第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

変形性膝関節症3

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0567] 人工膝関節置換術の術後在院日数と膝関節可動域および歩行能力の関係

山﨑和博, 濱田哲郎, 今吉彩, 髙見純也 (独立行政法人労働者健康福祉機構九州労災病院中央リハビリテーション部)

Keywords:人工膝関節置換術, 在院日数, 歩行

【はじめに】当院の人工膝関節置換術(以下TKA)は3週間のクリニカルパスを使用している。現状では抜糸後の術後2週以降で自宅復帰可能な患者に関しては,随時退院している状況である。一方で退院までに術後3週以上を要する患者も存在する。そこで,当院にてTKAを施行した患者に関して早期に退院可能であった患者の状態を把握することを目的とした。
【方法】対象はH25年4月からH26年3月の期間で当院整形外科に入院しTKAを施行し術前,術後の各検査が可能であった92名とした。対象92名の術後平均在院日数は20.5日であった。この術後平均在院日数を基準とし,対象92名を術後在院日数が20日以下の群41名(男9名,女32名,年齢73.9±7.3歳)と21日以上の群51名(男11名,女40名,年齢74.9±6.8歳)の2群に分類し比較検討を行った。検討項目は術前の術側,非術側の膝関節可動域(屈曲,伸展),術側の術後1週,術後2週,退院前の膝関節可動域(屈曲,伸展),および手術からwalker歩行開始の日数,walker歩行自立(病棟内)の日数,T字杖歩行開始の日数,T字杖歩行自立(病棟内)の日数,退院前のT字杖歩行の10m最速歩行時間とした。統計処理は2群の比較に対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】術後在院日数は20日以下の群で17.0±1.9日,21日以上の群で23.3±2.9日であった。膝関節の関節可動域に関して,術前の術側は20日以下の群で屈曲124.3±12.7度,伸展-11.3±9.4度であった。21日以上の群は屈曲123.4±15.9度,伸展-13.1±11.2度であった。術前の非術側は20日以下の群で屈曲131.0±16.9度,伸展-7.7±8.7度であった。21日以上の群は屈曲131.0±14.1度,伸展-5.9±7.6度であった。術前の術側,非術側の膝関節可動域は20日以下の群と21日以上の群で有意差を認めなかった。術後の術側膝関節可動域について,術後1週目は20日以下の群で屈曲115.1±11.0度,伸展-5.2±5.8度であった。21日以上の群で屈曲107.1±10.8度,伸展-7.3±5.1度であった。術後1週目では屈曲可動域のみ2群に有意差を認めた(p<0.01)。術後2週目は20日以下の群で屈曲123.0±8.4度,伸展-2.7±4.1度であった。21日以上の群で屈曲118.6±10.6度,伸展-3.6±4.3度であった。術後2週目でも屈曲可動域のみ2群に有意差を認めた(p<0.05)。退院前は20日以下の群で屈曲125.6±6.7度,伸展-2.1±3.5度であった。21日以上の群で屈曲125.8±7.5度,伸展-2.0±3.4度であった。退院前の膝関節可動域は2群に有意差は認めなかった。歩行に関して,walker歩行開始は20日以下の群で術後2.0±1.2日,21日以上の群で術後2.4±1.2日であった。Walker歩行自立は20日以下の群で術後2.5±1.4日,21日以上の群で術後4.5±2.8日であり2群に有意差を認めた(p<0.01)。T字杖歩行開始は20日以下の群で術後5.9±1.7日,21日以上の群で術後8.0±2.6日であり2群に有意差を認めた(p<0.01)。T字杖歩行自立は20日以下の群で術後7.7±2.6日,21日以上の群で術後11.2±4.6日であり2群に有意差を認めた(p<0.01)。10m最速歩行時間は20日以下の群で10.5±3.0秒,21日以上の群で12.4±5.0秒であり2群に有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】20日以下の群では,術後の歩行能力の獲得がスムーズに行えていた。過去の報告も同様に,T字杖歩行の早期獲得が早期退院の要因と考える。結果よりT字杖歩行の自立は術後1週を目標に歩行練習をすすめることが重要と考える。また術側膝関節の屈曲可動域は,術後1週,2週において20日以下の群で有意に増加していた。膝の関節可動域の改善は機能的な膝関節を獲得するうえで重要な要素であり,またADLにおいても重要となる。よって,屈曲可動域の早期改善も早期退院の要因になったと考えられる。術後2週で屈曲120度以上の獲得を目標に関節可動域運動を実施することが重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】TKAにおいて早期退院が可能な患者の特徴を把握することで,術後のリハビリテーションの目標や内容を決定する際の指標となりうる。