[P2-A-0532] 脳卒中片麻痺歩行における下肢筋力と下肢加速度との関係
Keywords:片麻痺, 歩行, 下肢筋力
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺者の歩行能力は下肢機能が大きく影響するとされており,先行研究では,丹羽らにより片麻痺者の麻痺側膝伸展筋力が大きいほど歩行速度が速くなることが報告され,バランス能力と歩行自立度との関連も諸家により報告されている。加速度研究においては,健常者を対象としたもの,腰部にセンサを装着したものは多いが,センサを下肢に装着して片麻痺歩行を計測した報告は少ない。また,片麻痺歩行において,麻痺の程度と下肢筋力に着目し,麻痺側・非麻痺側に分けて特徴を明らかにした研究は少ない。そこで本研究は,脳卒中片麻痺者の麻痺側・非麻痺側下肢筋力と,歩行時の下肢加速度成分の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,脳卒中片麻痺者14名(年齢65±12歳,男性10名,女性4名,下肢Br.stageIII3名,IV5名,V3名,VI3名,右片麻痺9名,左片麻痺5名)であり,平地歩行自立者(FIM歩行項目6点以上)とした。3軸加速度センサは対象者の腰部,両大腿部,両外果部に装着し,データは内蔵されたBluetoothを介しサンプリング周波数100HzでPCに記録される。屋内16m直進路を快適速度で歩行し,中央10m区間を腰部センサの赤外線受光により抽出し,歩行速度を計測した。腰部前後加速度波形より,初期接地(IC)を特定し,10m区間から定常状態である中央の5歩行周期を抽出し,1歩行周期を100%として時間の正規化を行った。得られた加速度データより,両大腿部・両外果部の自己相関係数(定常性),立脚期(各歩行周期の30%)のRoot Mean Square(RMS)および3軸方向RMSの合算(合算RMS)を算出した。下肢筋力の計測には,等尺性筋力計μTasF-1を用い,麻痺側・非麻痺側下肢筋力(股関節屈曲,膝関節屈曲・伸展)を測定した。統計解析はSpearmanの順位相関係数を用いて,下肢筋力と各RMS値,自己相関係数,Br.stage,歩行速度との関連を検討した。統計ソフトはR-2.8.1を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】
歩行速度と筋力において,非麻痺側股関節屈曲筋力・膝関節屈曲筋力,麻痺側股関節屈曲筋力,麻痺側膝関節屈曲筋力・伸展筋力に有意な相関(p<0.05)を認め,下肢筋力が大きい程,歩行速度は速くなっていた。Br.stageにおいて,麻痺側膝関節の屈曲筋力・伸展筋力に有意な相関(p<0.01)を認めた。加速度成分と筋力との関係は,非麻痺側下肢において,膝関節屈曲筋力と外果部(合算RMS,前後RMS,上下RMS)に有意な相関(p<0.05)を認めた。麻痺側下肢においては,膝関節屈曲筋力と外果前後RMS,膝関節伸展筋力と大腿部(合算RMS,前後RMS,左右RMS)・外果部(合算RMS,前後RMS,左右RMS)に有意な相関(p<0.05)を認めた。自己相関係数(定常性)においては,麻痺側大腿部左右成分と麻痺側股関節屈曲筋力(p<0.05)・膝関節屈曲筋力(p<0.01)・膝関節伸展筋力(p<0.05)に有意な相関は認めた。
【考察】
本研究の結果から,歩行速度と麻痺側・非麻痺側下肢筋力とは,密接に関係していると考えられる。また,麻痺側膝関節筋力が大きい程,Br.stageが高くなっており,非麻痺側下肢筋力ではなく,麻痺側下肢筋力がBr.stageと関連していることが示唆された。加速度成分と下肢筋力との関係は,非麻痺側下肢および麻痺側下肢において,いずれも膝関節筋力との関連を示しており,膝関節筋力が大きい程,歩行速度が速く,下肢加速度成分も大きくなると考えられる。先行研究では,麻痺側膝関節伸展筋力と歩行速度,歩行自立度との関連が報告されており,本研究においても同様の結果となったことから,麻痺側膝関節伸展筋力および膝関節屈曲筋力が麻痺側立脚期における支持性を反映していることが推察される。自己相関係数と下肢筋力の結果より,麻痺側下肢筋力が大きいほど,麻痺側大腿部左右成分の定常性が高く,麻痺側大腿部の左右制御能力が高いことが示唆された。今後は,歩行の自立度によって,下肢筋力が加速度成分や歩行の定常性にどのような影響を及ぼすのか調査していく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
先行研究では,片麻痺歩行と下肢筋力との関連を調べたものは少ない。本研究により下肢筋力と歩行時の下肢加速度成分の関係が明確となり,片麻痺歩行の治療や効果判定,自立度向上へと繋がることが示唆された。
脳卒中片麻痺者の歩行能力は下肢機能が大きく影響するとされており,先行研究では,丹羽らにより片麻痺者の麻痺側膝伸展筋力が大きいほど歩行速度が速くなることが報告され,バランス能力と歩行自立度との関連も諸家により報告されている。加速度研究においては,健常者を対象としたもの,腰部にセンサを装着したものは多いが,センサを下肢に装着して片麻痺歩行を計測した報告は少ない。また,片麻痺歩行において,麻痺の程度と下肢筋力に着目し,麻痺側・非麻痺側に分けて特徴を明らかにした研究は少ない。そこで本研究は,脳卒中片麻痺者の麻痺側・非麻痺側下肢筋力と,歩行時の下肢加速度成分の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,脳卒中片麻痺者14名(年齢65±12歳,男性10名,女性4名,下肢Br.stageIII3名,IV5名,V3名,VI3名,右片麻痺9名,左片麻痺5名)であり,平地歩行自立者(FIM歩行項目6点以上)とした。3軸加速度センサは対象者の腰部,両大腿部,両外果部に装着し,データは内蔵されたBluetoothを介しサンプリング周波数100HzでPCに記録される。屋内16m直進路を快適速度で歩行し,中央10m区間を腰部センサの赤外線受光により抽出し,歩行速度を計測した。腰部前後加速度波形より,初期接地(IC)を特定し,10m区間から定常状態である中央の5歩行周期を抽出し,1歩行周期を100%として時間の正規化を行った。得られた加速度データより,両大腿部・両外果部の自己相関係数(定常性),立脚期(各歩行周期の30%)のRoot Mean Square(RMS)および3軸方向RMSの合算(合算RMS)を算出した。下肢筋力の計測には,等尺性筋力計μTasF-1を用い,麻痺側・非麻痺側下肢筋力(股関節屈曲,膝関節屈曲・伸展)を測定した。統計解析はSpearmanの順位相関係数を用いて,下肢筋力と各RMS値,自己相関係数,Br.stage,歩行速度との関連を検討した。統計ソフトはR-2.8.1を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】
歩行速度と筋力において,非麻痺側股関節屈曲筋力・膝関節屈曲筋力,麻痺側股関節屈曲筋力,麻痺側膝関節屈曲筋力・伸展筋力に有意な相関(p<0.05)を認め,下肢筋力が大きい程,歩行速度は速くなっていた。Br.stageにおいて,麻痺側膝関節の屈曲筋力・伸展筋力に有意な相関(p<0.01)を認めた。加速度成分と筋力との関係は,非麻痺側下肢において,膝関節屈曲筋力と外果部(合算RMS,前後RMS,上下RMS)に有意な相関(p<0.05)を認めた。麻痺側下肢においては,膝関節屈曲筋力と外果前後RMS,膝関節伸展筋力と大腿部(合算RMS,前後RMS,左右RMS)・外果部(合算RMS,前後RMS,左右RMS)に有意な相関(p<0.05)を認めた。自己相関係数(定常性)においては,麻痺側大腿部左右成分と麻痺側股関節屈曲筋力(p<0.05)・膝関節屈曲筋力(p<0.01)・膝関節伸展筋力(p<0.05)に有意な相関は認めた。
【考察】
本研究の結果から,歩行速度と麻痺側・非麻痺側下肢筋力とは,密接に関係していると考えられる。また,麻痺側膝関節筋力が大きい程,Br.stageが高くなっており,非麻痺側下肢筋力ではなく,麻痺側下肢筋力がBr.stageと関連していることが示唆された。加速度成分と下肢筋力との関係は,非麻痺側下肢および麻痺側下肢において,いずれも膝関節筋力との関連を示しており,膝関節筋力が大きい程,歩行速度が速く,下肢加速度成分も大きくなると考えられる。先行研究では,麻痺側膝関節伸展筋力と歩行速度,歩行自立度との関連が報告されており,本研究においても同様の結果となったことから,麻痺側膝関節伸展筋力および膝関節屈曲筋力が麻痺側立脚期における支持性を反映していることが推察される。自己相関係数と下肢筋力の結果より,麻痺側下肢筋力が大きいほど,麻痺側大腿部左右成分の定常性が高く,麻痺側大腿部の左右制御能力が高いことが示唆された。今後は,歩行の自立度によって,下肢筋力が加速度成分や歩行の定常性にどのような影響を及ぼすのか調査していく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
先行研究では,片麻痺歩行と下肢筋力との関連を調べたものは少ない。本研究により下肢筋力と歩行時の下肢加速度成分の関係が明確となり,片麻痺歩行の治療や効果判定,自立度向上へと繋がることが示唆された。