[O-0605] 早期理学療法実施中における急性期脳卒中患者の大腿四頭筋筋筋厚変化
Keywords:脳卒中, 大腿四頭筋, 超音波画像診断
【はじめに】
現在,脳卒中患者に対する理学療法は廃用症候群や合併症を予防するために発症後早期より開始することが重要と考えられている。しかし,実際に早期理学療法を実施している間に廃用性筋委縮,特に下肢筋委縮がどの程度予防できているかは知られていない。本研究の目的は,早期理学療法実施中の急性期脳卒中患者における大腿四頭筋筋厚変化を検討することである。
【方法】
対象は脳卒中発症に伴い二次救急指定病院(単施設)へ入院後,理学療法指示があった脳内出血及び脳梗塞患者のうち,病前は歩行が自立していたが理学療法開始時において歩行に何らかの介助を要する状態(modified Rankin Scale;mRS=4,5)であった連続27例とした。除外基準は初回測定以降に外科的治療を行った例,転院・死亡退院例,測定期間内に歩行が自立した例とした。大腿四頭筋筋厚の測定は超音波診断装置LOGIQ P5(GEヘルスケアジャパン株式会社製),周波数8MHzのリニアプローブ(GEヘルスケアジャパン株式会社製)を用いて,臥位の患者の両側大腿中央(膝蓋骨上縁と上前腸骨棘の中点)において行った。初回測定を発症後1週間以内(入院時)に行い,その日から2週間後に2回目の測定を行った。また患者属性として測定開始後最重症時の神経症状(National Institute of Health Stroke Scale;NIHSS)及び下肢運動麻痺(下肢Fugl-Meyer Assessment;FMA),入院時の栄養指標(血清アルブミン値,Body Mass Index;BMI),炎症マーカー最高値(2週間後までに最も高値を示したC反応性蛋白;CRP)をカルテから抽出した。また,発症から理学療法開始まで,立位練習開始まで,経口もしくは経管栄養開始までの日数についても算出した。統計学的解析として,麻痺側及び非麻痺側大腿四頭筋筋厚の変化について対応のあるt検定用いて比較した。また,麻痺側及び非麻痺側大腿四頭筋筋厚変化率と各患者属性との関係についてPearsonの相関係数を算出した。すべての統計はSPSS ver.20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者のうち除外基準に該当した5例(初回測定後の外科的治療1例,転院1例,死亡1例,経過中の歩行自立2例)を除いた22例(年齢69.6±13.8歳,男性:女性=16例:6例,脳内出血:脳梗塞=9例:13例)を解析対象とした。解析対象者のNIHSSは13.8±7.4点,下肢FMAは10.4±12.1点,発症後理学療法開始まで0.8±0.8日,経口もしくは経管栄養開始まで2.1±2.3日,立位練習開始まで3.0±4.1日であり,全例において状態に合わせて早期から装具療法等を併用しながらの立位・歩行練習が実施されていた(装具療法併用=14例)。大腿四頭筋筋厚について,麻痺側(29.3±7.1mm:23.4±7.3mm=入院時:2週間後),非麻痺側(29.6±7.5mm:25.4±8.4mm)ともに2週間で有意(それぞれp<0.001)に減少した。筋厚変化率はそれぞれ-20.5±12.6%:-14.5±16.0%(麻痺側:非麻痺側)であり,非麻痺側と比べて麻痺側で有意に減少していた(p=0.021)。また,麻痺側及び非麻痺側筋厚変化率と各属性との関係をみると,麻痺側筋厚変化率はNIHSS(r=-0.62,p=0.002),CRP(r=-0.51,p=0.02),経口もしくは経管栄養開始までの日数(r=-0.47,p=0.03),下肢運動麻痺(r=0.45,p=0.03)と有意な相関を認め,非麻痺側筋厚変化率はNIHSS(r=-0.59,p=0.004),CRP(r=-0.45,p=0.03),と有意な相関を認めた。
【考察】
歩行が自立していない急性期脳卒中患者では,発症後早期から理学療法を行っていても麻痺側だけでなく非麻痺側も大腿四頭筋筋委縮は進行していた。また,重症例や経過中に炎症所見が高値を示す例では,麻痺側,非麻痺側ともに大腿四頭筋筋委縮の進行は速いと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳卒中患者における下肢筋委縮を防ぐ理学療法手法を検討する上で,基礎的データになり得ると考えられる。
現在,脳卒中患者に対する理学療法は廃用症候群や合併症を予防するために発症後早期より開始することが重要と考えられている。しかし,実際に早期理学療法を実施している間に廃用性筋委縮,特に下肢筋委縮がどの程度予防できているかは知られていない。本研究の目的は,早期理学療法実施中の急性期脳卒中患者における大腿四頭筋筋厚変化を検討することである。
【方法】
対象は脳卒中発症に伴い二次救急指定病院(単施設)へ入院後,理学療法指示があった脳内出血及び脳梗塞患者のうち,病前は歩行が自立していたが理学療法開始時において歩行に何らかの介助を要する状態(modified Rankin Scale;mRS=4,5)であった連続27例とした。除外基準は初回測定以降に外科的治療を行った例,転院・死亡退院例,測定期間内に歩行が自立した例とした。大腿四頭筋筋厚の測定は超音波診断装置LOGIQ P5(GEヘルスケアジャパン株式会社製),周波数8MHzのリニアプローブ(GEヘルスケアジャパン株式会社製)を用いて,臥位の患者の両側大腿中央(膝蓋骨上縁と上前腸骨棘の中点)において行った。初回測定を発症後1週間以内(入院時)に行い,その日から2週間後に2回目の測定を行った。また患者属性として測定開始後最重症時の神経症状(National Institute of Health Stroke Scale;NIHSS)及び下肢運動麻痺(下肢Fugl-Meyer Assessment;FMA),入院時の栄養指標(血清アルブミン値,Body Mass Index;BMI),炎症マーカー最高値(2週間後までに最も高値を示したC反応性蛋白;CRP)をカルテから抽出した。また,発症から理学療法開始まで,立位練習開始まで,経口もしくは経管栄養開始までの日数についても算出した。統計学的解析として,麻痺側及び非麻痺側大腿四頭筋筋厚の変化について対応のあるt検定用いて比較した。また,麻痺側及び非麻痺側大腿四頭筋筋厚変化率と各患者属性との関係についてPearsonの相関係数を算出した。すべての統計はSPSS ver.20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者のうち除外基準に該当した5例(初回測定後の外科的治療1例,転院1例,死亡1例,経過中の歩行自立2例)を除いた22例(年齢69.6±13.8歳,男性:女性=16例:6例,脳内出血:脳梗塞=9例:13例)を解析対象とした。解析対象者のNIHSSは13.8±7.4点,下肢FMAは10.4±12.1点,発症後理学療法開始まで0.8±0.8日,経口もしくは経管栄養開始まで2.1±2.3日,立位練習開始まで3.0±4.1日であり,全例において状態に合わせて早期から装具療法等を併用しながらの立位・歩行練習が実施されていた(装具療法併用=14例)。大腿四頭筋筋厚について,麻痺側(29.3±7.1mm:23.4±7.3mm=入院時:2週間後),非麻痺側(29.6±7.5mm:25.4±8.4mm)ともに2週間で有意(それぞれp<0.001)に減少した。筋厚変化率はそれぞれ-20.5±12.6%:-14.5±16.0%(麻痺側:非麻痺側)であり,非麻痺側と比べて麻痺側で有意に減少していた(p=0.021)。また,麻痺側及び非麻痺側筋厚変化率と各属性との関係をみると,麻痺側筋厚変化率はNIHSS(r=-0.62,p=0.002),CRP(r=-0.51,p=0.02),経口もしくは経管栄養開始までの日数(r=-0.47,p=0.03),下肢運動麻痺(r=0.45,p=0.03)と有意な相関を認め,非麻痺側筋厚変化率はNIHSS(r=-0.59,p=0.004),CRP(r=-0.45,p=0.03),と有意な相関を認めた。
【考察】
歩行が自立していない急性期脳卒中患者では,発症後早期から理学療法を行っていても麻痺側だけでなく非麻痺側も大腿四頭筋筋委縮は進行していた。また,重症例や経過中に炎症所見が高値を示す例では,麻痺側,非麻痺側ともに大腿四頭筋筋委縮の進行は速いと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳卒中患者における下肢筋委縮を防ぐ理学療法手法を検討する上で,基礎的データになり得ると考えられる。