[P1-C-0255] 脳卒中片麻痺患者の歩行イメージと歩行能力との関連性
Keywords:歩行, イメージ, 脳卒中
【はじめに,目的】
脳卒中患者はどのような歩行をイメージしているのか,そのイメージがどのように変化していくかについての報告は少ない。患者自身の歩行イメージが経過とともにどのように変化し,歩行能力にどう影響しているかを知ることは歩行を獲得させる上で重要な要素である。患者自身がイメージする運動は,実際の運動と密接に関わっていると思われ,脳内の歩行イメージとして正しい歩行を想起しなければ,正常歩行の獲得は難しい。
本研究の目的は,脳卒中患者の歩行イメージを調査し,歩行イメージが運動麻痺の回復や歩行能力とどのように関連しているかを検討するものである。
【方法】
対象者は,認知症や高次脳機能障害をもたない当院入院中の脳卒中患者54名(男性29名,女性25名,66.4歳±11.8)とした。歩行イメージの評価には,独自に開発した歩行イメージ評価バッテリーを使用した。内容は,歩行中の目線,体幹,上肢,下肢を10項目に細分化し,イメージの想起度合いを5段階で評価するものである(面接法)。この評価バッテリーは,40点満点で得点が高いほどより正常な歩行イメージとなる。評価回数は,入院から1ヶ月単位で測定した。歩行能力の指標は10m最大歩行速度とした。麻痺の重症度の評価として,Brunnstrom recovery stageとした(以下,BRSと略記)。そのうち,本研究では下肢の麻痺の程度を対象者の麻痺の重症度とし,下肢の麻痺の程度をBRSにて評価した。対象者の群分けとして,対象者を病日別(早期群:発症~3ヶ月未満,中期群:3ヶ月~4ヶ月未満,長期群:4ヶ月~6ヶ月未満)の3群,10m最大歩行速度別(高速群:1 m/s以上,中速群:0.5 m/s~1 m/s未満,低速群:0.5 m/s未満),麻痺の重症度別(重度群:StageI~II,中等度群III~IV,軽度群V~VI)の3群に分けた。統計処理は,病日別,10 m最大歩行速度別,麻痺の重症度別で分けた群間の歩行イメージ合計点を一元配置分散分析及び多重比較検定Tukey-Kramer法にて検討した(p<0.05)。同時に,歩行イメージ合計点と10 m最大歩行速度の相関についてもピアソンの相関係数の検定にて検討した(p<0.05)。
【結果】
10 m最大歩行速度における歩行イメージ合計点の平均値は,高速群27.6±6.0,中速群23.7±5.8,低速群21.0±6.3であり,高速群と中速群,高速群と低速群との間に有意差を認めた。また,歩行イメージ合計点と10 m最大歩行速度の間に有意な相関を認めた(r=0.44)。病日別における歩行イメージ合計点の平均値は,早期群24.6±6.1,中期群24.2±6.6,長期群23.5±7.1であり,3群間に有意差を認めなかった。麻痺の重症度別における歩行イメージ合計点の平均値は,重度群21.3±6.5,中等度群22.0±5.8,軽度群25.2±6.6であり3群間において有意差を認めなかった。
【考察】
本研究より,10 m最大歩行速度が低速・中速よりも高速の対象者が,有意に高いイメージ合計点を有しており,最大歩行速度が大きいものほど正常な歩行イメージが想起できているとの結果が得られた。つまり,本研究の脳卒中患者においては,歩行能力が高いものほどより正常な歩行イメージが想起できており,歩行能力が低いものほど正常な歩行イメージを想起できていない結果となった。この結果は,歩行イメージと歩行能力は密接に関わっていることを意味していると思われる。正常な歩行イメージをより想起できることは,脳内にて歩行を十分にシュミレートできていることであり,脳から末梢組織へより具体的に出力されている可能性がある。そのため,歩行能力は高いものほど,イメージ合計点は高かったと示唆される。
病日及び重症度と歩行イメージにおいて有意差は認めない結果となった。この結果より,脳卒中により認知機能や高次脳機能において障害を受けていない患者の歩行イメージは,病日や麻痺の重症度といった要因よりも,歩行能力に影響を受ける可能性が示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,効率的な歩行を獲得するために,正常な歩行イメージの想起が重要なことを意味していると思われる。そのため,歩行練習時には,患者に正常な歩行イメージを常に意識させることが理学療法において大切であると思われる。この結果は,脳卒中患者が想起する歩行イメージを理解し,治療する上で重要な知見であると思われる。
脳卒中患者はどのような歩行をイメージしているのか,そのイメージがどのように変化していくかについての報告は少ない。患者自身の歩行イメージが経過とともにどのように変化し,歩行能力にどう影響しているかを知ることは歩行を獲得させる上で重要な要素である。患者自身がイメージする運動は,実際の運動と密接に関わっていると思われ,脳内の歩行イメージとして正しい歩行を想起しなければ,正常歩行の獲得は難しい。
本研究の目的は,脳卒中患者の歩行イメージを調査し,歩行イメージが運動麻痺の回復や歩行能力とどのように関連しているかを検討するものである。
【方法】
対象者は,認知症や高次脳機能障害をもたない当院入院中の脳卒中患者54名(男性29名,女性25名,66.4歳±11.8)とした。歩行イメージの評価には,独自に開発した歩行イメージ評価バッテリーを使用した。内容は,歩行中の目線,体幹,上肢,下肢を10項目に細分化し,イメージの想起度合いを5段階で評価するものである(面接法)。この評価バッテリーは,40点満点で得点が高いほどより正常な歩行イメージとなる。評価回数は,入院から1ヶ月単位で測定した。歩行能力の指標は10m最大歩行速度とした。麻痺の重症度の評価として,Brunnstrom recovery stageとした(以下,BRSと略記)。そのうち,本研究では下肢の麻痺の程度を対象者の麻痺の重症度とし,下肢の麻痺の程度をBRSにて評価した。対象者の群分けとして,対象者を病日別(早期群:発症~3ヶ月未満,中期群:3ヶ月~4ヶ月未満,長期群:4ヶ月~6ヶ月未満)の3群,10m最大歩行速度別(高速群:1 m/s以上,中速群:0.5 m/s~1 m/s未満,低速群:0.5 m/s未満),麻痺の重症度別(重度群:StageI~II,中等度群III~IV,軽度群V~VI)の3群に分けた。統計処理は,病日別,10 m最大歩行速度別,麻痺の重症度別で分けた群間の歩行イメージ合計点を一元配置分散分析及び多重比較検定Tukey-Kramer法にて検討した(p<0.05)。同時に,歩行イメージ合計点と10 m最大歩行速度の相関についてもピアソンの相関係数の検定にて検討した(p<0.05)。
【結果】
10 m最大歩行速度における歩行イメージ合計点の平均値は,高速群27.6±6.0,中速群23.7±5.8,低速群21.0±6.3であり,高速群と中速群,高速群と低速群との間に有意差を認めた。また,歩行イメージ合計点と10 m最大歩行速度の間に有意な相関を認めた(r=0.44)。病日別における歩行イメージ合計点の平均値は,早期群24.6±6.1,中期群24.2±6.6,長期群23.5±7.1であり,3群間に有意差を認めなかった。麻痺の重症度別における歩行イメージ合計点の平均値は,重度群21.3±6.5,中等度群22.0±5.8,軽度群25.2±6.6であり3群間において有意差を認めなかった。
【考察】
本研究より,10 m最大歩行速度が低速・中速よりも高速の対象者が,有意に高いイメージ合計点を有しており,最大歩行速度が大きいものほど正常な歩行イメージが想起できているとの結果が得られた。つまり,本研究の脳卒中患者においては,歩行能力が高いものほどより正常な歩行イメージが想起できており,歩行能力が低いものほど正常な歩行イメージを想起できていない結果となった。この結果は,歩行イメージと歩行能力は密接に関わっていることを意味していると思われる。正常な歩行イメージをより想起できることは,脳内にて歩行を十分にシュミレートできていることであり,脳から末梢組織へより具体的に出力されている可能性がある。そのため,歩行能力は高いものほど,イメージ合計点は高かったと示唆される。
病日及び重症度と歩行イメージにおいて有意差は認めない結果となった。この結果より,脳卒中により認知機能や高次脳機能において障害を受けていない患者の歩行イメージは,病日や麻痺の重症度といった要因よりも,歩行能力に影響を受ける可能性が示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,効率的な歩行を獲得するために,正常な歩行イメージの想起が重要なことを意味していると思われる。そのため,歩行練習時には,患者に正常な歩行イメージを常に意識させることが理学療法において大切であると思われる。この結果は,脳卒中患者が想起する歩行イメージを理解し,治療する上で重要な知見であると思われる。