[P1-A-0311] 在宅でのトイレ動作と虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテストとの関連
Keywords:トイレ動作, Frail CS-10, 便座高
【はじめに,目的】
虚弱高齢者,要介護高齢者が急増する中で,介護者の負担となる動作の一つにトイレ動作がある。トイレ動作は尿意(便意),起き上がり,立ち上がり,移動,下衣の上げ下げ,排泄といった複合的な動作である。施設と違い在宅では家族が介助者となるため介護負担感という観点も加わる事から,機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM)だけでは不十分な点があると千野らは報告している。
個々の動作は確立しているのに日常的なトイレ動作に介助を要す場合,特に着目すべき点は不明瞭である。そこで,トイレ動作の中でも特に重要度の高い立ち上がりに着目し,簡易な評価法である虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly:Frail CS-10)を選択し,立ち上がり能力,トイレ動作の介護の有無にも視点を向け検討したいと考える。
ADLや下肢筋力と相関があるとされるFrail CS-10を用い,在宅でのトイレ動作と立ち上がり能力の相関を検討する。トイレ動作自立度とFrail CS-10との相関を明らかにする事で,在宅での一つの有効な評価法としての確立を期待する。
【方法】
対象は当ステーションの利用者で,研究の同意が得られ重度の認知症が認められない(Mini-mental State Examination:MMSEで20点以上)ことを条件とした。
Frail CS-10は,Jonesらにより考案された30秒椅子立ち上がりテスト(30sec Chair Stand test:CS-30)を村田らが修正し考案したもので,村田らが実施した方法に準じ行う。測定時間を10秒とし両上肢を膝の上に置いた状態からの立ち上がり回数を測定する。「はじめ」の合図と同時に開始肢位から立ち上がりを開始し,直立姿勢まで立った後,すぐに着座する動作を1回として10秒間繰り返す。椅子は高さ40cmの肘掛けのないアルミ製椅子を使用した。また,トイレ動作に関しては動作一つ一つを細分化した上で介護の有無を問う質問紙法を用いて現状を把握し,不明点は家族にも聴取する事とした。トイレの便座高も同時に計測した。
統計処理:日常での移動からトイレ動作の全過程において見守りを含む介助が必要な群をトイレ動作介助群とし,見守りも必要としないトイレ動作自立群に群分けした。更に各群における10秒間の立ち上がり回数を区分けしFisherの直接確立法を用いた。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は20名で内訳は男性が13名(80.0±5.3歳),女性が7名(81.3±6.1歳)であった。また,各群の人数と立ち上がり回数はそれぞれトイレ動作介助群(3名,0.43±0.72回),トイレ動作自立群(17名,2.42±1.67回)となり,全体として立ち上がり回数は2.2±1.6回となった。便座高は40.75±1.7cmとなった。介助群と自立群で且つ,立ち上がり回数0~1回と2~6回に区分けし検討した際においてp=0.0307と有意な差を認めた。他の0回と1~6回,0~2回と3~6回,0~3回と4~6回,0~4回と5~6回で区分けした際は,有意な差は認められなかった。
【考察】
本研究において全対象者の立ち上がりの回数は0~6回内に集約され,検討の結果0~1回と2~6回で区分けした場合のみに有意差が認められている。これは,トイレ動作の際に40cmからの立ち上がり回数が0~1回までは介助を要し,2回以上では自立の可能性が高いことを示唆する。この事により立ち上がり回数とトイレ介助有無との関係には相関があると考えられた。介助群の検討数が自立群に比べ少なく,0~1回までに集約されていた事や立ち上がり動作を行う対象者の体力・筋力など身体能力の要因,上肢を使わないという研究方法の制約が純粋な立ち上がり能力が求められた事の相関の原因として考えられる。本研究で使用した40cmの椅子に対し,対象者の便座高の45%が40cmであった。しかしながら,37.5cm~45.0cmまでと幅広い事より40cmからの立ち上がりが行えるか否かで,トイレでの環境調整にも視点を向ける必要があると考えられた。上記のように,立ち上がり回数とトイレ介助有無の相関や,対象者の大多数を占める便座高に即した椅子の高さ設定で評価する事から,本研究の評価で用いたFrail CS-10はトイレ動作の評価法として有用である可能性があると考えられる。
今回は訪問看護からの利用者に限局したが,今後は検討数を増やし2群間の人数の差を近づけると共に,他のサービス環境下での状況も検討し有用性・関連性を高める事が課題である。
【理学療法学研究としての意義】
訪問先でのトイレでの立ち上がり動作評価の一助となる可能性がある。検討することで利用者及び家族に対しての介入のスピードを早くする事ができる。
虚弱高齢者,要介護高齢者が急増する中で,介護者の負担となる動作の一つにトイレ動作がある。トイレ動作は尿意(便意),起き上がり,立ち上がり,移動,下衣の上げ下げ,排泄といった複合的な動作である。施設と違い在宅では家族が介助者となるため介護負担感という観点も加わる事から,機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM)だけでは不十分な点があると千野らは報告している。
個々の動作は確立しているのに日常的なトイレ動作に介助を要す場合,特に着目すべき点は不明瞭である。そこで,トイレ動作の中でも特に重要度の高い立ち上がりに着目し,簡易な評価法である虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly:Frail CS-10)を選択し,立ち上がり能力,トイレ動作の介護の有無にも視点を向け検討したいと考える。
ADLや下肢筋力と相関があるとされるFrail CS-10を用い,在宅でのトイレ動作と立ち上がり能力の相関を検討する。トイレ動作自立度とFrail CS-10との相関を明らかにする事で,在宅での一つの有効な評価法としての確立を期待する。
【方法】
対象は当ステーションの利用者で,研究の同意が得られ重度の認知症が認められない(Mini-mental State Examination:MMSEで20点以上)ことを条件とした。
Frail CS-10は,Jonesらにより考案された30秒椅子立ち上がりテスト(30sec Chair Stand test:CS-30)を村田らが修正し考案したもので,村田らが実施した方法に準じ行う。測定時間を10秒とし両上肢を膝の上に置いた状態からの立ち上がり回数を測定する。「はじめ」の合図と同時に開始肢位から立ち上がりを開始し,直立姿勢まで立った後,すぐに着座する動作を1回として10秒間繰り返す。椅子は高さ40cmの肘掛けのないアルミ製椅子を使用した。また,トイレ動作に関しては動作一つ一つを細分化した上で介護の有無を問う質問紙法を用いて現状を把握し,不明点は家族にも聴取する事とした。トイレの便座高も同時に計測した。
統計処理:日常での移動からトイレ動作の全過程において見守りを含む介助が必要な群をトイレ動作介助群とし,見守りも必要としないトイレ動作自立群に群分けした。更に各群における10秒間の立ち上がり回数を区分けしFisherの直接確立法を用いた。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は20名で内訳は男性が13名(80.0±5.3歳),女性が7名(81.3±6.1歳)であった。また,各群の人数と立ち上がり回数はそれぞれトイレ動作介助群(3名,0.43±0.72回),トイレ動作自立群(17名,2.42±1.67回)となり,全体として立ち上がり回数は2.2±1.6回となった。便座高は40.75±1.7cmとなった。介助群と自立群で且つ,立ち上がり回数0~1回と2~6回に区分けし検討した際においてp=0.0307と有意な差を認めた。他の0回と1~6回,0~2回と3~6回,0~3回と4~6回,0~4回と5~6回で区分けした際は,有意な差は認められなかった。
【考察】
本研究において全対象者の立ち上がりの回数は0~6回内に集約され,検討の結果0~1回と2~6回で区分けした場合のみに有意差が認められている。これは,トイレ動作の際に40cmからの立ち上がり回数が0~1回までは介助を要し,2回以上では自立の可能性が高いことを示唆する。この事により立ち上がり回数とトイレ介助有無との関係には相関があると考えられた。介助群の検討数が自立群に比べ少なく,0~1回までに集約されていた事や立ち上がり動作を行う対象者の体力・筋力など身体能力の要因,上肢を使わないという研究方法の制約が純粋な立ち上がり能力が求められた事の相関の原因として考えられる。本研究で使用した40cmの椅子に対し,対象者の便座高の45%が40cmであった。しかしながら,37.5cm~45.0cmまでと幅広い事より40cmからの立ち上がりが行えるか否かで,トイレでの環境調整にも視点を向ける必要があると考えられた。上記のように,立ち上がり回数とトイレ介助有無の相関や,対象者の大多数を占める便座高に即した椅子の高さ設定で評価する事から,本研究の評価で用いたFrail CS-10はトイレ動作の評価法として有用である可能性があると考えられる。
今回は訪問看護からの利用者に限局したが,今後は検討数を増やし2群間の人数の差を近づけると共に,他のサービス環境下での状況も検討し有用性・関連性を高める事が課題である。
【理学療法学研究としての意義】
訪問先でのトイレでの立ち上がり動作評価の一助となる可能性がある。検討することで利用者及び家族に対しての介入のスピードを早くする事ができる。