[P1-A-0284] 当訪問看護ステーション利用者における廃用症候群の現状についての報告
Keywords:訪問リハ, 不活動, 廃用症候群
【はじめに,目的】
厚生労働省は,要介護度別の原因として35%が廃用症候群関連と報告している。また,高齢者リハビリテーションのモデルの1つに廃用症候群モデルを提唱している。廃用症候群は,高齢者の生活機能低下に対して大きな影響を及ぼす。訪問リハビリテーション(訪問リハ)の利用者においても,廃用症候群が要因となりサービスを開始する場合が多い。廃用症候群に関する診断基準は開発されていないが,Hirschbergは「不活動状態により生ずる二次的障害」と定義している。若林らは,高齢者の廃用症候群の約9割に低栄養を認め,サルコペニアのすべての原因(加齢,活動,栄養,疾患)を合併する可能性があると報告している。訪問リハは低頻度で実施することが多く,その中で廃用症候群に対して効果的なリハビリテーションを実施する必要がある。その為には,不活動を含めた他の要因も明確にすることが重要である。本研究の目的は,当訪問看護ステーションの訪問リハ利用者における廃用症候群の現状を把握し,不活動と低栄養,サルコペニアとの関係性を明らかにすることである。
【方法】
対象は,当訪問看護ステーションで訪問リハを利用する65歳以上で,移動能力が屋内移動修正自立レベル以上であり,かつ質問に回答可能な者,30名(男性13名,女性17名,平均要介護度2.1±1.1,平均年齢75.7±8.0歳)とした。対象者に対して,活動量,栄養およびサルコペニアの有無を調査した。調査項目は,活動量は生活空間の指標であるLife-Space Assessment(LSA),栄養は簡易栄養状態評価法(Mini Nutritional Assessment-Short Form:MNA-SF),サルコペニアの有無は下方らの日本人版サルコペニア簡易基準案とした。各カットオフは,①LSAは日本理学療法士協会から報告されている1年後に活動能力が低下する可能性がある56点未満(不活動),②MNA-SFは0-7ポイント(低栄養),③サルコペニアは下方らの報告による通常歩行速度1m/s未満を伴ったBMI18.5未満もしくは下腿周径30cm未満(サルコペニア)である。各調査項目の結果より,不活動と低栄養,サルコペニアのそれぞれの割合並びに合併した割合を算出した。また不活動と低栄養,サルコペニアとの関係性をみるために,LSAとMNA-SF,サルコペニア有無の関連性を検討した。統計処理には,Pearsonの相関係数およびCochran-Armitage検定を用いた。次に関連性があった項目に対して,重回帰分析を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
結果は,不活動と低栄養,サルコペニアの全てを合併する者は約13.3%(4名),不活動とサルコペニアを合併する者は約33.3%(10名),不活動のみの者は約43.3%(13名),非該当者は10%(3名)であった。LSAとサルコペニアとの関連性は認めなかったが,LSAとMNA-SFには中等度の相関関係を認めた(r=0.47,p<0.01)。次に,相関関係のあったLSAとMNA-SFに対して,従属変数にLSA,独立変数にMNA-SF質問項目を用いて重回帰分析を行った結果,LSAの増大する因子として質問項目C「自力で歩けますか」(β=0.68,p<0.01)と質問項目D「過去3か月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか」(β=0.48,p<0.05)が選択された(R2=0.56,p<0.05)。
【考察】
当訪問看護ステーションにおける訪問リハ利用者で不活動を有する者は約9割であり,先行研究と同様に低栄養とサルコペニアを合併する者は約1割,サルコペニアを合併する者は約3割であった。低栄養やサルコペニアを単独で有する者は認めなかった。不活動との関係性に関しては,低栄養と中等度の相関関係があり,特に移動性や精神的ストレス,急性疾患の要因が影響を与えることが示唆された。竹内らは,脳卒中などによりなんらかの障害をもつと,自宅内に閉じこもりがちとなり,身体的・精神的活動能力が「廃用性」となる「閉じこもり症候群」を指摘している。また,QOLと身体機能との関係性に関する先行研究は多数ある。これらを踏まえて本研究より,不活動は廃用症候群の発端となり,精神的ストレスは不活動を増強させると考える。本研究の限界は,対象が訪問リハを利用する者であり対象者数も少なく,地域高齢者についてまで言及することができない点である。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハ利用者において,不活動を主とした廃用症候群を呈する者は多い。また廃用症候群に対して訪問リハを実施する際は,不活動だけでなく低栄養,サルコペニア,精神的要因についても考慮する必要があると考える。
厚生労働省は,要介護度別の原因として35%が廃用症候群関連と報告している。また,高齢者リハビリテーションのモデルの1つに廃用症候群モデルを提唱している。廃用症候群は,高齢者の生活機能低下に対して大きな影響を及ぼす。訪問リハビリテーション(訪問リハ)の利用者においても,廃用症候群が要因となりサービスを開始する場合が多い。廃用症候群に関する診断基準は開発されていないが,Hirschbergは「不活動状態により生ずる二次的障害」と定義している。若林らは,高齢者の廃用症候群の約9割に低栄養を認め,サルコペニアのすべての原因(加齢,活動,栄養,疾患)を合併する可能性があると報告している。訪問リハは低頻度で実施することが多く,その中で廃用症候群に対して効果的なリハビリテーションを実施する必要がある。その為には,不活動を含めた他の要因も明確にすることが重要である。本研究の目的は,当訪問看護ステーションの訪問リハ利用者における廃用症候群の現状を把握し,不活動と低栄養,サルコペニアとの関係性を明らかにすることである。
【方法】
対象は,当訪問看護ステーションで訪問リハを利用する65歳以上で,移動能力が屋内移動修正自立レベル以上であり,かつ質問に回答可能な者,30名(男性13名,女性17名,平均要介護度2.1±1.1,平均年齢75.7±8.0歳)とした。対象者に対して,活動量,栄養およびサルコペニアの有無を調査した。調査項目は,活動量は生活空間の指標であるLife-Space Assessment(LSA),栄養は簡易栄養状態評価法(Mini Nutritional Assessment-Short Form:MNA-SF),サルコペニアの有無は下方らの日本人版サルコペニア簡易基準案とした。各カットオフは,①LSAは日本理学療法士協会から報告されている1年後に活動能力が低下する可能性がある56点未満(不活動),②MNA-SFは0-7ポイント(低栄養),③サルコペニアは下方らの報告による通常歩行速度1m/s未満を伴ったBMI18.5未満もしくは下腿周径30cm未満(サルコペニア)である。各調査項目の結果より,不活動と低栄養,サルコペニアのそれぞれの割合並びに合併した割合を算出した。また不活動と低栄養,サルコペニアとの関係性をみるために,LSAとMNA-SF,サルコペニア有無の関連性を検討した。統計処理には,Pearsonの相関係数およびCochran-Armitage検定を用いた。次に関連性があった項目に対して,重回帰分析を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
結果は,不活動と低栄養,サルコペニアの全てを合併する者は約13.3%(4名),不活動とサルコペニアを合併する者は約33.3%(10名),不活動のみの者は約43.3%(13名),非該当者は10%(3名)であった。LSAとサルコペニアとの関連性は認めなかったが,LSAとMNA-SFには中等度の相関関係を認めた(r=0.47,p<0.01)。次に,相関関係のあったLSAとMNA-SFに対して,従属変数にLSA,独立変数にMNA-SF質問項目を用いて重回帰分析を行った結果,LSAの増大する因子として質問項目C「自力で歩けますか」(β=0.68,p<0.01)と質問項目D「過去3か月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか」(β=0.48,p<0.05)が選択された(R2=0.56,p<0.05)。
【考察】
当訪問看護ステーションにおける訪問リハ利用者で不活動を有する者は約9割であり,先行研究と同様に低栄養とサルコペニアを合併する者は約1割,サルコペニアを合併する者は約3割であった。低栄養やサルコペニアを単独で有する者は認めなかった。不活動との関係性に関しては,低栄養と中等度の相関関係があり,特に移動性や精神的ストレス,急性疾患の要因が影響を与えることが示唆された。竹内らは,脳卒中などによりなんらかの障害をもつと,自宅内に閉じこもりがちとなり,身体的・精神的活動能力が「廃用性」となる「閉じこもり症候群」を指摘している。また,QOLと身体機能との関係性に関する先行研究は多数ある。これらを踏まえて本研究より,不活動は廃用症候群の発端となり,精神的ストレスは不活動を増強させると考える。本研究の限界は,対象が訪問リハを利用する者であり対象者数も少なく,地域高齢者についてまで言及することができない点である。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハ利用者において,不活動を主とした廃用症候群を呈する者は多い。また廃用症候群に対して訪問リハを実施する際は,不活動だけでなく低栄養,サルコペニア,精神的要因についても考慮する必要があると考える。