第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター14

運動器/股関節

2015年6月6日(土) 11:25 〜 12:25 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0445] 股関節屈曲外転外旋テストの所見が改善することにより片脚立位・歩容が一時的に改善した1症例

平田明日香, 磯田真理, 中村太志, 監崎誠一, 西川正治 (医療法人薫風会西川クリニック)

キーワード:股関節屈曲外転外旋テスト, 鼠径部痛, 運動器超音波検査

【目的】
理学療法評価として股関節屈曲外転外旋検査(以下,FABERテスト)が臨床上用いられる。今回FABERテストにて評価し,運動器超音波検査(以下,エコー検査)にて局所病変を明確にした後治療介入した結果,片脚立位・歩容が改善した症例を担当した。しかし実際はFABERテストの改善だけでは一時的であり,全身的な治療介入が必要だと再確認したので報告する。

【症例提示】
両変形性股関節症の60歳代女性。右FABERテストで鼠径部痛があった(NRS1)。脛骨粗面-床間の距離は24cmであった。鼠径部痛は右大腰筋・梨状筋,右腸骨前傾テープで消失した。エコー検査では,右大腿骨頭の背側滑りが減少していた。右腸骨筋において血流増生がみられ,鼠径靭帯下で滑走不全が生じていた。右片脚立位は体幹右側屈が生じ,左片脚立維持右遊脚側は股関節内転・内旋位だった。歩行では右立脚中期以降右翼状肩甲様,右腸骨前傾,腰椎前弯の減少がみられた。

【経過と考察】
テープ貼付後では様々な改善がみられた。脛骨粗面-床間距離は,右梨状筋テープ後21cm,右大腰筋テープ後17cm,右腸骨前傾誘導テープ後15cmだった。エコー検査では関節包内運動,腸骨筋滑走不全が改善していた。右大腰筋・梨状筋,腸骨前傾に対し治療介入した結果,片脚立位・歩容の改善があったが一時的であった為,再考察を行った。右梨状筋の緊張により仙骨の逆うなづき,左傾斜し,腸骨の前傾不全,腰椎の左凸・左回旋が生じたと考えた。これは胸椎の右凸・右回旋と波及し,右翼状肩甲様を引き起こす。右翼状肩甲様は右僧帽筋下部線維の機能不全を生じさせ,胸椎伸展減少へ波及する。また右大腰筋の機能不全も合わさり腰椎前弯減少が生じたと考えた。これらより立脚中期以降腰椎前弯・腸骨前傾が減少し,鼠径靭帯-大腿骨頭間が狭小化し右腸骨筋の滑走不全により炎症が生じたと考えた。従って局所病変だけを捉えるのではなく,全身を評価,治療することが重要だと再認識した。