[O-0565] 足趾の屈曲筋力がカーフレイズ動作に及ぼす影響
キーワード:カーフレイズ, 足趾屈曲筋力, 足圧中心
【はじめに,目的】
足部は人が立位姿勢を保持する際に,唯一地面と接する部位である。立位・歩行において,足趾は姿勢の安定化に関与していることが報告されている。また足趾屈筋群の強化により,立位姿勢の重心動揺に改善がみられたとの報告もある。しかし,足趾屈筋群が身体動作中の重心動揺に及ぼす影響を検討した報告は少ない。
そこで本研究では足趾の屈曲筋力がカーフレイズ(以下calfraise:CR)動作中の重心動揺にどのような影響を及ぼすのかを足圧中心(center of pressure:COP)から検討することを目的とした。
【方法】
対象は整形外科的疾患のない健常成人男性10名10肢(年齢24.1±1.8歳,身長170.0±4.8cm,体重63.3±6.9kg)とした。計測は非利き足で実施した。
1)足趾屈筋の筋力計測
計測機器はデジタルスケールSF400-Aとした。被験者は椅子座位として足関節底背屈0°とした。その際,代償を防ぐために体幹,大腿部,下腿部を固定した。母趾屈筋(以下FH)と第2~5趾屈筋(以下FD)に分けて筋力計測を行った。計測回数はFH,FD各3回ずつ実施し,平均値を求めた。その後,体重で除し,正規化した。その値からFHをFDで除して割合を算出した(以下HD比)。
2)CR動作計測
計測機器はVICON MXシステム(VICON,カメラ10台,100Hz),床反力計OR6-7(AMTI1枚,1,000Hz)とした。
マーカは足部の4箇所(HEEL,第2趾IP関節,第1MP関節,第5MP関節)に貼付した。運動課題は片脚でのCR動作とした。計測対象は片脚立位を開始としCR動作後,踵骨最大挙上位にて3秒間保持した。解析項目はCOPの軌跡長,停滞位置・時間,HEELマーカの軌跡長とした。解析方法は第2趾IP関節のマーカの値を基準点としてCOPの位置・時間と軌跡長,HEELマーカの軌跡長を算出した。Xは足部に対して前後方向を示し,Yは足部に対して内外側方向を示す。
解析はHD比とCOPの軌跡長,停滞位置・時間,HEELマーカの軌跡長との相関をみた。
【結果】
1)足趾屈筋筋力とHD比
FHの筋力は3.4±1.0,FDの筋力は5.7±1.7であった。HD比の平均値1.8±0.6であった。
2)CR動作
CR動作中のCOPの総軌跡長は164.1±28.7mmであり,側方軌跡長は24.6±4.8mmであった。またHEELマーカの総軌跡長は77.5±36.2mmであり,側方軌跡長は15.5±8.1mmであった。COPの側方軌跡長とHEELマーカの側方軌跡長は正の相関関係を認めた(r=0.91)。COPの総軌跡長とHEELマーカの総軌跡長において相関を認めなかった(r=0.12)。
またHD比とCOPの総軌跡長は相関を認めなかった(r=0.04)。HD比と側方軌跡長においても相関を認めなかった(r=0.03)。
HD比とHEELマーカの総軌跡長,側方軌跡長においても同様に相関を認めなかった(r=0.18)。
HD比とCOP停滞位置・時間においても相関関係を認めなかった(r=0.54)。
【考察】
本研究は足趾の屈筋筋力に着目し,カーフレイズ(以下CR)動作の際の足圧中心(center of pressure:COP)との関係性を明らかにすることが目的であった。
本結果からCR動作中のCOP側方の変位には踵骨の側方動揺が関与していることが示された。このことからCR動作中のCOPの制御においては後足部の安定性が重要であることが示唆された。これはCR動作の主動作筋である下腿三頭筋の付着部が踵骨であり,その作用が踵骨に及ぶことから踵骨の動揺がCR動作中のCOPの側方動揺に繋がることが考えられた。
CR動作は踵骨の挙上に伴い,COPが前方へと変位する。従って支持基底面は足趾により構成されるためFH,FDの割合の違いによってCOPの変位する位置や軌跡長が変化すると考えた。
本研究においては,仮説とは異なる結果となり,HD比とCOPの関係から足趾がCOPの制御へ及ぼす影響は少ないことが示唆された。
このことからCR動作中の動的なCOPの制御は足趾の筋力よりも後足部の安定性に依存している傾向にあることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
今回,足趾の筋力がCR動作中のCOPに及ぼす影響を検討した。その結果,足趾の筋力はCOP制御への関与が少ないことが分かった。それに対して,後足部の不安定性がCR動作中のCOPの動揺に関与しているとの知見が得られた。
今後は理学療法学研究としてさらに発展させるため,健常者のみでなく足関節捻挫等の疾患と比較し,身体動作中の足部機能の特徴捉えることで,実際の歩行や動作に対するアプローチへと繋げていきたい。
足部は人が立位姿勢を保持する際に,唯一地面と接する部位である。立位・歩行において,足趾は姿勢の安定化に関与していることが報告されている。また足趾屈筋群の強化により,立位姿勢の重心動揺に改善がみられたとの報告もある。しかし,足趾屈筋群が身体動作中の重心動揺に及ぼす影響を検討した報告は少ない。
そこで本研究では足趾の屈曲筋力がカーフレイズ(以下calfraise:CR)動作中の重心動揺にどのような影響を及ぼすのかを足圧中心(center of pressure:COP)から検討することを目的とした。
【方法】
対象は整形外科的疾患のない健常成人男性10名10肢(年齢24.1±1.8歳,身長170.0±4.8cm,体重63.3±6.9kg)とした。計測は非利き足で実施した。
1)足趾屈筋の筋力計測
計測機器はデジタルスケールSF400-Aとした。被験者は椅子座位として足関節底背屈0°とした。その際,代償を防ぐために体幹,大腿部,下腿部を固定した。母趾屈筋(以下FH)と第2~5趾屈筋(以下FD)に分けて筋力計測を行った。計測回数はFH,FD各3回ずつ実施し,平均値を求めた。その後,体重で除し,正規化した。その値からFHをFDで除して割合を算出した(以下HD比)。
2)CR動作計測
計測機器はVICON MXシステム(VICON,カメラ10台,100Hz),床反力計OR6-7(AMTI1枚,1,000Hz)とした。
マーカは足部の4箇所(HEEL,第2趾IP関節,第1MP関節,第5MP関節)に貼付した。運動課題は片脚でのCR動作とした。計測対象は片脚立位を開始としCR動作後,踵骨最大挙上位にて3秒間保持した。解析項目はCOPの軌跡長,停滞位置・時間,HEELマーカの軌跡長とした。解析方法は第2趾IP関節のマーカの値を基準点としてCOPの位置・時間と軌跡長,HEELマーカの軌跡長を算出した。Xは足部に対して前後方向を示し,Yは足部に対して内外側方向を示す。
解析はHD比とCOPの軌跡長,停滞位置・時間,HEELマーカの軌跡長との相関をみた。
【結果】
1)足趾屈筋筋力とHD比
FHの筋力は3.4±1.0,FDの筋力は5.7±1.7であった。HD比の平均値1.8±0.6であった。
2)CR動作
CR動作中のCOPの総軌跡長は164.1±28.7mmであり,側方軌跡長は24.6±4.8mmであった。またHEELマーカの総軌跡長は77.5±36.2mmであり,側方軌跡長は15.5±8.1mmであった。COPの側方軌跡長とHEELマーカの側方軌跡長は正の相関関係を認めた(r=0.91)。COPの総軌跡長とHEELマーカの総軌跡長において相関を認めなかった(r=0.12)。
またHD比とCOPの総軌跡長は相関を認めなかった(r=0.04)。HD比と側方軌跡長においても相関を認めなかった(r=0.03)。
HD比とHEELマーカの総軌跡長,側方軌跡長においても同様に相関を認めなかった(r=0.18)。
HD比とCOP停滞位置・時間においても相関関係を認めなかった(r=0.54)。
【考察】
本研究は足趾の屈筋筋力に着目し,カーフレイズ(以下CR)動作の際の足圧中心(center of pressure:COP)との関係性を明らかにすることが目的であった。
本結果からCR動作中のCOP側方の変位には踵骨の側方動揺が関与していることが示された。このことからCR動作中のCOPの制御においては後足部の安定性が重要であることが示唆された。これはCR動作の主動作筋である下腿三頭筋の付着部が踵骨であり,その作用が踵骨に及ぶことから踵骨の動揺がCR動作中のCOPの側方動揺に繋がることが考えられた。
CR動作は踵骨の挙上に伴い,COPが前方へと変位する。従って支持基底面は足趾により構成されるためFH,FDの割合の違いによってCOPの変位する位置や軌跡長が変化すると考えた。
本研究においては,仮説とは異なる結果となり,HD比とCOPの関係から足趾がCOPの制御へ及ぼす影響は少ないことが示唆された。
このことからCR動作中の動的なCOPの制御は足趾の筋力よりも後足部の安定性に依存している傾向にあることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
今回,足趾の筋力がCR動作中のCOPに及ぼす影響を検討した。その結果,足趾の筋力はCOP制御への関与が少ないことが分かった。それに対して,後足部の不安定性がCR動作中のCOPの動揺に関与しているとの知見が得られた。
今後は理学療法学研究としてさらに発展させるため,健常者のみでなく足関節捻挫等の疾患と比較し,身体動作中の足部機能の特徴捉えることで,実際の歩行や動作に対するアプローチへと繋げていきたい。