第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述78

支援工学理学療法1

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 6:30 PM 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:大籔弘子(兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリ療法部)

[O-0585] 関節リウマチ患者の装具使用状況

~ADLおよび足部の痛みと機能についての関連~

田波めぐみ, 島浩人 (医療法人医道会十条武田リハビリテーション病院)

Keywords:関節リウマチ, 装具, ADL

【はじめに】関節リウマチ(以下,RA)患者における装具療法の先行研究では装具の使用は患者の選択意思に依存するという内容が多く,実際の使用状況に関する報告は少ない。また,RA患者との対話の中で装具を使用したが使わなくなったという意見を聞くことがあるが処方したが使用しなくなった装具・使用しない理由の把握はなされていないのが現状である。RA患者は関節の痛みを中心とした動作制限が出現する。装具処方は主に関節にかかる負担の軽減,関節の変形予防,痛みの軽減を目的に行われるため装具処方の実態を把握するためにはADL制限,痛みの評価が必要である。本研究では患者のニーズに沿った有効な装具処方を行っていくために当院におけるRA患者の装具使用状況を把握し,ADLおよび足部の痛みと機能の関連性を明確にすることを目的とした。
【方法】期間は平成26年7月1日~9月30日で当院の外来通院中のRA患者72名を対象とした。72名の内訳は女性57名で,平均年齢は61.2歳であった。調査方法としては装具の使用状況に関する調査およびADLや足部の痛みと機能についての把握を質問紙法にて行った。質問内容は装具診で質問する機会の多い項目,把握したい内容を抽出した。質問内容は①RAにおける装具療法の有効性理解の有無②現在使用している装具の有無とその種類,現在使用している装具の満足の是非③以前に処方されたが使用しなくなった装具の有無とその種類,使用しなくなった理由④今後装具を使用したいと思うか⑤現在困っている動作・痛みの有無とした。ADLの把握はmHAQ(modified health assessment questionnaire)を使い,足部の痛みと機能については評価Foot Function Indexを使用した。分析については各項目でt-検定を用いて比較検討を行った。
【結果】RA治療における装具の使用に関する認知は「はい」が52%で,現在使用している装具の有無では「はい」が30%で,その内訳は膝サポーターが34%,足首用サポーターが14.%,足底板が21%と下肢装具が約7割を占めた。現在使用している装具の満足に関しては「はい」が71%だった。以前に処方されたが現在は使用していない装具の有無に関しては「はい」が50%で,使わなくなった装具は膝サポーターが32%,足首用サポーターが17%,足底板が17%だった。装具を使わなくなった理由に関しては,「思ったような効果がなかったから」「使いにくいから」「面倒だから」が8割を占め,「体に合わなくなった」は6%だった。今後装具を使用したいと思うかについては「はい」が45%といった回答がみられた。装具を知っている人は知らない人に比べて,mHAQの各項目の点数が高く,特に食事・衛生・伸展・握力に有意な差があった。FFIは痛み・障害・活動尺度ともに装具を知っている人の方が高い傾向があり痛み・障害の尺度に有意な差があった。現在装具を使用している人はmHAQが各項目で使用していない人に比べて高いが有意な差は認められなかった。FFIについては使用している方が痛み・障害・活動尺度ともに有意に高かった。以前,装具を使用していたが現在使用していない人はmHAQの各項目で使用している人に比べて点数は高いが有意差は認められなかったが,FFIは痛み・障害尺度ともに高い傾向があり痛みと障害の尺度に有意差があった。
【考察】装具の認知度については,mHAQの食事・衛生・伸展・握力に有意な差があったことから上肢手指機能が要求される動作が不自由になると認知度が高くなり,FFIの結果からは痛み・障害が強まることにより認知度が高くなると考えられた。装具を現在使用している人はmHAQの各項目で有意差はなく,FFIの痛み・障害・活動すべての尺度が有意に高いことや下肢装具の使用率が71%あったことから下肢の痛みや機能低下がある場合に下肢装具のニーズが高まると考えられた。装具を使用していたが現在使用していない人はFFIの痛みや障害の尺度が有意に高かったことから,痛みや障害が強い人は装具を使用していない。これは装具に対して思ったような効果がない場合や装具では対応できなかったことが考えられた。未使用率が50%もあることは今後医師・セラピストが装具処方の目的を患者に説明して適切な装具を処方しているかを確認し,定期的な装具のチェックが必要になると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】装具の使用状況を把握しADLや痛み,機能との関連について明らかにすることでRA患者の使いやすい装具を処方することができると思われる。