[P2-A-0548] 初回人工膝関節置換術と人工膝関節再置換術術後患者の患者立脚型アウトカムを用いた比較検討
高い身体活動レベルおよび手術した関節への意識の程度を含めた調査
キーワード:人工膝関節置換術, 人工膝関節再置換術, 患者立脚型アウトカム
【目的】
近年,人工膝関節置換術の手術件数が増加するに従い,インプラントの摩耗,沈み込み,脱転,術後拘縮などの原因による再置換術(Revision)の件数も増加傾向にある。海外の先行研究では再置換術を施行することで,疼痛や身体機能が改善すると報告されている一方,初回人工膝関節置換術(Primary)と比較し生活の質(QOL)アウトカムが劣るとの報告もある。本邦においても,RevisionとPrimaryの術後アウトカムを比較し把握することは,理学療法を展開していく上で重要な情報と成り得る。そこで今回,術後の膝機能および疼痛,身体機能,高い身体活動レベルへの実施状況,手術した関節への意識の程度を評価できる患者立脚型アウトカムを用い,QOL満足度も含めPrimaryとRevisionを比較検討した。
【方法】
Primaryの選択基準は,術後2ヶ月を経過した人工膝関節全置換術(TKA),単顆置換術(UKA),片側,両側例とした。Revisionの選択基準は,インプラントの沈み込み・摩耗によるゆるみ,ポリエチレンの脱転,術後拘縮により片側を再置換(ポリエチレン交換も含む)し,術後2ヶ月を経過した症例とした。除外基準は,重篤な心疾患,中枢神経疾患,膝関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者,術後感染による再置換術者,再々置換術者とした。評価項目は,1)日本語版Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index疼痛項目(WOMAC-P),身体項目(WOMAC-F),2)日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS),3)日本語版Forgotten joint score(JFJS-12),4)QOL満足度,5)最大等尺性膝伸展筋トルク,6)膝関節屈曲,伸展可動域とした。KJRの高い身体活動レベルへの実施状況を評価できるJHAASは,身体活動を歩行,走行,階段昇降,余暇活動の4つのドメインに分け,自身が達成できる最も高いレベルの身体活動を回答させる自記式の質問票である。JFJS-12は,健常者と同様,日常生活で手術した関節を意識しないでいることが「究極のゴール」であるとし開発されたもので,歩行,階段昇降,床からの立ち上がり,スポーツ活動中などの12項目の日常生活動作について,「手術した関節をどのくらい気にしていますか?」という質問に対し,5段階のリッカートスケールを用いて回答させる質問票である。QOL満足度の評価には,不満を-5点,満足を5点とした11段階のglobal rating scaleを用いた。5)はハンドヘルドダイナモメータ(アニマ社,μTas-F1)を用い,6)は東大式角度計を用い5度刻みで測定した。両群は,年齢,性別,BMI,術後期間,インプラントの種類(TKA or UKA),術側(両側or片側)の交絡因子でマッチングを行い比較検討した。Revisionの両側例は,片側Primary,反対側Revisionのことを示す。群間の有意差検定にはMann-Whitney U検定を用いた(有意水準5%)。
【結果】
マッチングの結果,Primary33名,Revision33名,計66名が対象となった。基本属性は,男性8名,女性58名,TKA56名,UKA10名,片側22名,両側44名,年齢[平均値±標準偏差(範囲)]75.1±5.7(59-87)歳,BMI 25.5±3.0(20.2-33.3)kg/m2,術後経過[中央値(範囲)]15(2-56)ヶ月であった。再置換の理由はゆるみ28名,脱転3名,術後拘縮2名であり,再置換までの期間は[中央値(範囲)]37(1-217)ヶ月であった。有意差検定の結果,RevisionはPrimaryと比較してWOMAC-P(p=0.012),WOMAC-F(p=0.005),QOL満足度(p=0.009)において低値を示した。有意差が検出された項目の記述統計量[(Revision/Primary)平均値±標準偏差]は,WOMAC-P(85.0±18.4/93.8±10.1)点,WOMAC-F(85.3±11.9/93.4±7.5)点,QOL満足度(2.8±2.3/4.1±1.0)点であった。他の評価項目では有意差は検出されなかった。
【考察】
今回,屈曲・伸展可動域や膝伸展筋力,高い身体活動レベルへの実施状況,手術した関節への意識の程度では両群の術後成績に差は無かったが,疼痛,基本的な疾患特異的ADL能力でRevisionが劣り,QOLに対し満足してないことが明らかとなった。この結果を踏まえると,Revisionには可動域や筋力よりも疼痛改善を主とした治療を展開し,疾患特異的なADL能力を向上させていくことが,OOL満足度向上に繋がると考える。
【理学療法学研究としての意義】
Primaryと比較検討を行った今回の結果は,Revisionに対し科学的根拠を踏まえた理学療法を展開していく上での有用な情報となり,意義は深いと考える。
近年,人工膝関節置換術の手術件数が増加するに従い,インプラントの摩耗,沈み込み,脱転,術後拘縮などの原因による再置換術(Revision)の件数も増加傾向にある。海外の先行研究では再置換術を施行することで,疼痛や身体機能が改善すると報告されている一方,初回人工膝関節置換術(Primary)と比較し生活の質(QOL)アウトカムが劣るとの報告もある。本邦においても,RevisionとPrimaryの術後アウトカムを比較し把握することは,理学療法を展開していく上で重要な情報と成り得る。そこで今回,術後の膝機能および疼痛,身体機能,高い身体活動レベルへの実施状況,手術した関節への意識の程度を評価できる患者立脚型アウトカムを用い,QOL満足度も含めPrimaryとRevisionを比較検討した。
【方法】
Primaryの選択基準は,術後2ヶ月を経過した人工膝関節全置換術(TKA),単顆置換術(UKA),片側,両側例とした。Revisionの選択基準は,インプラントの沈み込み・摩耗によるゆるみ,ポリエチレンの脱転,術後拘縮により片側を再置換(ポリエチレン交換も含む)し,術後2ヶ月を経過した症例とした。除外基準は,重篤な心疾患,中枢神経疾患,膝関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者,術後感染による再置換術者,再々置換術者とした。評価項目は,1)日本語版Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index疼痛項目(WOMAC-P),身体項目(WOMAC-F),2)日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS),3)日本語版Forgotten joint score(JFJS-12),4)QOL満足度,5)最大等尺性膝伸展筋トルク,6)膝関節屈曲,伸展可動域とした。KJRの高い身体活動レベルへの実施状況を評価できるJHAASは,身体活動を歩行,走行,階段昇降,余暇活動の4つのドメインに分け,自身が達成できる最も高いレベルの身体活動を回答させる自記式の質問票である。JFJS-12は,健常者と同様,日常生活で手術した関節を意識しないでいることが「究極のゴール」であるとし開発されたもので,歩行,階段昇降,床からの立ち上がり,スポーツ活動中などの12項目の日常生活動作について,「手術した関節をどのくらい気にしていますか?」という質問に対し,5段階のリッカートスケールを用いて回答させる質問票である。QOL満足度の評価には,不満を-5点,満足を5点とした11段階のglobal rating scaleを用いた。5)はハンドヘルドダイナモメータ(アニマ社,μTas-F1)を用い,6)は東大式角度計を用い5度刻みで測定した。両群は,年齢,性別,BMI,術後期間,インプラントの種類(TKA or UKA),術側(両側or片側)の交絡因子でマッチングを行い比較検討した。Revisionの両側例は,片側Primary,反対側Revisionのことを示す。群間の有意差検定にはMann-Whitney U検定を用いた(有意水準5%)。
【結果】
マッチングの結果,Primary33名,Revision33名,計66名が対象となった。基本属性は,男性8名,女性58名,TKA56名,UKA10名,片側22名,両側44名,年齢[平均値±標準偏差(範囲)]75.1±5.7(59-87)歳,BMI 25.5±3.0(20.2-33.3)kg/m2,術後経過[中央値(範囲)]15(2-56)ヶ月であった。再置換の理由はゆるみ28名,脱転3名,術後拘縮2名であり,再置換までの期間は[中央値(範囲)]37(1-217)ヶ月であった。有意差検定の結果,RevisionはPrimaryと比較してWOMAC-P(p=0.012),WOMAC-F(p=0.005),QOL満足度(p=0.009)において低値を示した。有意差が検出された項目の記述統計量[(Revision/Primary)平均値±標準偏差]は,WOMAC-P(85.0±18.4/93.8±10.1)点,WOMAC-F(85.3±11.9/93.4±7.5)点,QOL満足度(2.8±2.3/4.1±1.0)点であった。他の評価項目では有意差は検出されなかった。
【考察】
今回,屈曲・伸展可動域や膝伸展筋力,高い身体活動レベルへの実施状況,手術した関節への意識の程度では両群の術後成績に差は無かったが,疼痛,基本的な疾患特異的ADL能力でRevisionが劣り,QOLに対し満足してないことが明らかとなった。この結果を踏まえると,Revisionには可動域や筋力よりも疼痛改善を主とした治療を展開し,疾患特異的なADL能力を向上させていくことが,OOL満足度向上に繋がると考える。
【理学療法学研究としての意義】
Primaryと比較検討を行った今回の結果は,Revisionに対し科学的根拠を踏まえた理学療法を展開していく上での有用な情報となり,意義は深いと考える。