第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習2

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0358] 本校のリメディアル教育の効果および基礎学力と専門基礎科目との関係性

谷口奈瑠美, 財津真人 (玉野総合医療専門学校)

Keywords:リメディアル教育, 基礎学力, 早期入学決定者

【はじめに】
リメディアル教育は,基礎学力の低い学生,少子化に伴う大学入試の多様化,入試の科目数減少などによって,すなわち,以前ならば入学試験に合格しなかった学生が,大学に入学していることから,大学の授業が理解できない学生を救済する目的で始まった。本校理学療法学科では,平成22年度よりリメディアル教育を実施している。初年度は試験的に実施し,多少の変更,修正を加え,2年目の平成23年度から現行の方法でリメディアル教育を実施している。本校では,入学が早期に決定した者に対して入学前教育を実施し,入学後に学力考査試験を行い,成績不良者に対してリメディアル教育を実施し,リメディアル教育終了後に成果を確認するため確認試験を実施している。そこで,リメディアル教育の前後の試験結果の比較を行うことで本校のリメディアル教育の効果を検証した。また,基礎学力と専門・専門基礎科目との関係性を検証した。
【方法】
対象は平成24年度から平成26年度の新入生125名である。対象者に対し,研究の趣旨を説明し,同意を得た。まず,125名のうち早期の入学決定者(専願入試合格者)90名と併願入試の入学決定者(転科合格者を除く)28名の入学後の学力考査試験成績を比較した。次に125名のうち学力考査試験および確認試験を受験した123名を対象に年度別に学力考査試験と確認試験の成績を比較した。また,各年度の成績上昇率を比較した。さらに学力考査試験を受験し,1年次前期にカリキュラム配置している専門・専門基礎科目7科目の定期試験成績が揃っているH24年度からH26年度の1年生114名を対象に学力考査試験成績と専門・専門基礎科目7科目の成績の関係性を検証した。統計処理にはスタットメイトVer.4(株式会社アトムス社製)を使用し,t検定,分散分析多重比較,回帰分析を行った。有意水準は1%とした。
【結果】
早期の入学決定者90名の学力考査試験は併願入試の入学決定者(転科合格者を除く)28名に比べ,点数が低かった(P<0.01)。年度別に学力考査試験と確認試験の成績を比較した結果,すべての年度で学力考査試験成績に比べ,確認試験成績は向上していた(P<0.01)。さらに平成25年度,26年度,24年度の順で成績の上昇率が高かった。学力考査試験成績と専門・専門基礎科目7科目の成績の関係性が高かった(R2=0.166,P<0.01)。
【考察】
入学時期による基礎学力の差が明らかとなった。これにより,入学前教育の必要性が再認識された。本校ではすでに早期の合格決定者に入学前教育を行っているが,併願入試での入学決定者の学力との差を埋めることは出来ていないことが分かった。入学前課題の充実はもとより,入学後の徹底した教育の必要性を示唆している。入学後のリメディアル教育の効果については,一定の成果が確認された。平成24年度に比べて,平成25年度からは大幅な成績向上がみられたのは,平成25年度からはリメディアル授業終了後に小テストを行い,単元ごとの到達度を確認し,その小テストの結果が不良であったものに対しては,昼休憩や空き時間を使用し,教員による個別指導を行った結果によるものと考えられる。このことから,入学前課題のように自身で取り組む課題より,個別指導の有効性が明らかとなった。また,基礎学力と専門・専門基礎科目との高い関係性が認められたことから,基礎学力を上げる必要性が示された。今後は,入学前課題の内容や方法を検討し,入学後の教育においては,リメディアル教育終了後も継続したきめ細かい学習支援が必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
18歳人口の減少や入試の多様化により,入学生の質の担保が難しい状況となっている。リメディアル教育の導入はもとより,入学後の徹底した教育が必要であり,カリキュラム以外での学生に合わせた指導が必要である。学生の質の担保は理学療法士の質の担保へと直結するものであるため,学生の教育に関する研究の意義は大きいと考える。