第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習3

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0368] 理学療法学生によるストレッチ講習会の取り組みについて

アンケート調査からの検討

樋口典男1, 松田徹1, 小林好信1, 秋山大輔1, 井上美幸1, 藤原正之1, 笠置泰史2 (1.千葉医療福祉専門学校理学療法学科, 2.千葉医療福祉専門学校)

Keywords:ストレッチ講習会, 教育的効果, 理学療法学生

【はじめに,目的】理学療法士養成課程においては,高度な専門教育及び技術の習得やコミュニケーション技術の向上が必要不可欠である。だが昨今,明瞭な目標を持たずただ漠然と実習期間をやり過ごす学生が増えている。近隣の中学校と協力して,中学生運動部員のスポーツ障害予防とケア意識改善を目的とした「ストレッチ講習会(以下講習会)」を開催する機会を得た。これは単発的な講習会ではなく今後も不定期ながら継続していく予定である。この講習会に本校理学療法学生(以下学生)が指導的立場で参加し,ストレッチ指導及びストレッチ指導前後の柔軟性計測を実施する取り組みを行った。講習会終了後,参加した学生に対しアンケート調査を行ったところ,本取り組みの教育的効果を示唆する一定の結果を得たため報告する。
【方法】理学療法学科3年生8名(男4名女4名,平均年齢(21±0.76)歳),理学療法学科2年生7名(男3名女4名,平均年齢(19.3±0.49)歳)が自由意思により指導員として参加した。中学生運動部員1年生~3年生8競技51名(男30名女21名)が参加した。最初に教員がストレッチ講話を行った。その後,ストレッチ指導前の柔軟性計測(SLR,FFD,トーマステスト,エリーテスト,腓腹筋柔軟性テスト,ヒラメ筋柔軟性テスト)を実施した。ストレッチ指導は大腿四頭筋,腸腰筋,ハムストリングス,腓腹筋,ヒラメ筋を対象に実施した。ストレッチ終了後,再び柔軟性計測を実施した。学生に対して講習会終了後,無記名自記式質問紙用紙調査を実施した。アンケート項目は,参加態度,全体的手順,事前学習,基礎知識,計測の正確性,ストレッチ指導の自己評価,参加目的(複数回答),参加目的の達成度,次回参加意思の17項目とした。
【結果】回収数は15名100%であった。概ね積極的に参加出来た:100%,概ね全体的手順は良かった:87%,概ね事前学習は行えた:100%,概ね基礎知識は足りていた:76%,概ね計測は正確に行えていた:92%,概ねストレッチ指導は適切だった:87%,参加目的は,「評価技術の向上に繋がる」(22%),「コミュニケーションの練習になる」(22%),「スポーツリハビリに興味がある」(13%),「講習会に参加することで新たな気づきを発見する」(13%),「学習に対するモチベーションを上げる」(9%),「実習の不安軽減に繋がる」(7%),「新たなチャレンジで自分を変えたかった」(5%)などであった。主な参加目的の達成度自己評価は,評価技術の向上((59±14)%),コミュニケーションの練習((73±19)%),スポーツリハビリに触れる((72±17)%),講習会参加による新たな気づき((75±13)%)であった。
【考察】臨床実習では実習指導者や高齢者に対するコミュニケーション能力不足,社会的常識不足を指摘されることが多い。今回の講習会は中学生運動部員が対象であること,事前学習として測定項目,ストレッチ指導を十分に行っていたこと,また,中学生運動部員にとって関心の高いスポーツ障害予防を掲げたことなどから,比較的導入しやすい環境であった。そのため学生の参加態度は積極的で全体的手順は概ね上手くいった。明確な参加目的を予想していたが「評価技術の向上に繋がる」,「コミュニケーションの練習になる」,「スポーツリハビリに興味がある」などの参加目的を挙げた学生は半数程度に留まった。評価技術向上の達成度が低く,今回の講習会のみでは十分な不安解消までは至っていないことが伺えた。学内での計測では時間的制約もなく,学生同士で行うため実施内容を理解しており協力行動がみられるが,中学生運動部員ではこの協力行動が得られないことや,限定された時間内で正確性を要求されたことが要因ではないかと推測される。臨床実習に直接結びつかない参加目的の「講習会に参加することで新たな気づきを発見するため」,「新たなチャレンジで自分を変えたかった」などは学生自身が現状を変えるべく摸索している心情が伺えた。積極的な学生は今後も複数回参加することが予想できる。参加目的や達成度は変動し,学内での行動変容に現れることを期待している。この講習会を継続し学生の非参加者への波及に繋げていきたい。
【理学療法学研究としての意義】講習会開催は学生の評価技術・測定,コミュニケーション能力の経験値向上,社会的常識獲得,新たな志望動機,学習意欲向上の教育的効果がある。また,講習会開催は地域貢献の側面を持つ。今後も継続的に開催していきたい。この研究では,講習会自体の意義である中学生運動部員のスポーツ障害予防やケア意識改善を明らかにしていない。これは他研究者が明らかにしていく予定である。