[P1-A-0221] 人工股関節全置換術前後での患側立脚期の変動係数と関連項目との関係
Keywords:変形性股関節症, 歩行周期, 変動係数
【はじめに,目的】
歩行立脚期の変動係数(以下:CV)は歩行リズムの指標であり,一般的に高齢者や中枢神経疾患で大きくなり,その数値が大きくなることで転倒リスクは高くなると言われている。変形性股関節症患者(以下:股OA)でもCVは大きくなる傾向があると言われているが,人工股関節全置換術(以下:THA)の術前・術後でのCVの変化の報告はほとんどない。そこで今回,股OA患者のTHA前後でのCV変化およびCVと関連のある項目について調査し,理学療法介入による効果判定の一助となり得るかを調査した。
【方法】
対象は2014年4月~8月に当院整形外科でTHAを行った股OAの患者26名とした。当院THAクリニカルパスは術後2週で抜鉤,3週までに退院となるため,クリニカルパスを逸脱した者,退院時に無杖歩行を獲得できなかった者を除く21例21股(平均年齢66.7±9.0歳/男性5例,女性16例)とした。対象股関節の単純X線像による病期分類は,進行期5例,末期16例であった。評価項目ではCVの測定には圧分布測定装置(ウォークWay MW-1000,Anima)を使用し,圧力分布センサーの前後1m加えた5mを,裸足・快適速度で歩行し,合計4回計測した。また,同日に股関節屈曲・外転の関節可動域(以下:ROM)の測定と,ハンドヘルドダイナモメーターによる股関節屈曲筋群,外転筋群の筋力を3回測定し,平均値を算出した。計測日はTHA術前と術後2週経過時点とした。また,基礎情報として年齢,身長,体重,BMI,脚長差(非術側に対する術側棘果長の比率),術側Sharp角を術前に記録した。統計解析は,CV,その他各項目は術前・術後で対応のあるt検定により比較した。また,術後CVと術後の各項目の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて算出し,統計解析を行った。更に,術後CVと術前の各項目に関しても同様に行い,術後CVに関連のある項目を検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
術前・術後の比較では,CVは術前7.2±4.5%,術後6.7±3.0%で有意差はみられなかった。屈曲ROMは術前81.1±14.8°,術後89.0±8.7°で術後の方が有意に大きかった(p=0.02)。外転ROMは術前15.0±7.9°,術後30.0±7.5°で術後の方が有意に大きかった(p<0.0001)。屈曲筋力,外転筋力に関しては術前後で有意差が認められなかった。術後CVと術後項目の相関に関しては,全ての項目において有意な相関関係を認めなかった。術後CVと術前項目の相関に関しては,外転筋力で有意な負の相関関係を認めた(p=0.02)。
【考察】
一般的に,筋力トレーニング初期の筋力増加は神経系の改善によるもので筋肥大を起こすには4週以上を要すると言われており,歩容改善には8週~12週以上を要するとされている。本研究において術前・術後のCVで有意差が認められなかったのは,術後2週間で歩容安定に繋がる変化が少なかったこと,症例数が少なかったことが考えられる。術後CVと術後項目に相関関係が認められなかったのも,同様に時間的な問題が考えられる。術後CVと術前の外転筋力が相関関係にあったことから,術前より外転筋力を改善させることは,術後CVの改善に繋がることが示唆された。今後CVの変化をみるためには,中長期的に経過を追う必要がある。また,疼痛や満足度等の自覚的指標との関連も検討していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により股OA患者の歩行リズム変化と術前・術後の関連項目についての一端が示唆され,手術に伴う理学療法に寄与できると考える。また,CVは歩容評価の一つとして使用できると考えられる。
歩行立脚期の変動係数(以下:CV)は歩行リズムの指標であり,一般的に高齢者や中枢神経疾患で大きくなり,その数値が大きくなることで転倒リスクは高くなると言われている。変形性股関節症患者(以下:股OA)でもCVは大きくなる傾向があると言われているが,人工股関節全置換術(以下:THA)の術前・術後でのCVの変化の報告はほとんどない。そこで今回,股OA患者のTHA前後でのCV変化およびCVと関連のある項目について調査し,理学療法介入による効果判定の一助となり得るかを調査した。
【方法】
対象は2014年4月~8月に当院整形外科でTHAを行った股OAの患者26名とした。当院THAクリニカルパスは術後2週で抜鉤,3週までに退院となるため,クリニカルパスを逸脱した者,退院時に無杖歩行を獲得できなかった者を除く21例21股(平均年齢66.7±9.0歳/男性5例,女性16例)とした。対象股関節の単純X線像による病期分類は,進行期5例,末期16例であった。評価項目ではCVの測定には圧分布測定装置(ウォークWay MW-1000,Anima)を使用し,圧力分布センサーの前後1m加えた5mを,裸足・快適速度で歩行し,合計4回計測した。また,同日に股関節屈曲・外転の関節可動域(以下:ROM)の測定と,ハンドヘルドダイナモメーターによる股関節屈曲筋群,外転筋群の筋力を3回測定し,平均値を算出した。計測日はTHA術前と術後2週経過時点とした。また,基礎情報として年齢,身長,体重,BMI,脚長差(非術側に対する術側棘果長の比率),術側Sharp角を術前に記録した。統計解析は,CV,その他各項目は術前・術後で対応のあるt検定により比較した。また,術後CVと術後の各項目の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて算出し,統計解析を行った。更に,術後CVと術前の各項目に関しても同様に行い,術後CVに関連のある項目を検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
術前・術後の比較では,CVは術前7.2±4.5%,術後6.7±3.0%で有意差はみられなかった。屈曲ROMは術前81.1±14.8°,術後89.0±8.7°で術後の方が有意に大きかった(p=0.02)。外転ROMは術前15.0±7.9°,術後30.0±7.5°で術後の方が有意に大きかった(p<0.0001)。屈曲筋力,外転筋力に関しては術前後で有意差が認められなかった。術後CVと術後項目の相関に関しては,全ての項目において有意な相関関係を認めなかった。術後CVと術前項目の相関に関しては,外転筋力で有意な負の相関関係を認めた(p=0.02)。
【考察】
一般的に,筋力トレーニング初期の筋力増加は神経系の改善によるもので筋肥大を起こすには4週以上を要すると言われており,歩容改善には8週~12週以上を要するとされている。本研究において術前・術後のCVで有意差が認められなかったのは,術後2週間で歩容安定に繋がる変化が少なかったこと,症例数が少なかったことが考えられる。術後CVと術後項目に相関関係が認められなかったのも,同様に時間的な問題が考えられる。術後CVと術前の外転筋力が相関関係にあったことから,術前より外転筋力を改善させることは,術後CVの改善に繋がることが示唆された。今後CVの変化をみるためには,中長期的に経過を追う必要がある。また,疼痛や満足度等の自覚的指標との関連も検討していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により股OA患者の歩行リズム変化と術前・術後の関連項目についての一端が示唆され,手術に伴う理学療法に寄与できると考える。また,CVは歩容評価の一つとして使用できると考えられる。