第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター2

体幹・肩関節

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0595] Malgaigne骨折に対する理学療法の経験

山部拓也 (東大宮総合病院リハビリテーション科)

キーワード:Malgaigne骨折, 創外固定, 理学療法

【はじめに,目的】
骨盤骨折の一形態で,前方骨盤輪骨折と後方骨盤輪骨折が合併した骨折で垂直方向にずれているものをMalgaigne骨折という。後方構築が破壊されるため回旋方向の不安定性が生じ,完全不安定型に分類される。今回,Malgaigne骨折と診断された症例の理学療法を経験したため,ここに報告する。
【方法】
本症例は70歳女性。趣味は卓球。2014年2月に散歩中,自動車と接触。左鎖骨骨折と左Malgaigne骨折が認められた。左頭部打撲なし。事故の記憶なし。受傷から8日後に骨盤骨折に対し,創外固定(日本medical next:Galaxy)施行。左鎖骨骨折に対し,観血的整復内固定(Homs:HAI plate 6穴)施行した。受傷後12日後に理学療法介入した。疼痛は,創外固定中の手術創の疼痛,腰痛,蹲踞姿勢による,左膝窩部痛で認めた。関節可動域は右股関節屈曲90°外転20°内旋40°左股関節屈曲90°外転15°内旋20°筋力はMMTにて右下肢5レベル。左下肢3レベル。体幹3レベルであった。感覚障害はなし。左下肢の免荷期間は術後7週間であった。創外固定は術後8週間後に抜去。治療としては,両股関節の可動域練習,左股関節周囲筋トレーニング,体幹筋力トレーニング,骨盤帯の協調性運動,歩行練習を実施した。また,左下肢免荷時期での入院生活はモジュラー型車椅子を使用し,車椅子自立レベルであった。
【結果】
介入の結果,術後10週でT-cane歩行自立。病棟での日常生活動作自立。術後12週に通常歩行自立し,自宅退院となった。術後20週後に卓球でのラリーが可能となったため,外来リハビリテーション終了となる。最終評価時には疼痛の訴えは改善されていた。関節可動域は右股関節屈曲120°外転45°内旋45°左股関節屈曲120°外転40°内旋30°筋力はMMTにて右下肢5レベル。左下肢4レベル。体幹4レベルであった。骨盤の前傾,後傾運動可能。Timed Up & Go testは,6.8秒。
【考察】
本症例は,免荷期間,創外固定期間が長く,廃用の危険性が高かった。そのため,歩行習得のため,患部のrelaxationや患部外トレーニングを積極的に行った結果,歩行自立可能となったと考える。疼痛の原因としては,創外固定により手術創の疼痛。長期間の創外固定により,骨盤帯,脊柱の運動が制限されることにより,脊柱起立筋の筋緊張亢進したため,腰痛が引き起こされたと考える。蹲踞姿勢での左膝窩部痛は外側ハムストリングスの筋バランスの収縮不全により,引き起こされたと考える。本症例は,創外固定により,限られた肢位の中での廃用予防として,早期の筋力トレーニング開始したことと,創外固定抜去後に,骨盤帯の協調性運動を行うことで,体幹の安定性が向上し,バランスや移動能力の向上が得られたと考える。通常歩行だけでなく,本症例の趣味でもある,卓球のラリーが可能となり,QOLの向上にも繋がったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本報告は,術後早期の理学療法介入により,歩行自立を習得するための運動療法プログラムについて検討するための一助となる。