[O-0799] 長期的なMechanically Assisted Coughingの施行がTPPV管理の神経筋疾患の静的肺コンプライアンスに与える効果
Keywords:神経筋疾患, 器械的咳介助, 長期効果
【はじめに,目的】侵襲的人工呼吸療法(tracheostomy positive pressure ventilation:TPPV)管理の神経筋疾患に対する呼吸ケアとして,器械的咳介助(mechanical insufflation-exsufflation:MI-E)が臨床上排痰目的のみならず肺や胸郭の拡張性を維持・改善させる目的でも施行されている。
MI-Eの効果を示した先行研究としては,短期効果としてMI-E施行直後に努力性肺活量や最大中間呼気流速の増加が報告されている(Bach JR et al., 1993)。コクラン共同計画によるMI-Eに関するシステマティック・レビューによると咳嗽を増強させることが可能であるが,短期間の報告のみでエビデンスも不十分であると報告されている(Morrow B et al., 2013)。MI-Eは有用であると考えられるが,エビデンスは乏しく長期的な施行が排痰効果以外で肺コンプライアンスに影響を与えるかどうか明らかでない。今回,臨床上定期的な排痰の必要性がある患者で,長期的にMI-Eに徒手介助を加えたmechanically assisted coughing(MAC)を施行していた群をMAC群,MACの受け入れ拒否や排痰の必要性が低く施行していなかった群をコントロール群とし,長期的なMACの施行が肺コンプライアンスに与える効果を検証することを目的とした。
【方法】
対象は,当院入所中の除外基準に該当しないTPPV管理の筋萎縮性側策硬化症(ALS)24例,Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)6例,福山型筋ジストロフィー(FCMD)7例の計37例である。除外基準は,他の進行性肺疾患,心不全等により状態が不安定な患者,自発呼吸のある患者(VC>100ml),従圧式換気で管理されている患者,静的肺コンプライアンス(Cst)測定が不可能な人工呼吸器を使用している患者とした。
年齢,身長,体重,BMI,栄養状態,罹病期間,TPPV管理期間,呼吸器感染による発熱回数(37.5℃以上),無気肺の有無及び人工呼吸器から測定したCstを診療録より後方視的に調査した。Cst測定は,吸気終末ポーズ法を用いた。人工呼吸器から呼気一回換気量,吸気終末ポーズ圧(EIP),呼気終末陽圧(PEEP)を読み取り,呼気一回換気量を(EIP-PEEP)で除した値をCstとして算出した(ml/cmH2O)。統計解析は,2群間の比較にMann-WhitneyのU検定,2標本t検定,χ2独立性の検定,Fisherの直接法を用いた。統計ソフトにはSPSS17.0J for Windowsを使用し,検定における有意水準は5%未満とした。
【結果】
MAC群がコントロール群に比してCstが有意に高値であった(42.7±16.3 vs. 32.1±14.3 ml/cmH2O,p<0.05)。しかし,呼吸器感染による発熱回数や無気肺の有無には有意差を認めなかった。また,その他の項目はすべて有意差を認めなかった。
【考察】
MAC群において,呼吸器感染による発熱回数の減少や無気肺に関しての効果は認められなかった。その理由としては,臨床上排痰の必要性が高い症例群であったことが考えられる。一方でMAC群は,コントロール群と比してCstに有意な増加が認められた。MACにより深吸気が得られるため長期的な施行が排痰効果以外にCstを維持・改善する方法として有用である可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
神経筋疾患に対して肺や胸郭の拡張性を維持・改善させるために様々な方法が施行されている。本研究では,長期的なMACの施行が排痰効果以外でTPPV管理の神経筋疾患の肺コンプライアンスに影響を与える一つの方法である有用な知見が得られた。
MI-Eの効果を示した先行研究としては,短期効果としてMI-E施行直後に努力性肺活量や最大中間呼気流速の増加が報告されている(Bach JR et al., 1993)。コクラン共同計画によるMI-Eに関するシステマティック・レビューによると咳嗽を増強させることが可能であるが,短期間の報告のみでエビデンスも不十分であると報告されている(Morrow B et al., 2013)。MI-Eは有用であると考えられるが,エビデンスは乏しく長期的な施行が排痰効果以外で肺コンプライアンスに影響を与えるかどうか明らかでない。今回,臨床上定期的な排痰の必要性がある患者で,長期的にMI-Eに徒手介助を加えたmechanically assisted coughing(MAC)を施行していた群をMAC群,MACの受け入れ拒否や排痰の必要性が低く施行していなかった群をコントロール群とし,長期的なMACの施行が肺コンプライアンスに与える効果を検証することを目的とした。
【方法】
対象は,当院入所中の除外基準に該当しないTPPV管理の筋萎縮性側策硬化症(ALS)24例,Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)6例,福山型筋ジストロフィー(FCMD)7例の計37例である。除外基準は,他の進行性肺疾患,心不全等により状態が不安定な患者,自発呼吸のある患者(VC>100ml),従圧式換気で管理されている患者,静的肺コンプライアンス(Cst)測定が不可能な人工呼吸器を使用している患者とした。
年齢,身長,体重,BMI,栄養状態,罹病期間,TPPV管理期間,呼吸器感染による発熱回数(37.5℃以上),無気肺の有無及び人工呼吸器から測定したCstを診療録より後方視的に調査した。Cst測定は,吸気終末ポーズ法を用いた。人工呼吸器から呼気一回換気量,吸気終末ポーズ圧(EIP),呼気終末陽圧(PEEP)を読み取り,呼気一回換気量を(EIP-PEEP)で除した値をCstとして算出した(ml/cmH2O)。統計解析は,2群間の比較にMann-WhitneyのU検定,2標本t検定,χ2独立性の検定,Fisherの直接法を用いた。統計ソフトにはSPSS17.0J for Windowsを使用し,検定における有意水準は5%未満とした。
【結果】
MAC群がコントロール群に比してCstが有意に高値であった(42.7±16.3 vs. 32.1±14.3 ml/cmH2O,p<0.05)。しかし,呼吸器感染による発熱回数や無気肺の有無には有意差を認めなかった。また,その他の項目はすべて有意差を認めなかった。
【考察】
MAC群において,呼吸器感染による発熱回数の減少や無気肺に関しての効果は認められなかった。その理由としては,臨床上排痰の必要性が高い症例群であったことが考えられる。一方でMAC群は,コントロール群と比してCstに有意な増加が認められた。MACにより深吸気が得られるため長期的な施行が排痰効果以外にCstを維持・改善する方法として有用である可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
神経筋疾患に対して肺や胸郭の拡張性を維持・改善させるために様々な方法が施行されている。本研究では,長期的なMACの施行が排痰効果以外でTPPV管理の神経筋疾患の肺コンプライアンスに影響を与える一つの方法である有用な知見が得られた。