第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

症例研究 ポスター3

神経/脳損傷3

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0050] 遊脚期における麻痺側膝関節伸展不全を呈した軽度片麻痺者に対する理学療法の経験

Gait Judge Systemを利用した歩行分析と前遊脚期の足関節底屈トルクの重要性

辻本直秀, 阿部浩明 (一般財団法人広南会広南病院リハビリテーション科)

Keywords:片麻痺歩行, Gait Judge System, 足関節底屈トルク

【目的】
今回,下肢運動麻痺,感覚障害が軽度であるにもかかわらず,麻痺側膝関節伸展位での初期接地が困難な片麻痺者を担当した。この異常歩行を,Gait Judge System(GJ)から得られた所見より分析し,麻痺側下肢の蹴り出しの強化を目的とした練習を実践するに至った。その1週間後,異常歩行の改善と歩行能力の向上がみられた。本症例における理学療法経過を以下に報告する。
【症例提示】
症例は50歳代男性で,視床出血の診断で当院に入院となった。入院前ADLは自立していた。9病日より歩行練習を開始し,22病日に無杖,無装具にて病棟内歩行が自立した。この時の理学療法評価は,JCS 0,SIASの下肢運動項目全て4(下肢MMT:全て4),感覚(表在・位置覚)項目2であった。高次脳機能障害はみられなかった。歩行は,麻痺側遊脚後期に膝関節が十分に伸展せず,膝関節屈曲位での初期接地が観察された(快適歩行速度:62.7±9.2m/min)。GJより得られた麻痺側の足関節底屈制動モーメントは,ファーストピーク(FP)3.1Nm,セカンドピーク(SP)2.6Nmであった。
【経過と考察】
SPは前遊脚期に生じる足関節底屈トルクで,蹴り出しに関連し,片麻痺者はこの時期における麻痺側底屈トルクの減少が特徴であり,SPがFPより低値を示すことが報告されている。前遊脚期の底屈トルクの減少によって生じる振り出し開始時の初期速度の不十分な形成が,遊脚後期に膝関節が伸展できない歩容の背景として関与しているものと推察した。そこで,前遊脚期における足関節底屈トルクの増大を目的とした練習(はずみ運動,ジャンプ課題など)を積極的に実施した。その1週間後,SPは4.2Nmとなり,麻痺側膝関節が十分に伸展した状態での初期接地が可能となった(快適歩行速度:82.4±1.1m/min,FP:4.1Nm)。前遊脚期における足関節底屈トルクの低下は,片麻痺者の遊脚期の歩容異常,歩行速度の低下に関わる重要な要素の一つであると思われる。