[O-0548] KSメジャーを用いた脛骨の前方移動距離と膝関節周囲筋との関係
Keywords:KSメジャー, 脛骨の前方移動距離, 膝関節周囲筋
【はじめに,目的】
整形外科領域において脛骨の前方移動距離(Anterior Translation Of The Tibia:ATT)は膝の安定性を見る上で重要な指標となっておりATTが大きいと前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷のリスクが高いと言われている。ATTの測定方法としてKTシリーズがあるが,予測値を用いた測定であること,引き荷重量の統一ができないことが問題である。そこで近年,これらの問題点を解決したKS measureが開発された。KS measureはATTの実測値を0.1mm単位まで測定し,引き荷重測定において荷重量の統一を可能とした。しかし,KS measureが開発されたにも関わらずATTに影響を与える因子分析はなされていないのが現状である。そこでKS measureを用いて筋力との関係を調査しATTに影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。そして本研究がACL損傷の予防策となることを目的としている。
【方法】
対象は20歳から40歳未満の女性46名の膝関節89膝,除外規定は膝関節の痛みや変形を有している者,膝関節に手術の既往がある者とした。測定におけるプロトコールは初めにATT測定をベッド上で行い,その後屈曲,伸展筋力をランダムに測定した。測定機器はKS measureを用いて30IbfでATT(単位:mm)を少数点第1位まで測定した。測定に関しては日本シグマックスの測定基準に準じて行った。また因子分析として膝関節周囲筋に着目し,COMBITを用いて膝関節屈曲筋力体重比・膝関節伸展筋力体重比・(Hamstrings/Quadriceps以下H/Q)比を測定しATTの中央値で群分けして比較した。統計手法はSPSS ver.21を用いてそれぞれ対応のないt検定を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
膝関節屈曲筋力体重比は大群:0.98kgf/kg,小群:1.11kgf/kgでp値0.02となり小群の方が有意に大きいことが明らかとなった。膝関節伸展筋力体重比は大群:1.56kgf/kg,小群:1.59kgf/kgでp値0.71となり有意差を認められなかった。H/Qは大群:64%,小群71%でp値0.03となり小群の方が,有意に高値となった。
【考察】
KS measureは検者内・検者間ともに信頼性が高い測定機器である。今回ATTを定量的に評価し筋力との関係を見た。結果からATT小群は膝関節屈曲体重比が高くH/Qも高値であることが明らかとなった。Hamstringsは脛骨の前方移動を抑制する筋であり,今回ATTにHamstringsが影響していることが明らかとなった。またH/Qが高いほどATTは小さくなることも明らかとなった。しかしこの結果はHamstringsの影響を強く受けたためH/Qが高値になった可能性が考えられる。そのためATTに影響を与える因子に筋バランスを見ることが重要であることは仮説の域を出ることができない。今回の結果よりATTを低値で保つためには絶対的なHamstringsの筋力が重要であることが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
ATTが大きいとACL損傷のリスクが高まる。よってATTに影響を与える因子を特定することでACL損傷の予防策となると考え本研究を行った。ATTを低値で維持するためにHamstringsの重要性を明らかとすることができACL損傷患者を軽減することに本研究が貢献できると考えている。今後の展望として,ACL患者へ同法の測定を行い,より有益な資料にしたいと考えている。
整形外科領域において脛骨の前方移動距離(Anterior Translation Of The Tibia:ATT)は膝の安定性を見る上で重要な指標となっておりATTが大きいと前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷のリスクが高いと言われている。ATTの測定方法としてKTシリーズがあるが,予測値を用いた測定であること,引き荷重量の統一ができないことが問題である。そこで近年,これらの問題点を解決したKS measureが開発された。KS measureはATTの実測値を0.1mm単位まで測定し,引き荷重測定において荷重量の統一を可能とした。しかし,KS measureが開発されたにも関わらずATTに影響を与える因子分析はなされていないのが現状である。そこでKS measureを用いて筋力との関係を調査しATTに影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。そして本研究がACL損傷の予防策となることを目的としている。
【方法】
対象は20歳から40歳未満の女性46名の膝関節89膝,除外規定は膝関節の痛みや変形を有している者,膝関節に手術の既往がある者とした。測定におけるプロトコールは初めにATT測定をベッド上で行い,その後屈曲,伸展筋力をランダムに測定した。測定機器はKS measureを用いて30IbfでATT(単位:mm)を少数点第1位まで測定した。測定に関しては日本シグマックスの測定基準に準じて行った。また因子分析として膝関節周囲筋に着目し,COMBITを用いて膝関節屈曲筋力体重比・膝関節伸展筋力体重比・(Hamstrings/Quadriceps以下H/Q)比を測定しATTの中央値で群分けして比較した。統計手法はSPSS ver.21を用いてそれぞれ対応のないt検定を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
膝関節屈曲筋力体重比は大群:0.98kgf/kg,小群:1.11kgf/kgでp値0.02となり小群の方が有意に大きいことが明らかとなった。膝関節伸展筋力体重比は大群:1.56kgf/kg,小群:1.59kgf/kgでp値0.71となり有意差を認められなかった。H/Qは大群:64%,小群71%でp値0.03となり小群の方が,有意に高値となった。
【考察】
KS measureは検者内・検者間ともに信頼性が高い測定機器である。今回ATTを定量的に評価し筋力との関係を見た。結果からATT小群は膝関節屈曲体重比が高くH/Qも高値であることが明らかとなった。Hamstringsは脛骨の前方移動を抑制する筋であり,今回ATTにHamstringsが影響していることが明らかとなった。またH/Qが高いほどATTは小さくなることも明らかとなった。しかしこの結果はHamstringsの影響を強く受けたためH/Qが高値になった可能性が考えられる。そのためATTに影響を与える因子に筋バランスを見ることが重要であることは仮説の域を出ることができない。今回の結果よりATTを低値で保つためには絶対的なHamstringsの筋力が重要であることが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
ATTが大きいとACL損傷のリスクが高まる。よってATTに影響を与える因子を特定することでACL損傷の予防策となると考え本研究を行った。ATTを低値で維持するためにHamstringsの重要性を明らかとすることができACL損傷患者を軽減することに本研究が貢献できると考えている。今後の展望として,ACL患者へ同法の測定を行い,より有益な資料にしたいと考えている。