第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター4

神経/脳損傷4

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0055] すくみ足を呈するパーキンソン病患者に対して眼球トレーニングが著効した一例

方向転換時のすくみ足に着目して

近藤夕騎, 佐藤福志, 板東杏太, 小林庸子 (国立精神・神経医療研究センター病院)

キーワード:パーキンソン病, 眼球運動, すくみ足

【目的】
すくみ足を呈さないパーキンソン病(以下PD)患者に対して,すくみ足を呈するPD患者は方向転換時に衝動性眼球運動速度が低下するという報告がある。そこで方向転換時にすくみ足を呈するPD患者に対して眼球トレーニングを実施した。
【症例提示】
薬物調整,リハビリ目的で入院していた81歳の女性。経過14年のPD患者であり,Hoehn & Yahr stageIII。右手の振戦で発症し,その7年後には歩行開始時のすくみ足が出現している。また,L-dopaを1日450mg服用し,on,offの変化はほとんど生じない。Barthel lndex 95点。MMSE 26点。主訴は足が前に出ない。特に歩行開始,方向転換,認知負荷,狭所ですくみ足が出現する。そして,衝動性眼球運動では左への動きで振幅が小さく,多段階となる。
【経過と考察】
本症例での介入期間は20日間でA期10日,B期10日とし,1日のリハビリと評価の時間は1時間とした。A期はすくみ足に対する歩行練習を実施し,B期にはそれに加えて眼球トレーニングを実施した。歩行速度の測定のためにTUG(Shineの変法),主観的なすくみ足の評価にthe Freezing of Gait Questionanaire(FOGQ)を使用し,TUG課題では①従来のTUG,②方向転換,③認知負荷,④狭所の4つの課題とした。A期において従来のTUG,認知負荷課題の改善は見られたが,方向転換,狭所でTUG改善は見られなかった。しかし,眼球トレーニングを行うことで方向転換時のTUGの時間が短縮し,FOGQによる主観的なすくみ足の改善も見られた。眼球機能が向上し,eye-headの分離性が改善したことで,方向転換が容易となったと考えられる。また,狭所ではA期,B期ともに改善がみられなかったが,注意や動作のプランニングが影響し,眼球運動とは別の問題が関係していると思われる。本症例より,すくみ足に対する歩行練習に加え,眼球トレーニングを行うことで方向転換時のすくみ足は改善し,本人のQOL向上,転倒予防に繋がる可能性が示唆された。