[O-0720] 理学療法専攻1年生における自己効力と授業に希求する価値の関連
Keywords:理学療法学生, 自己効力, 因子分析
【はじめに】近年,本邦では理学療法養成校への年間入学者が1万人を超えるようになったが,途中退学や留年する者も増えており,彼らの処遇や学習行動を高めることが急務となっている。理学療法養成校の入学者が授業内容にどのような価値を求めているかを把握することは,導入時教育の在り方や知的好奇心を満足させる授業計画を立てる上でも有用と考えられる。Ecclesら(1985)は学習が有する価値について,学習することの面白さを表す「興味価値」,学習の取り組みや成功が望ましい自己スキーマの獲得につながるという「獲得価値」及び学習が希望する職業に関連している「利用価値」の3つを指摘している。学習者が学習に対する3つの価値を有する者ほど,学習行動も積極的になることが推測され得る。一方,Bandura(1977)によって提唱された社会的学習理論では,ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度上手く行うかという個人の確信を「自己効力」と呼んでいる。また,自己が認知した自己効力が高いほど行動遂行に費やす努力を増すことが既に知られている。これまで,理学療法学生の学習行動を考察する上で,自己効力と養成校の授業に求める価値について検討した報告は少ない。そこで今回,理学療法専攻の1年生を対象に自己効力と授業に求める価値について各々の構造を分析し,両者の関係について検討した。
【方法】対象は質問紙調査に回答した4養成校で学ぶ理学療法専攻1年生144名(男性66名,女性78名,平均年齢18.7±5.7歳)であった。質問紙調査(留め置き法)時期は2014年6~9月であり,調査票には基本属性,課題価値測定尺度(伊田2001)の短縮版20項目,一般性セルフ・エフィカシー尺度(坂野ら1986,16項目)などで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,課題価値測定尺度と一般性セルフ・エフィカシー尺度についてはプロマックス回転による探索的因子分析を行い,各々の構成因子の因子得点間でPearson相関係数を算出した。
【結果と考察】
探索的因子分析の結果,課題価値測定尺度では先行研究と同様に「興味価値」,「獲得価値」及び「利用価値」の3因子が抽出され,クロンバックα係数は各々.91,.88,.84であり,内的整合性が得られた。また,一般性セルフ・エフィカシー尺度でも先行研究と同様に「行動の積極性」,「失敗に対する不安」「優れた能力」の3因子が抽出され,クロンバックα係数は各々.88,.84,.77であり,内的整合性が得られた。各々の構成因子の因子得点間の相関係数では,「獲得価値」と「行動の積極性」間で。78,「利用価値」と「行動の積極性」間で。74と高い正の値を得たが,「獲得価値」と「失敗に対する不安」間では-.64と負の値を示した。本調査の対象者では,自身が認知した学習や課題に対する自己効力が高い場合には積極的な学習行動を取ると考えられる。しかし,逆に過去に体験した失敗に対しては不安が高まり,学習の取り組みや成功が必ずしも望ましい自己スキーマの獲得につながらないことが示唆された。一般に自己効力が特定の行動変容に影響を与える要素として,マグニチュード(自身が認知する対処レベル)と強度(確信の強さ)がある。このことを根拠に,1年生への教育的介入には段階的な課題の提供と成功体験を積み重ねさせる必要性が認められた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,理学療法専攻1年生が授業に希求する価値は自己効力との間に関連が認められ,彼らの学習行動を高めるための教育的介入についての知見が得られた。
【方法】対象は質問紙調査に回答した4養成校で学ぶ理学療法専攻1年生144名(男性66名,女性78名,平均年齢18.7±5.7歳)であった。質問紙調査(留め置き法)時期は2014年6~9月であり,調査票には基本属性,課題価値測定尺度(伊田2001)の短縮版20項目,一般性セルフ・エフィカシー尺度(坂野ら1986,16項目)などで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,課題価値測定尺度と一般性セルフ・エフィカシー尺度についてはプロマックス回転による探索的因子分析を行い,各々の構成因子の因子得点間でPearson相関係数を算出した。
【結果と考察】
探索的因子分析の結果,課題価値測定尺度では先行研究と同様に「興味価値」,「獲得価値」及び「利用価値」の3因子が抽出され,クロンバックα係数は各々.91,.88,.84であり,内的整合性が得られた。また,一般性セルフ・エフィカシー尺度でも先行研究と同様に「行動の積極性」,「失敗に対する不安」「優れた能力」の3因子が抽出され,クロンバックα係数は各々.88,.84,.77であり,内的整合性が得られた。各々の構成因子の因子得点間の相関係数では,「獲得価値」と「行動の積極性」間で。78,「利用価値」と「行動の積極性」間で。74と高い正の値を得たが,「獲得価値」と「失敗に対する不安」間では-.64と負の値を示した。本調査の対象者では,自身が認知した学習や課題に対する自己効力が高い場合には積極的な学習行動を取ると考えられる。しかし,逆に過去に体験した失敗に対しては不安が高まり,学習の取り組みや成功が必ずしも望ましい自己スキーマの獲得につながらないことが示唆された。一般に自己効力が特定の行動変容に影響を与える要素として,マグニチュード(自身が認知する対処レベル)と強度(確信の強さ)がある。このことを根拠に,1年生への教育的介入には段階的な課題の提供と成功体験を積み重ねさせる必要性が認められた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,理学療法専攻1年生が授業に希求する価値は自己効力との間に関連が認められ,彼らの学習行動を高めるための教育的介入についての知見が得られた。