[P1-A-0355] ヨーロッパにおける理学療法教育制度再編の動向
―国際比較の視点から―
Keywords:理学療法教育, 教育制度, 国際比較
【はじめに,目的】
大学の国際化が進み高等教育再編が世界的に進展する中で,理学療法教育も再編期を迎えている。日本の理学療法教育は,養成校の増加と多様化が特徴であり,全般的に複雑な構造となっている。養成校の急増は臨床実習施設・指導者,教員の不足につながり,教育の質の保障が課題となってきており,今後の方向性を検討すべきである。その際,国際比較による制度のあり方の検討が有効である。本論文では,ヨーロッパにおける理学療法教育の再編動向を調査し,その特徴を明らかにすることを目的とした。ヨーロッパの特徴を国際的な視点から比較するために,世界的な理学療法教育の再編動向を把握し,それを型に分類した。
【方法】
対象は理学療法教育制度が整っている先進諸国8カ国とした。各国の教育制度分類のために,入学教育レベル,最低修了教育レベル,必要教育年数,養成制度別養成校数,取得可能学位,入学者数/年,理学療法士免許取得条件の7項目を設定し,国別データを収集した。入学教育レベル,最低修了教育レベル,必要教育年数および理学療法士免許取得条件については,日本理学療法士協会,世界理学療法連盟(WCPT)よりデータを得た。養成制度別養成校数,取得可能学位,入学者数/年については,European Region of the World Confederation for Physical Therapy(ER-WCPT)および各国の理学療法関係機関ホームページより最新のデータを取得した。
【結果】
理学療法教育制度再編の世界的動向としては,大学院博士課程で高度専門職業人養成を行うアメリカ型と,3年制学士課程養成を行うヨーロッパ型の2つが確認できた。日本は多様な養成校が併存しており,年当たり入学者数も最も多く,日本型とした。高度専門職業人養成へと移行しつつあるアメリカ型に対し,ヨーロッパ型は,専門学校での養成から,大学における3年間の学士課程養成へと収斂する動きであった。ヨーロッパ型は「ヨーロッパ高等教育圏」への統一をめざしており,ヨーロッパ全体の動向であった。
【考察】
高度専門職業人として,博士の学位を持つ理学療法士を養成しようとするアメリカ型と,大学における3年間の学士課程養成に収斂するヨーロッパ型は,明らかに異なる方向を示しており,本研究の分類は妥当である。ヨーロッパ型における3年制学士課程化の背景には,「ヨーロッパ高等教育圏」の設立をめざすボローニャ宣言(1999年)がある。ここでは,アメリカの大学の影響力拡大に危機感を抱き,学士・修士・博士といった学位制度の統一や,ヨーロッパレベルでの単位互換制度の導入を目指している。「学士については3年以上の修業年限」をボローニャ宣言が求めたことにより,学士課程は3年に集約される傾向にある。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法教育研究は先進諸国を中心に,各国ごとの教育制度等の研究が行われてきたが,国際動向の検討や国際比較研究はまだ不十分な段階にある。多様性と大量養成システムを特徴とする日本型理学療法教育の今後の方向性を考える上でも,こうした世界的な動向の検討が参考になる。高度専門職業人養成として博士課程における養成に移行しつつあるアメリカ型に対し,専門学校から学士課程養成へと移行しつつあるヨーロッパ型は,日本型により近く,この2つの型を比較しながら,ヨーロッパ型の動向についての検討が求められている。
大学の国際化が進み高等教育再編が世界的に進展する中で,理学療法教育も再編期を迎えている。日本の理学療法教育は,養成校の増加と多様化が特徴であり,全般的に複雑な構造となっている。養成校の急増は臨床実習施設・指導者,教員の不足につながり,教育の質の保障が課題となってきており,今後の方向性を検討すべきである。その際,国際比較による制度のあり方の検討が有効である。本論文では,ヨーロッパにおける理学療法教育の再編動向を調査し,その特徴を明らかにすることを目的とした。ヨーロッパの特徴を国際的な視点から比較するために,世界的な理学療法教育の再編動向を把握し,それを型に分類した。
【方法】
対象は理学療法教育制度が整っている先進諸国8カ国とした。各国の教育制度分類のために,入学教育レベル,最低修了教育レベル,必要教育年数,養成制度別養成校数,取得可能学位,入学者数/年,理学療法士免許取得条件の7項目を設定し,国別データを収集した。入学教育レベル,最低修了教育レベル,必要教育年数および理学療法士免許取得条件については,日本理学療法士協会,世界理学療法連盟(WCPT)よりデータを得た。養成制度別養成校数,取得可能学位,入学者数/年については,European Region of the World Confederation for Physical Therapy(ER-WCPT)および各国の理学療法関係機関ホームページより最新のデータを取得した。
【結果】
理学療法教育制度再編の世界的動向としては,大学院博士課程で高度専門職業人養成を行うアメリカ型と,3年制学士課程養成を行うヨーロッパ型の2つが確認できた。日本は多様な養成校が併存しており,年当たり入学者数も最も多く,日本型とした。高度専門職業人養成へと移行しつつあるアメリカ型に対し,ヨーロッパ型は,専門学校での養成から,大学における3年間の学士課程養成へと収斂する動きであった。ヨーロッパ型は「ヨーロッパ高等教育圏」への統一をめざしており,ヨーロッパ全体の動向であった。
【考察】
高度専門職業人として,博士の学位を持つ理学療法士を養成しようとするアメリカ型と,大学における3年間の学士課程養成に収斂するヨーロッパ型は,明らかに異なる方向を示しており,本研究の分類は妥当である。ヨーロッパ型における3年制学士課程化の背景には,「ヨーロッパ高等教育圏」の設立をめざすボローニャ宣言(1999年)がある。ここでは,アメリカの大学の影響力拡大に危機感を抱き,学士・修士・博士といった学位制度の統一や,ヨーロッパレベルでの単位互換制度の導入を目指している。「学士については3年以上の修業年限」をボローニャ宣言が求めたことにより,学士課程は3年に集約される傾向にある。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法教育研究は先進諸国を中心に,各国ごとの教育制度等の研究が行われてきたが,国際動向の検討や国際比較研究はまだ不十分な段階にある。多様性と大量養成システムを特徴とする日本型理学療法教育の今後の方向性を考える上でも,こうした世界的な動向の検討が参考になる。高度専門職業人養成として博士課程における養成に移行しつつあるアメリカ型に対し,専門学校から学士課程養成へと移行しつつあるヨーロッパ型は,日本型により近く,この2つの型を比較しながら,ヨーロッパ型の動向についての検討が求められている。