[O-0775] 地域在住中高齢者における運動介入の効果について―歩数と消費カロリーの側面からの検討―
キーワード:ロコモーショントレーニング, 歩数, 消費カロリー
【目的】超高齢社会の我が国では健康寿命の延伸が課題となっている。健康日本21において運動に対する意識の向上があげられ,日常生活における歩数の増加やウォーキングの重要性が提言されている。1日の目標歩数として男性9,200歩,女性8,300歩と示されている中,平成23年度においては男性7,233歩,女性6,437歩と目標値に達していない。また,1日30分以上のウォーキングを週2日行っている者の割合は60歳以上で男性42.6%,女性38.4%と半数を下回っており運動習慣の定着は予想以上に高くないことが報告されている。運動の習慣化に難渋している現状において,最近ではウォーキングだけでなく炊事や洗濯などを含む身体活動量の向上も重要視されつつある。日本整形外科学会により提唱されたロコモティブシンドロームのセルフトレーニングとしてロコモーショントレーニング(以下,ロコトレ)がある。ロコトレの指導は低頻度の介入であり,場所や時間にとらわれず行えるという利点がある。先行研究により運動機能の改善効果は報告されている。しかしながら,歩数と消費カロリーの側面からみた報告は少ない。そこで,本研究の目的は地域在住中高齢者において運動介入の効果を歩数と消費カロリーの側面から検討することとした。
【方法】対象は埼玉県伊奈町在住の269名(男性135名,女性134名)である。対象者は無作為に運動介入群150名,対照群119名に分けた。対象者には活動量計(TANITA社製カロリズムEXPERT)を配布した。カロリズムは従来の歩数に加えて消費カロリーが計測できる。対象者には14日間装着して頂き,郵送にて送り返して頂いた。活動量計の装着位置は上半身とし,装着時間は起床時から就寝前まで(入浴時以外)とした。運動介入群に対してはロコトレ(スクワット,片脚立ち,カーフレイズ)とウォーキングの指導を行った。また,対照群は調査の期間中はそれまでの生活を維持するように伝え,運動介入群に対しては,7日間はそれまでの生活を維持し,8日目からロコトレなどの運動を行うよう伝えた。なお,実際の運動実施についてはトレーニングノートを配布し,実施状況の把握を行った。検討方法は第一に,介入群と対照群の分布を対応のないt検定にて検討した。第二に,運動介入の有無(介入群・対照群)と測定時期(前・後)を2要因とした二元配置分散分析,多重比較検定にて検討した。統計解析にはPASW.Ver18を用い有意水準は5%とした。
【結果】地域在住中高齢者の歩数は4,571±179歩(男性5,390±3,276歩,女性3,789±2,252歩),消費カロリーは606.1±21.0kcalであった。介入群と対照群において,年齢,性別,運動機能に有意差は認めなかった。二元配置分散分析の結果,運動介入の有無と測定時期の交互作用がみられた(p<0.05)。その後の多重比較検定において,介入群の歩数は前4,580±3,130歩,後5,400±2,932歩で有意に増加していた。対照群の歩数は前4,559±2,668歩,後4,329±4,014歩で有意差は認めなかった。歩数は,介入群の後と対照群の後で有意差を認めた。介入群の消費カロリーは前592.7±347.6kcal,後611.7±288.4kcalで有意差は認めなかった。対照群の消費カロリーは前622.9±341.7kcal,後563.5±243.4kcalで有意に低下していた。消費カロリーは介入群の前と対照群の前,介入群の後と対照群の後で有意差は認めなかった。
【考察】本研究の結果,平均歩数では厚生労働省で示されている数値と比べて少ない結果となったが,年々低下傾向にあるという報告を考慮すると,今回の結果が妥当であると考える。消費カロリーは,先行研究により推奨されている300kcal/日を大きく上回っていた。さらに,歩数は運動介入の前後において有意に増加し,消費カロリーは維持されていた。今回行ったロコモ予防の介入では,歩数や消費カロリーにおいても改善傾向があり,運動を習慣化するための一助となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】ロコトレ介入による効果を示すことは,身体活動量の維持・向上に寄与し健康寿命の延伸に繋がることが期待される。
【方法】対象は埼玉県伊奈町在住の269名(男性135名,女性134名)である。対象者は無作為に運動介入群150名,対照群119名に分けた。対象者には活動量計(TANITA社製カロリズムEXPERT)を配布した。カロリズムは従来の歩数に加えて消費カロリーが計測できる。対象者には14日間装着して頂き,郵送にて送り返して頂いた。活動量計の装着位置は上半身とし,装着時間は起床時から就寝前まで(入浴時以外)とした。運動介入群に対してはロコトレ(スクワット,片脚立ち,カーフレイズ)とウォーキングの指導を行った。また,対照群は調査の期間中はそれまでの生活を維持するように伝え,運動介入群に対しては,7日間はそれまでの生活を維持し,8日目からロコトレなどの運動を行うよう伝えた。なお,実際の運動実施についてはトレーニングノートを配布し,実施状況の把握を行った。検討方法は第一に,介入群と対照群の分布を対応のないt検定にて検討した。第二に,運動介入の有無(介入群・対照群)と測定時期(前・後)を2要因とした二元配置分散分析,多重比較検定にて検討した。統計解析にはPASW.Ver18を用い有意水準は5%とした。
【結果】地域在住中高齢者の歩数は4,571±179歩(男性5,390±3,276歩,女性3,789±2,252歩),消費カロリーは606.1±21.0kcalであった。介入群と対照群において,年齢,性別,運動機能に有意差は認めなかった。二元配置分散分析の結果,運動介入の有無と測定時期の交互作用がみられた(p<0.05)。その後の多重比較検定において,介入群の歩数は前4,580±3,130歩,後5,400±2,932歩で有意に増加していた。対照群の歩数は前4,559±2,668歩,後4,329±4,014歩で有意差は認めなかった。歩数は,介入群の後と対照群の後で有意差を認めた。介入群の消費カロリーは前592.7±347.6kcal,後611.7±288.4kcalで有意差は認めなかった。対照群の消費カロリーは前622.9±341.7kcal,後563.5±243.4kcalで有意に低下していた。消費カロリーは介入群の前と対照群の前,介入群の後と対照群の後で有意差は認めなかった。
【考察】本研究の結果,平均歩数では厚生労働省で示されている数値と比べて少ない結果となったが,年々低下傾向にあるという報告を考慮すると,今回の結果が妥当であると考える。消費カロリーは,先行研究により推奨されている300kcal/日を大きく上回っていた。さらに,歩数は運動介入の前後において有意に増加し,消費カロリーは維持されていた。今回行ったロコモ予防の介入では,歩数や消費カロリーにおいても改善傾向があり,運動を習慣化するための一助となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】ロコトレ介入による効果を示すことは,身体活動量の維持・向上に寄与し健康寿命の延伸に繋がることが期待される。