[P1-C-0179] リアライン・コアの即時効果について
―基本的運動能力と重心動揺の比較―
Keywords:リアライン・コア, スポーツ, アライメント
【はじめに】
スポーツ選手にとって,姿勢や関節運動,適切な筋収縮はパフォーマンスを向上させる上で重要な要素となる。(株)GLABが開発したリアライン・コアは胸郭ユニットおよび骨盤ユニットで構成され,脊柱や骨盤帯のアライメントを整え,関節の分離運動を促通するもので,プロスポーツ選手をはじめ,整形外科病院や整骨院等でも用いられ,メディア等でも目にすることが多い。しかし,理学療法領域でリアライン・コアを用いた報告は少なく,その内容もシングルケースを対象としたものであった。今回,リアライン・コアの効果について複数人を対象にデータ収集,統計解析を行い,若干の知見を得ることが出来たためここに報告する。
【対象と方法】
対象は,整形外科的に重篤な既往の無い健常男女13名(男性6名,女性7名,平均年齢29.8±8.8歳)とし,リアライン・コアの胸郭ユニット・骨盤ユニットを着用した状態と非着用の状態で運動を行い,運動の前後で理学療法評価を行った。また,運動効果を残存させないため,着用時と非着用時の測定には約1ヶ月間の期間を設けた。
対象者に対し,評価として指床間距離(以下,FFD),垂直跳び,ファンクショナルリーチテスト(以下,FRT),重心動揺解析(外周面積,外周面積ロンベルグ率,単位面積軌跡長)を運動の前後に実施し,前後比較を行った。重心動揺解析には酒井医療社のActive Balancerを使用し,閉脚開眼・閉脚閉眼立位で各30秒間測定した。運動はリアライン・コア取扱説明書および講習会資料に記載されている運動例から抜粋した足踏み動作,側方へのウェイトシフト,膝伸展位での体幹回旋,膝屈曲位での体幹回旋,前後屈,上肢交互挙上の6項目をそれぞれ1分間実施した。
得られたデータに対し,SAS 9.3 for Windowsを使用しWilcoxonの符号付順位和検定を用い統計処理を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
リアライン・コア着用時,非着用時の運動前データに有意差は無く,2群間は対応ありとした。着用時/非着用時のFFD,垂直跳び,FRTの前後差の平均はFFD(3.7±3.1cm/2.4±1.6cm),垂直飛び(3.1±2.1cm/1.2±1.5cm),FRT(4.6±3.6cm/1.0±1.5cm)で,非着用時の垂直飛びを除き,他は全て運動前後での有意差を認めた。また,着用時,非着用時の2群間での比較は垂直跳び(P=0.03)およびFRT(P=0.00)において有意差を認めた。重心動揺に関しては,運動前後および2群間の比較全てにおいて有意差を認めなかった。
【考察】
今回の結果から,リアライン・コアを着用した状態での運動が即時的なパフォーマンスの改善をもたらすことが示唆された。垂直跳び,FRTが着用時,非着用時の2群間で有意差を認めた要因としては,垂直跳びの跳躍高に影響を及ぼす因子として近年,中俣により,胸郭と下肢の運動が影響していたとの報告があり,また,FRTに関しても,先行研究により若年者のFRTは体幹前傾角度と股関節ストラテジーの影響が大きいとの報告が多く,リアライン・コアの使用により上部胸郭の挙上,下部胸郭の拡張が促されたこと,骨盤帯と股関節の分節的な運動が促通されたことが影響していると推測される。FFDが2群間で有意差を認めなかった要因としては,今回の研究では下肢よりも胸郭への影響が大きかった可能性が考えられる。新谷が失調症状を有する小脳梗塞症例に対しリアライン・コアを使用し10m歩行やTUG,またぎ動作の改善を認めたとする報告があるが,今回の研究では重心動揺に関して運動前後および2群間で有意差を認めなかった。要因としては,今回の研究は健常者を対象としていたことや,上記の症例においてバランス能力以外の影響が大きかった可能性がある。
今後,詳細な筋出力等の評価や他の運動を用いての変化,長期的な効果,実際に症状を有する症例に対しての研究を行い,リアライン・コアが理学療法分野において安全かつ有用に使用できるかを検討していきたい。
【理学療法研究としての意義】
今回行った運動は特殊な運動ではなく,全て簡便に行えるものであり,高度な技術を要さずパフォーマンスの改善を得ることができた。今回は健常者かつ即時効果のみを対象としており,その有用性を確立できるものではないが,今後,研究を重ねることにより,その効果と安全性が立証されれば,我々理学療法士がリハビリテーションを提供する上で,恒常的,効率的に結果を出すことに繋がると考える。
スポーツ選手にとって,姿勢や関節運動,適切な筋収縮はパフォーマンスを向上させる上で重要な要素となる。(株)GLABが開発したリアライン・コアは胸郭ユニットおよび骨盤ユニットで構成され,脊柱や骨盤帯のアライメントを整え,関節の分離運動を促通するもので,プロスポーツ選手をはじめ,整形外科病院や整骨院等でも用いられ,メディア等でも目にすることが多い。しかし,理学療法領域でリアライン・コアを用いた報告は少なく,その内容もシングルケースを対象としたものであった。今回,リアライン・コアの効果について複数人を対象にデータ収集,統計解析を行い,若干の知見を得ることが出来たためここに報告する。
【対象と方法】
対象は,整形外科的に重篤な既往の無い健常男女13名(男性6名,女性7名,平均年齢29.8±8.8歳)とし,リアライン・コアの胸郭ユニット・骨盤ユニットを着用した状態と非着用の状態で運動を行い,運動の前後で理学療法評価を行った。また,運動効果を残存させないため,着用時と非着用時の測定には約1ヶ月間の期間を設けた。
対象者に対し,評価として指床間距離(以下,FFD),垂直跳び,ファンクショナルリーチテスト(以下,FRT),重心動揺解析(外周面積,外周面積ロンベルグ率,単位面積軌跡長)を運動の前後に実施し,前後比較を行った。重心動揺解析には酒井医療社のActive Balancerを使用し,閉脚開眼・閉脚閉眼立位で各30秒間測定した。運動はリアライン・コア取扱説明書および講習会資料に記載されている運動例から抜粋した足踏み動作,側方へのウェイトシフト,膝伸展位での体幹回旋,膝屈曲位での体幹回旋,前後屈,上肢交互挙上の6項目をそれぞれ1分間実施した。
得られたデータに対し,SAS 9.3 for Windowsを使用しWilcoxonの符号付順位和検定を用い統計処理を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
リアライン・コア着用時,非着用時の運動前データに有意差は無く,2群間は対応ありとした。着用時/非着用時のFFD,垂直跳び,FRTの前後差の平均はFFD(3.7±3.1cm/2.4±1.6cm),垂直飛び(3.1±2.1cm/1.2±1.5cm),FRT(4.6±3.6cm/1.0±1.5cm)で,非着用時の垂直飛びを除き,他は全て運動前後での有意差を認めた。また,着用時,非着用時の2群間での比較は垂直跳び(P=0.03)およびFRT(P=0.00)において有意差を認めた。重心動揺に関しては,運動前後および2群間の比較全てにおいて有意差を認めなかった。
【考察】
今回の結果から,リアライン・コアを着用した状態での運動が即時的なパフォーマンスの改善をもたらすことが示唆された。垂直跳び,FRTが着用時,非着用時の2群間で有意差を認めた要因としては,垂直跳びの跳躍高に影響を及ぼす因子として近年,中俣により,胸郭と下肢の運動が影響していたとの報告があり,また,FRTに関しても,先行研究により若年者のFRTは体幹前傾角度と股関節ストラテジーの影響が大きいとの報告が多く,リアライン・コアの使用により上部胸郭の挙上,下部胸郭の拡張が促されたこと,骨盤帯と股関節の分節的な運動が促通されたことが影響していると推測される。FFDが2群間で有意差を認めなかった要因としては,今回の研究では下肢よりも胸郭への影響が大きかった可能性が考えられる。新谷が失調症状を有する小脳梗塞症例に対しリアライン・コアを使用し10m歩行やTUG,またぎ動作の改善を認めたとする報告があるが,今回の研究では重心動揺に関して運動前後および2群間で有意差を認めなかった。要因としては,今回の研究は健常者を対象としていたことや,上記の症例においてバランス能力以外の影響が大きかった可能性がある。
今後,詳細な筋出力等の評価や他の運動を用いての変化,長期的な効果,実際に症状を有する症例に対しての研究を行い,リアライン・コアが理学療法分野において安全かつ有用に使用できるかを検討していきたい。
【理学療法研究としての意義】
今回行った運動は特殊な運動ではなく,全て簡便に行えるものであり,高度な技術を要さずパフォーマンスの改善を得ることができた。今回は健常者かつ即時効果のみを対象としており,その有用性を確立できるものではないが,今後,研究を重ねることにより,その効果と安全性が立証されれば,我々理学療法士がリハビリテーションを提供する上で,恒常的,効率的に結果を出すことに繋がると考える。