[O-0598] 神経モビライゼーションと静的ストレッチでの筋出力の変化について
Keywords:神経モビライゼーション, 静的ストレッチ, 筋出力
【はじめに,目的】
筋出力に影響する要因は,神経と筋肉の2つに分けられる。我々は第49回全国理学療法士学術大会において,神経モビライゼーション(以下NM)が筋出力向上に影響することを報告した。一方,ストレッチングにおいても,筋出力向上に影響があると報告した研究は多い。臨床においてストレッチングやNMは多く用いられる手技だが,筋出力に対する各々の効果は明らかではない。本研究はNMとストレッチングが筋出力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常成人男性13名(24.5±1.9歳)とし利き足側の下肢に対し計測を実施した。使用機器は,イージーテックプラス(Easy tech),ストップウォッチ(CASIO),メトロノーム(KORG)とした。膝関節屈曲・伸展の筋出力計測は等尺性収縮,等速性収縮の2つの収縮形態で行った。筋出力は等尺性収縮の屈曲最大トルク,等速性収縮の屈曲・伸展最大トルク,屈曲・伸展最大パワーを評価した。等尺性収縮は計測肢位を股関節90度,膝関節60度に設定し,10秒間収縮を行った。等速性収縮の設定では,反復回数を5回,角速度を屈曲・伸展90度と設定した。各測定は開始5秒前から声掛けを行い,測定中は必要な声掛け以外行わず,静かな環境で行った。筋出力はNM,ストレッチング前後で計測した。検者はベッド上にて体幹,非検査側の大腿部,足部をベルトで固定しNM,ストレッチングを実施した。NMは坐骨神経を対象とした。Maitland Conceptのgrade4を参考に,膝関節伸展位,股関節屈曲位にて,足関節背屈を行い,2Hzの反復伸張刺激を10秒間与えた。ストレッチングは,ハムストリングスを対象とした。股関節・膝関節90度屈曲位から膝関節伸展を行った。伸張度は,痛みを感じない最大伸張位を至適強度とし,時間は6秒間保持した。
解析は,各パラメータでNM前後とストレッチング前後の筋出力の差を算出し2施行間で比較した。また,NMとストレッチングで最大トルクと最大パワーそれぞれの屈曲と伸展に及ぼす差を検討するため,NMとストレッチングの差分を屈曲トルク・伸展トルク間,屈曲パワー・伸展パワー間で比較した。統計は二元配置分散分析にて検討した。測定した筋出力の値は体重で正規化した。Bonferroniの多重比較検定を実施し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
等尺性収縮において,最大トルクはストレッチング-0.014±0.29N/kg,NM0.013±0.18 N/kgで有意差は認めなかった。
等速性収縮において最大トルク(屈曲/体重)はストレッチング0.013±0.129 N/kg,NM0.024±0.139 N/kgで,有意差を認めなかった。最大トルクは(伸展/体重)ストレッチング0.025±0.153N/kg,NM0.044±0.248 N/kgで有意差は認めなかった。最大パワー(屈曲)はストレッチング7.3±22.7 N/kg,NM2.4±19.6 N/kgで有意差は認めなかった。最大パワー(伸展)はストレッチング-0.4±15.4 N/kg,NM9.6±31.07 N/kgで有意差は認めなかった。ストレッチングとNMの差分において最大屈曲トルク-0.0108 N/kg最大伸展トルク-0.018N/kgで有意差を認めなかった。最大屈曲パワー4.9N/kg最大伸展パワー-10.15 N/kgで有意差を認めた(P<0.05)。
【考察】
等尺性収縮においてストレッチングとNMの影響に違いは認めなかった。等速性収縮においてもストレッチングとNMの影響に違いは認めなかった。ストレッチングとNMが主動作筋である屈曲筋力と拮抗筋である伸展筋力に及ぼす作用でみた場合,最大屈曲パワーと最大伸展パワーに有意差を認めた。ストレッチングは膝関節伸展パワーと比較し膝関節屈曲パワーに有効的に働き,NMは膝関節屈曲パワーと比較し膝関節伸展パワーに有効に働くことが示唆された。最大トルクに対しては屈曲と伸展による差はなかった。パワーは単位時間あたりの筋発揮であり,速度を要する動作においてストレッチングとNMを有効的に使い分けることが可能だと考えた。
NMは神経線維の緊張が弛み,神経伝導速度は低下すると言われている。介在ニューロンに対して刺激を与え,前角細胞の電位を下げ,膝関節屈曲筋活動を抑制し,伸展筋力が増加傾向になると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究よりハムストリングスのストレッチングは膝関節屈曲の筋出力に対し有効な結果をもたらし,NMは膝関節伸展の筋出力に有効な結果をもたらす事が示唆された。ストレッチングとNMは分けて行う事で,治療の幅を広げる事が考えられる。スポーツ現場では,双方を調整する事で効果的な筋出力向上が考えられる。今後はNMの変化・対象について,検証する必要があると考えられる。
筋出力に影響する要因は,神経と筋肉の2つに分けられる。我々は第49回全国理学療法士学術大会において,神経モビライゼーション(以下NM)が筋出力向上に影響することを報告した。一方,ストレッチングにおいても,筋出力向上に影響があると報告した研究は多い。臨床においてストレッチングやNMは多く用いられる手技だが,筋出力に対する各々の効果は明らかではない。本研究はNMとストレッチングが筋出力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常成人男性13名(24.5±1.9歳)とし利き足側の下肢に対し計測を実施した。使用機器は,イージーテックプラス(Easy tech),ストップウォッチ(CASIO),メトロノーム(KORG)とした。膝関節屈曲・伸展の筋出力計測は等尺性収縮,等速性収縮の2つの収縮形態で行った。筋出力は等尺性収縮の屈曲最大トルク,等速性収縮の屈曲・伸展最大トルク,屈曲・伸展最大パワーを評価した。等尺性収縮は計測肢位を股関節90度,膝関節60度に設定し,10秒間収縮を行った。等速性収縮の設定では,反復回数を5回,角速度を屈曲・伸展90度と設定した。各測定は開始5秒前から声掛けを行い,測定中は必要な声掛け以外行わず,静かな環境で行った。筋出力はNM,ストレッチング前後で計測した。検者はベッド上にて体幹,非検査側の大腿部,足部をベルトで固定しNM,ストレッチングを実施した。NMは坐骨神経を対象とした。Maitland Conceptのgrade4を参考に,膝関節伸展位,股関節屈曲位にて,足関節背屈を行い,2Hzの反復伸張刺激を10秒間与えた。ストレッチングは,ハムストリングスを対象とした。股関節・膝関節90度屈曲位から膝関節伸展を行った。伸張度は,痛みを感じない最大伸張位を至適強度とし,時間は6秒間保持した。
解析は,各パラメータでNM前後とストレッチング前後の筋出力の差を算出し2施行間で比較した。また,NMとストレッチングで最大トルクと最大パワーそれぞれの屈曲と伸展に及ぼす差を検討するため,NMとストレッチングの差分を屈曲トルク・伸展トルク間,屈曲パワー・伸展パワー間で比較した。統計は二元配置分散分析にて検討した。測定した筋出力の値は体重で正規化した。Bonferroniの多重比較検定を実施し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
等尺性収縮において,最大トルクはストレッチング-0.014±0.29N/kg,NM0.013±0.18 N/kgで有意差は認めなかった。
等速性収縮において最大トルク(屈曲/体重)はストレッチング0.013±0.129 N/kg,NM0.024±0.139 N/kgで,有意差を認めなかった。最大トルクは(伸展/体重)ストレッチング0.025±0.153N/kg,NM0.044±0.248 N/kgで有意差は認めなかった。最大パワー(屈曲)はストレッチング7.3±22.7 N/kg,NM2.4±19.6 N/kgで有意差は認めなかった。最大パワー(伸展)はストレッチング-0.4±15.4 N/kg,NM9.6±31.07 N/kgで有意差は認めなかった。ストレッチングとNMの差分において最大屈曲トルク-0.0108 N/kg最大伸展トルク-0.018N/kgで有意差を認めなかった。最大屈曲パワー4.9N/kg最大伸展パワー-10.15 N/kgで有意差を認めた(P<0.05)。
【考察】
等尺性収縮においてストレッチングとNMの影響に違いは認めなかった。等速性収縮においてもストレッチングとNMの影響に違いは認めなかった。ストレッチングとNMが主動作筋である屈曲筋力と拮抗筋である伸展筋力に及ぼす作用でみた場合,最大屈曲パワーと最大伸展パワーに有意差を認めた。ストレッチングは膝関節伸展パワーと比較し膝関節屈曲パワーに有効的に働き,NMは膝関節屈曲パワーと比較し膝関節伸展パワーに有効に働くことが示唆された。最大トルクに対しては屈曲と伸展による差はなかった。パワーは単位時間あたりの筋発揮であり,速度を要する動作においてストレッチングとNMを有効的に使い分けることが可能だと考えた。
NMは神経線維の緊張が弛み,神経伝導速度は低下すると言われている。介在ニューロンに対して刺激を与え,前角細胞の電位を下げ,膝関節屈曲筋活動を抑制し,伸展筋力が増加傾向になると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究よりハムストリングスのストレッチングは膝関節屈曲の筋出力に対し有効な結果をもたらし,NMは膝関節伸展の筋出力に有効な結果をもたらす事が示唆された。ストレッチングとNMは分けて行う事で,治療の幅を広げる事が考えられる。スポーツ現場では,双方を調整する事で効果的な筋出力向上が考えられる。今後はNMの変化・対象について,検証する必要があると考えられる。