第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習3

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0365] 理学療法学部生に対する評価実習時の疲労の自覚症状調査

小野田公1, 中澤環2, 久保晃1, 丸山仁司3 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.国際医療福祉大学塩谷病院, 3.国際医療福祉大学)

Keywords:臨床実習, 自覚症状, 疲労度

【はじめに,目的】
理学療法士の養成校において臨床実習の果たす役割は重要で,習得が期待される技術や知識は多い。日々の見学や業務に加えて担当症例のアセスメントやプログラムを作成するなど肉体的にも精神的にも負担が大きい。疲労の蓄積により実習時の事故発生や実習の継続が困難になるケースが少なくない。先行研究において総合臨床実習の各週の最終日の疲労度を調査した結果より初期評価のレジュメを完成させる2週目や最終評価を完成させる5週目に疲労度が高いことが示唆された。しかし,疲労度の高い最終日のみを調査したために日々の疲労度の変化を分析することができなかった。
本研究の目的は,評価実習での理学療法学部生の日々の身体および精神面の疲労の状況を明らかにすることとした。
【方法】
1)対象および調査期間
国際医療福祉大学保健学部理学療法学科の3週間の評価実習の学生10名(男性6名,女性4名,年齢21.0±2.2歳)を対象とした。調査実習地は大学関連病院1施設とした。調査期間は2014年8月25日~9月13日で実習の休みの日は除外した。
2)調査
①調査方法:疲労感の調査方法としては,日本産業衛生学会産業疲労研究会の新版「自覚症しらべ」を使用した。質問項目は25項目からなり,「I群:ねむけ感」,「II群:不安感」,「III群:不快感」,「IV群:だるさ感」,「V群:ぼやけ感」の5因子構造をもつ。25項目それぞれに1:まったくあてはまらない,2:わずかにあてはまる,3:すこしあてはまる,4:かなりあてはまる,5:非常にあてはまるまでの5段階評定方式である。また,前日の睡眠時間および学習時間についても調査を行なった。
②調査形式:「自覚症しらべ」を評価実習(3週間)の毎実習日に1日2回(実習開始前,実習終了後)実習生が記入した。
3)統計処理
各週の実習前後の質問25項目の合計点と「訴え群別スコア」の各群の合計点の結果をFriedman検定後に,多重比較を行った。統計解析ソフトはJSTAT for Windowsを使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
「自覚症しらべ」の結果より6週間の実習のうち疲労度のピークを示したのが7~9日の実習後であった。また,1日目の実習前より4日目,7~9日目,12~14日目の実習後が有意に疲労度が高かった。因子別では,「I群:ねむけ感」と「V群:ぼやけ感」が高値を示していた。「I群:ねむけ感」では1日目の実習前より4,8~10日目の実習後で有意に疲労度が高く,「IV群:だるさ感」および「V群:ぼやけ感」でも1日目の実習前より4~14日の実習後で有意に疲労度が高かった。また,「III群:不快感」では8,9日実習後より14日実習前で有意に疲労度が低かった。睡眠時間は3日目以降から4時間未満となり,学習時間では3日目以降から5時間以上となった。
【考察】
今回,3週間の評価実習の疲労感を調査し,疲労感に肉体的な疲労と睡眠時間が影響していることが示唆された。総合点より担当症例の評価結果からの考察をまとめる2週目後半に疲労度のピークを示した。また,初日よりも4日目から疲労度が有意に増加しており,実習初期より疲労が高まることが示唆された。因子別分析からも肉体的疲労に関するI群,IV群,V群が初日よりも4日目から有意に増加し,精神的疲労に関するIII群では疲労のピーク時よりも最終週後半で有意に低下を示している。これらより睡眠時間が低下する4日目より肉体的疲労度が高まり,レジュメが完成する最終週後半に精神的疲労感が回復することが示唆された。
本研究より「自覚症しらべ」を使用することにより評価実習中の学生の身体および精神面の疲労度を捉える事ができることが示唆された。実習初期より「ねむけ感」や「ぼやけ感」が高いために患者等への事故発生のリスク管理を初期から行なうことや睡眠時間の影響が疲労に関係していることから実習生の生活管理も指導していかなければならないことが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士養成校での臨床実習では学生が習得する知識や技術は非常に重要であるが,実習地での担当症例への評価や見学などにより肉体的および精神的に負担が大きい。これらにより実習時の医療事故や実習継続が困難になるなどのリスクが高まることが考えられる。本研究により新版「自覚症しらべ」を使用することで実習生の疲労度を確認することができ,実習中の医療事故の軽減および生活管理が可能となることが考えられる。