第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

調査研究 ポスター2

神経理学療法

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0086] 脳卒中後の麻痺側上肢痛に関する縦断的調査

田中孔明, 寺田秀範 (千葉中央メディカルセンター)

Keywords:脳卒中, 麻痺側, 上肢痛

【目的】
本研究では,麻痺側上肢痛の発生や消失に関する経時的変化と,その臨床的特徴を検討することを目的とする。
【方法】
2013年9月~2014年8月の1年間に脳卒中を発症して当院脳外科に入院し,リハビリテーションを実施した成人患者168名のうち,明らかな麻痺症状が認められない者,遷延化した意識障害・著しい認知機能低下・重度の失語症により全入院期間において聞き取り調査が困難な者,発症前から上肢痛を有していた者を除く109名を対象とした。脳卒中後の上肢痛の定義として,以下の4つの必要条件を設定した。①脳卒中発症以降に痛みが出現,②中枢神経系の病変に対応する身体領域の痛み,③不快感やしびれのみの症状は「痛み」としない,④肩から手指までの領域。調査は,脳卒中発症後2週,1ヵ月,2ヵ月,3ヵ月,4ヵ月,5ヵ月,6ヵ月経過時点で行い,それぞれ麻痺側上肢痛の聞き取り調査および運動麻痺,上肢感覚障害,基本動作能力,基本的日常生活動作能力(Barthel index:BI)の評価を行った。上肢痛を有する場合は,日本語版S-LANSSを使用して面談にて神経障害性疼痛の検査を行った。対象者が退院した時点で調査は終了とした。入院期間中の上肢痛あり群となし群の比較は,SPSS ver20を用いて検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果と考察】
入院期間中に麻痺側上肢痛を有した者は29名(26.6%),そのうち,日本語版S-LANSSが陽性となり神経障害性疼痛と強く疑われる者は2名(全対象者の1.8%,上肢痛あり群の6.9%)であった。また,入院中に痛みが消失した者は4名(13.8%)であった。上肢痛あり群はなし群と比較して,発症早期の運動麻痺が重度で,上肢感覚障害が鈍麻~脱失である者が多かった。また,発症2週時点でのBI平均値(あり群:25.9点,なし群:51.5点)において有意差がみられた。脳卒中後の麻痺側上肢痛の発生には,発症早期の機能障害および能力障害が影響していることが示唆された。