[O-0784] 高齢慢性心不全患者における退院時歩行速度は自宅退院後の身体活動量と関連する
Keywords:慢性心不全, 身体活動量, 歩行速度
【はじめに,目的】
慢性心不全(CHF)患者において,身体活動量(PA)の多寡が生命予後と関連することが明らかになっており,CHF患者に対するPA増進の介入は重要である。PA増進のためにはPAに関わる要因を明らかにする必要があるが,先行研究では,CHF患者におけるPAの関連因子として運動耐容能や四肢筋力が示されている。一方で,人口の高齢化や医療技術の進歩によりCHF患者における高齢者の割合は増加傾向にあり,そのような高齢者はいわゆる「フレイル」を呈している場合が多い。そのような高齢者は身体機能の低下により,心肺運動負荷試験や筋力測定などの身体機能測定が困難な場合を認め,PA増進の介入指標として運動耐容能や四肢筋力を使用できない可能性がある。そこで本研究は,高齢CHF患者における自宅退院後のPAと,パフォーマンスを測定する身体機能指標である歩行速度およびShort Physical Performance Battery(SPPB)の関連性について明らかすることを目的とした。
【方法】
対象は,2013年12月から2014年6月に間に,当院にCHF増悪により入院し,入院中より心臓リハビリテーションを施行した65歳以上の高齢者,18例(男性13例,女性5例,年齢77±8歳)とした。社会人口統計学的要因として性別,年齢,Body Mass Index(BMI)を調査した。病態特性として基礎心疾患,退院時のNYHA分類,経胸壁心エコー所見,血液検査所見,薬物療法状況を電子カルテ上の診療録を用い調査した。退院時に身体機能指標としてSPPBおよび通常歩行速度を測定した。PAは3軸加速度計付き身体活動量計(メディウォーク,TERUMO社製)を用いて,自宅退院3ヶ月後に対象者の自宅に身体活動量計を郵送し測定した。装着期間は装着開始から連続10日間とし,装着開始と終了日を除いた8日間における1日あたりの平均歩数を算出しPAの代表値として使用した。PAと各調査項目との関連についてはPearsonの相関係数を用いて検証した。その上で,PAと相関を認めた因子を独立変数,退院後歩数を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を用いてPAに関連する因子を検証した。全ての統計学的解析はSPSS 19.0を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
基礎心疾患はそれぞれ虚血性心筋症3例,突発性心筋症5例,弁膜症6例,その他4例であった。NYHA分類はそれぞれI:6例,II:10例,III:2例であった。PAは3892±2828歩/日であった。PAと年齢(r=-0.47,p<0.05),通常歩行速度(r=0.57,p<0.05),SPPB得点(r=0.50,p<0.05)の間に有意な相関を認めた。年齢,通常歩行速度,SPPB得点を独立変数とし,PAを従属変数とした重回帰分析の結果,通常歩行速度のみが身体活動量を規定する因子として抽出された(R2=0.33,P<0.05)。
【考察】
高齢CHF患者における自宅退院後のPAは退院時の歩行速度と関連することが明らかとなった。歩行速度の測定は身体機能低下を呈している高齢者に対しても実施可能であり,高齢CHF患者に対してPA増進の介入を行う際の指標として使用できる可能性があると考える。しかし,本研究ではPAの多寡を予測する歩行速度のカットオフ値の算出までに至っていないため,今後の検討課題としていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
高齢慢性心不全患者における自宅退院後の身体活動量と関連する入院時の因子を示したことは,慢性心不全患者に対する身体活動増進のための介入の一助となり得る。
慢性心不全(CHF)患者において,身体活動量(PA)の多寡が生命予後と関連することが明らかになっており,CHF患者に対するPA増進の介入は重要である。PA増進のためにはPAに関わる要因を明らかにする必要があるが,先行研究では,CHF患者におけるPAの関連因子として運動耐容能や四肢筋力が示されている。一方で,人口の高齢化や医療技術の進歩によりCHF患者における高齢者の割合は増加傾向にあり,そのような高齢者はいわゆる「フレイル」を呈している場合が多い。そのような高齢者は身体機能の低下により,心肺運動負荷試験や筋力測定などの身体機能測定が困難な場合を認め,PA増進の介入指標として運動耐容能や四肢筋力を使用できない可能性がある。そこで本研究は,高齢CHF患者における自宅退院後のPAと,パフォーマンスを測定する身体機能指標である歩行速度およびShort Physical Performance Battery(SPPB)の関連性について明らかすることを目的とした。
【方法】
対象は,2013年12月から2014年6月に間に,当院にCHF増悪により入院し,入院中より心臓リハビリテーションを施行した65歳以上の高齢者,18例(男性13例,女性5例,年齢77±8歳)とした。社会人口統計学的要因として性別,年齢,Body Mass Index(BMI)を調査した。病態特性として基礎心疾患,退院時のNYHA分類,経胸壁心エコー所見,血液検査所見,薬物療法状況を電子カルテ上の診療録を用い調査した。退院時に身体機能指標としてSPPBおよび通常歩行速度を測定した。PAは3軸加速度計付き身体活動量計(メディウォーク,TERUMO社製)を用いて,自宅退院3ヶ月後に対象者の自宅に身体活動量計を郵送し測定した。装着期間は装着開始から連続10日間とし,装着開始と終了日を除いた8日間における1日あたりの平均歩数を算出しPAの代表値として使用した。PAと各調査項目との関連についてはPearsonの相関係数を用いて検証した。その上で,PAと相関を認めた因子を独立変数,退院後歩数を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を用いてPAに関連する因子を検証した。全ての統計学的解析はSPSS 19.0を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
基礎心疾患はそれぞれ虚血性心筋症3例,突発性心筋症5例,弁膜症6例,その他4例であった。NYHA分類はそれぞれI:6例,II:10例,III:2例であった。PAは3892±2828歩/日であった。PAと年齢(r=-0.47,p<0.05),通常歩行速度(r=0.57,p<0.05),SPPB得点(r=0.50,p<0.05)の間に有意な相関を認めた。年齢,通常歩行速度,SPPB得点を独立変数とし,PAを従属変数とした重回帰分析の結果,通常歩行速度のみが身体活動量を規定する因子として抽出された(R2=0.33,P<0.05)。
【考察】
高齢CHF患者における自宅退院後のPAは退院時の歩行速度と関連することが明らかとなった。歩行速度の測定は身体機能低下を呈している高齢者に対しても実施可能であり,高齢CHF患者に対してPA増進の介入を行う際の指標として使用できる可能性があると考える。しかし,本研究ではPAの多寡を予測する歩行速度のカットオフ値の算出までに至っていないため,今後の検討課題としていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
高齢慢性心不全患者における自宅退院後の身体活動量と関連する入院時の因子を示したことは,慢性心不全患者に対する身体活動増進のための介入の一助となり得る。