県立静岡がんセンター整形外科)

Keywords:がん, 対麻痺, 自宅退院

【目的】がんのリハビリテーションは病期を問わず治療方針に沿って行われるものだが,時に合併症や治療抵抗性となり当初の予想とは異なる経過を辿ることがある。骨転移治療は転移巣の状況と予後などを考慮して治療が選択されるが,今回放射線治療(以下RT)を行ったのにもかかわらず経過と共に麻痺が進行した症例を経験した。症例を提示し,治療や理学療法アプローチに関して振り返るとともに反省点や成功した点について報告する。
【症例提示】70歳代男性,診断名前立腺癌多発骨転移,X-3年8月多発脊椎転移にて前立腺癌の診断。多発脊椎転移に対してRTを30Gy実施。その後,ホルモン療法並びに化学療法を5次治療まで実施。X年7月新規脊椎転移病変(Th5-12)に対しRTを20Gy実施。治療後自宅退院となったが,5日後に歩行障害を自覚。自宅退院から8日後に当院整形外科を受診し再入院。翌日より理学療法依頼あり。
【経過と考察】理学療法開始時,両下肢MMT5,左下肢深部覚に若干の低下あり。床上安静の為,床上筋力トレーニングより開始。12日後,安静解除に伴い平行棒内歩行を開始するも失調様の歩行不安定あり。その後体幹・下肢中枢側より徐々に弛緩性麻痺が出現。20Gyの追加照射を実施するも,約1ヵ月かけて麻痺が進行し完全対麻痺となった。少しずつ身体機能が低下していく症例に対して心理的サポートを行いながら歩行練習を中心に実施。麻痺が進行してきてからもご本人の気持ちを考慮しつつ,下肢装具や体幹バンドを用いて可能な限り歩行練習を続けた。歩行不能になってからは,移乗練習や家族指導を中心に車いす生活を想定したプログラムに変更。最終的に自宅退院することができた。退院後も当院外来にてホルモン治療と身体機能の評価を行い,自宅では訪問リハビリが介入している。予想とは違った経過を辿った時,進行がん患者に対しどのような運動プログラムや目標設定を行ったらよいのか検討していきたい。