第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター2

変形性膝関節症5・ACL損傷

2015年6月6日(土) 11:25 〜 12:25 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0581] Notch Width IndexとACL損傷の関連性について

MRI Coronal Viewによる実態調査

川越誠1, 河内淳介1, 福原隆志2, 小林淳3, 加藤和夫3 (1.せせらぎ病院付属あさくら診療所リハビリテーション科, 2.中通リハビリテーション病院理学療法部門, 3.せせらぎ病院附属あさくら診療所整形外科)

キーワード:ACL損傷, Notch Width Index, MRI Coronal View

【はじめに,目的】
膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷はスポーツ傷害の中でも代表的な疾患であり,受傷機転,手術,治療内容など,様々な観点で研究され続けている。
しかし予防的観点では,まだ歴然たる効果が上げられていないのが現状である。
疫学的側面からの研究は近年積極的に行われており,中でも女性の受傷率が高いという報告がなされている。
また解剖学的因子の一つとして大腿骨顆間窩幅(Notch width:以下,NW)の狭さも影響することが報告されており,中でも非接触型損傷に関与するとの一報告もある。
海外の先行研究では,NWの狭さを,膝関節の顆間窩撮影像で得られた大腿骨顆部の横幅(Femer Width:以下,FW)における,NWの比率(NW/FW=Notch width index:以下,NWI)で算出し報告しているものが多い。
また先行研究でのNW計測方法は,膝関節屈曲90°未満での四つ這い位で上方からNWを撮影したX-P画像や,膝関節軸上(Axial view)でのNWを撮影したMRI画像を元に行っており,これはNW計測だけを目的とした撮影方法である。
だが臨床上,膝関節内の診断として用いられるのは冠状面(Coronal view)でのMRI画像が一般的で,当院でも同様の撮影方法がとられている。
よって今回,当院での全ACL損傷患者を対象に,冠状面でのMRI画像より計測したNWが,先行研究と同様にACL損傷との関連性があるのか調査,報告する。
【方法】
調査対象者は,2008年4月~2013年3月までに当院を受診したACL損傷患者101名(男性49名,女性52名,年齢15~59歳,平均年齢24±11),および半月板損傷患者88名(男性51名,女性37名,年齢11~76歳,平均年齢28±18)とした。
MRI画像は受傷後1ヶ月内の冠状面画像を使用し,全16枚のうち,医師の指示のもと膝前方よりほぼ中央となる9枚目の画像を対象とし,NW,FWを計測し,NWI(=NW/FW)の値を算出した。
そのNWIを元に,調査対象であるACL損傷患者と半月板損傷患者の間で比較し,またACL損傷患者の中で接触群(Cotact群:以下,C群)と非接触群(Non contact群:以下,NC群)及び男性群と女性群に群分けし,各々を比較した。統計学的処理としてMann-whitneyのU検定(ウィルコクソンの順位和検定)を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
NWIの算出・比較結果より,ACL損傷患者は半月板損傷患者よりNWIが小さいことが示された。また先行研究でも報告されているのと同様に,ACL損傷患者のC群よりNC群の方がより小さく,男性群より女性群の方でより小さいことが示された。
【考察】
先行研究でのNWの純粋な計測方法は,一般の臨床場面で行うには患者様への説明から了承までの時間や金額的負担を考慮すると,実際には難しいのが現状である。
今回のNWI計測方法は,先行研究とは異なる方法ではあったが,臨床での撮影方法として用いられる冠状面MRI画像による計測も,ACL損傷の予防的観点から意味のある方法であると思われる。
今後は,調査対象を先行研究で発生率の高いと言われている若年層~青年層に焦点を当て,さらにスポーツ種目や詳細な受傷機転も詳しく調査し,ACL損傷とNWIの関連性を突き詰めていく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
ACL損傷の予防的観点から,NWIの計測によるハイリスク群の抽出は,理学療法分野での予防的アプローチにいかにつなげていけるかが今後の課題となる。
ACL損傷とNWIの関連性が明確化すれば,臨床でもACL損傷以外で膝の冠状面MRI画像による診療を必要とするスポーツ外傷患者に対し,理学療法での予防的アプローチが行えることが期待される。