第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

呼吸3

2015年6月5日(金) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0343] 安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の筋肉量における栄養状態の影響

神野麻耶子1, 重森健太2 (1.独立行政法人国立病院機構高知病院, 2.関西福祉科学大学保健医療学部)

キーワード:除脂肪量, 栄養, サルコペニア

【目的】COPDにおいて低体重は気流制限とは独立した予後予測因子である。理学療法において筋力トレーニングなどの運動療法をすすめる上で,低栄養の存在は効率的な筋力増強効果が得られにくい。また,サルコペニアは加齢による筋肉量の低下であるが,それは筋力や運動能力の低下を招き,容易にADLを下げることが想像される。COPDは慢性の消耗性疾患であり,栄養障害や疾病などによる2次的なサルコペニアの存在は,リハビリテーションにおいても治療内容を左右する重要な情報といえる。現在,栄養障害のスクリーングとしてMNA-SFの有用性が検討されており,今回安定期COPD患者の栄養状態がどの程度除脂肪量に関係しているかを検討した。
【方法】2013年12月24日より2014年6月11日に国立病院機構高知病院外来通院中で同意の得られた安定期COPD患者53名に対して,MNA-SFによる栄養評価をおこない,良好群と不良群(At risk,不良)に分類した。GOLDの重症度(GOLDの総合的評価),BMI,CC(下腿周径)血液データ(総蛋白,血清アルブミン),生体インピーダンス法(TANITA社製BC-622)で計測した除脂肪量からSMI(四肢骨格筋指数)をだし比較検討した。統計処理はSPSS.ver20を使用して,スピアマンの順位相関係数と,対応のないT検定を用い危険率1%を有意水準とした。
【結果】MNA-SFとBMIとの間には有意な正相関を認めた(r=0.513,p<0.01)。しかし,COPDの重症度や血液データとの有意な関連はなかった。MNA-SFによる栄養評価は,良好群:17名,不良群:37名(At risk:29名,低栄養7名)であった。両群において除脂肪量が良好群:44.6±4.8kg,不良群:40.51±5.28kg(p<0.01),骨格筋指数が良好群:8.41±0.99,不良群:7.48±1.06(p<0.01),下腿周径が良好群:34.7±2.5cm,不良群30.6±3.7cm(p<0.01),BMIで良好群:24.0±2.6kg/m2,不良群:20.5±3.1kg/m2(p<0.01)と有意に差があった。
【考察】COPD患者の病態を把握するためには,MNA-SFが有用なツールになる可能性がある。またこれらは,筋肉量との相関もあり,2次性サルコペニアが存在する可能性がある。このことは,運動療法のみならず栄養療法を併用することで効率的な機能・能力向上が得られる可能性を意味し,患者の栄養状態の把握や低栄養への他部門との協力もリハビリテーションには必要であると思われる。