第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述78

支援工学理学療法1

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 6:30 PM 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:大籔弘子(兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリ療法部)

[O-0586] 開発装具『前方支柱式長下肢装具 front(仮)』の歩行計測による機能性検証

上津遊恭平1, 高田繭子1, 野上慎二1, 垣田清人1, 大谷巧2 (1.京都大原記念病院, 2.株式会社P.O.ラボ)

Keywords:脳血管疾患, 長下肢装具開発, 歩行計測

【はじめに,目的】脳卒中ガイドライン2009において,廃用症候群の予防,ADL早期向上,早期社会復帰を図るためにできるだけ発症後早期からの積極的な立位,装具を用いた歩行練習を行うことを推奨している。近年,急性期の在院日数の短縮により脳卒中の下肢装具作成が回復期で行われる機会が増えつつある。長下肢装具作成に対し,装具適応判定,採型,仮合わせから完成まで,時間がかかりすぎてしまうことが課題として挙げられる。当院では,装具適応評価から完成後の装着練習に至るまでに入院時より約20日,発症から約2ヶ月前後かかっているのが現状である。今回,即日からの装具着用を可能とする前面支柱式長下肢装具『front(仮)』(以下「front」)を株式会社P.O.ラボと共同開発した。前研究において従来型の長下肢装具(以下,従来型)と比較検証し,安全性について報告した。本研究では,その機能性について歩行時の下肢荷重計測,筋電図計測を行い,開発装具の実用性を歩行時の筋活動・下肢荷重・歩行解析により従来型と比較検証したので報告する。
【方法】対象は脳卒中発症後で長下肢装具装着患者4名とした。使用機器はインターリハ社製Zebris WIN FDMシステム,DABブルートゥース型表面筋電計を使用した。2mのフォースプレート前後1mを助走区間とし4mの歩行距離とした。表面筋電計の貼付け部位は麻痺側下肢の大臀筋・大腿直筋・ヒラメ筋としサンプリング周波数100Hzにて30秒間の計測時間とした。また,使用する装具の足関節角度は底背屈角度0度固定とした。自己にて歩行する能力がない対象者に対してはセラピストの後方からの介助歩行にて実施した。歩行計測は歩行中の1歩行周期を抽出,採用した1歩行周期にて対象筋となる筋活動量を立脚期・遊脚期にて区分けし,それぞれの周期での平均振幅を算出,従来型と「front」装着での比較をした。統計処理については対応のあるT検定にて処理をおこなった。また歩行計測データとして歩行ケイデンス,装具側の片脚支持率も比較対象とした。
【結果】立脚期の大腿直筋に有意な差を認めた。それ以外で立脚期での対象となる筋活動,遊脚期での筋活動にて有意な差は認めなかった。また,片脚支持率および歩行ケイデンスについて4症例とも従来型と比較し「front」装着で数値が上回る結果となった。
【考察】立脚期での大腿直筋に有意差がみられたことについて4症例ともに大腿直筋の筋活動量が従来型の方で上回っていた。このことは立脚期間中の装具自体の支持力として「front」より従来型の支持力が高い機能を有していると考えられた。大臀筋・ヒラメ筋には立脚期・遊脚期に従来型との差はみられなかったが,歩行時の「front」の固定性には改良の余地があると考える。一方,片脚支持率および歩行ケイデンスでは従来型に比べ「front」が上回っていたことから開発装具の前方支柱式という装具の構造上から立脚期での前方への荷重移動の効率性は得られやすいのではないかと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中治療ガイドラインに基づき,発症後早期からの長下肢装具着用を可能にする装具を開発した。従来のオーダーメイドの採型,制作,仮合わせにかかる期間を短縮させ,より早期からの装具装着を行い,立位・歩行練習を行うことを可能にし,早期ADLの改善にもつながることが期待される。