[P1-A-0287] 訪問リハビリテーション利用者の保清状況に及ぼす影響について
Keywords:訪問リハビリテーション, 保菌数, 感染予防
【はじめに,目的】
近年,医療及び在宅系サービスを問わず様々な事業所・施設において感染予防対策の重要性が認識されている。在宅療養者の死因のトップは感染症であり,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)事業所でも感染予防は慣行されている。しかし,訪問リハ対象者の保清状況に関する実態は明らかにされていない。
そこで,本研究は訪問リハ利用者の保清状況及びその状態に影響する因子について明らかにし,プログラム立案の基礎資料とすることを目的とした。
【方法】
対象は,弊社附属訪問事業所から訪問リハを利用している要介護高齢者38名(男性21名,女性17名,平均年齢78.5±10.2)とし,利用者の利き手側手掌面からペタンチェック標準寒天培地(栄研器材株式会社)を用いて菌を採取した。採取した検体は,30~35度に設定したインキュベーター内で48~72時間培養を行った後,各検体を写真撮影し,コロニー数を目視で数えた。解析は,保菌数と本人からアンケートした内容(保清に関する意識,家族と同居の有無,手洗いの方法,手洗いの回数及び時間,手洗いの指導経験,手洗いの自立度)との関係をPearsonのカイ二乗検定,障害老人の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度判定基準,要介護度と保菌数との関係をSpearmanの相関係数を用いて検討を行なった。検定は,統計解析ソフトSPSS Ver.19.9(IBM社製)を用い,有意水準5%以下とした。
【結果】
保菌数は,平均231.9個/cm2,21人が保菌数100個/cm2以上と強い汚染状態であった。
保菌数と家族と同居の有無では,家族が同居している対象者ほど有意(p<0.01)に保菌数は多かった。
【考察】
多くの対象者が,強い汚染状態であり,特に家族が同居している対象者ほど保清状況は良くなかった。本研究の対象者は,障害老人の日常生活自立度における準寝たきりの対象者が多く排泄と食事,または更衣に部分的な介護を必要としながらも,多くの対象者は,自己で手洗いを行なっていたこと,除菌商品の使用に比べ洗面所で手洗いを実施する傾向にあったこと,1回の手洗い時間が5~10秒と推奨されている15秒よりも短かったこと,そもそも適切な手洗い方法の指導を受けていないことが,保菌数が多かった原因と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
療養生活における感染予防は,感染合併症を生じさせないだけでなく,身体状況の改善や利用者・家族のQOL向上にもつながる。また,訪問リハでは多くの対象者を循環するため,より多くの対象者に伝播させる可能性が高く,感染経路を遮断することも重要な課題である。今後は,手洗い指導による保菌数の変化や,手洗いの方法について詳細な検討が必要であるとともに,対象者以外の保菌数についても更なる調査が必要であると考えられる。
近年,医療及び在宅系サービスを問わず様々な事業所・施設において感染予防対策の重要性が認識されている。在宅療養者の死因のトップは感染症であり,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)事業所でも感染予防は慣行されている。しかし,訪問リハ対象者の保清状況に関する実態は明らかにされていない。
そこで,本研究は訪問リハ利用者の保清状況及びその状態に影響する因子について明らかにし,プログラム立案の基礎資料とすることを目的とした。
【方法】
対象は,弊社附属訪問事業所から訪問リハを利用している要介護高齢者38名(男性21名,女性17名,平均年齢78.5±10.2)とし,利用者の利き手側手掌面からペタンチェック標準寒天培地(栄研器材株式会社)を用いて菌を採取した。採取した検体は,30~35度に設定したインキュベーター内で48~72時間培養を行った後,各検体を写真撮影し,コロニー数を目視で数えた。解析は,保菌数と本人からアンケートした内容(保清に関する意識,家族と同居の有無,手洗いの方法,手洗いの回数及び時間,手洗いの指導経験,手洗いの自立度)との関係をPearsonのカイ二乗検定,障害老人の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度判定基準,要介護度と保菌数との関係をSpearmanの相関係数を用いて検討を行なった。検定は,統計解析ソフトSPSS Ver.19.9(IBM社製)を用い,有意水準5%以下とした。
【結果】
保菌数は,平均231.9個/cm2,21人が保菌数100個/cm2以上と強い汚染状態であった。
保菌数と家族と同居の有無では,家族が同居している対象者ほど有意(p<0.01)に保菌数は多かった。
【考察】
多くの対象者が,強い汚染状態であり,特に家族が同居している対象者ほど保清状況は良くなかった。本研究の対象者は,障害老人の日常生活自立度における準寝たきりの対象者が多く排泄と食事,または更衣に部分的な介護を必要としながらも,多くの対象者は,自己で手洗いを行なっていたこと,除菌商品の使用に比べ洗面所で手洗いを実施する傾向にあったこと,1回の手洗い時間が5~10秒と推奨されている15秒よりも短かったこと,そもそも適切な手洗い方法の指導を受けていないことが,保菌数が多かった原因と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
療養生活における感染予防は,感染合併症を生じさせないだけでなく,身体状況の改善や利用者・家族のQOL向上にもつながる。また,訪問リハでは多くの対象者を循環するため,より多くの対象者に伝播させる可能性が高く,感染経路を遮断することも重要な課題である。今後は,手洗い指導による保菌数の変化や,手洗いの方法について詳細な検討が必要であるとともに,対象者以外の保菌数についても更なる調査が必要であると考えられる。