第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

発達障害理学療法2

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0631] NICUにおける極低出生体重児の自律哺乳獲得までの期間

慢性肺疾患による自律哺乳獲得への影響

守岡義紀1, 武井圭一1, 丸山侑里子1, 茂木恵美1, 仲村佳奈子1, 石川由樹1, 渋谷耕平1, やまもと満2 (1.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部, 2.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科)

Keywords:慢性肺疾患, 極低出生体重児, 自律哺乳

【はじめに,目的】
NICUにおける低出生体重児(以下LBWI)への理学療法士の関わりの一つとして自律哺乳獲得を目的とした経口哺乳練習があげられる。これまでに,当センターではLBWIと極低出生体重(以下VLBWI)における自律哺乳獲得までの期間を比較した結果,VLBWIの方が有意に遅く,VLBWIのうち自律哺乳が遅延する症例において慢性肺疾患(以下CLD)を合併している割合が多いことを報告した。しかし,VLBWIの自律哺乳獲得においてCLDの有無が獲得時期を遅延する要因であるのかは明らかではない。本研究の目的は,VLBWIに対する経口哺乳練習においてCLDが自律哺乳獲得に及ぼす影響を検討した上で,自律哺乳獲得時期の目安を明らかにすることである。
【方法】
対象は,2011年4月から2013年3月までの2年間で当院NICUから理学療法の依頼があり,そのうち自律哺乳獲得に至ったVLBWIの79名とし,CLDの診断の有無によりCLD群,非CLD群の2群に分類した。除外基準は,出生体重1500g以上の児,自律哺乳に至らなかった児,ミルクアレルギーの児とした。対象者の特性(CLD群・非CLD群の順に記載)は,男女比が19:12・25:23,在胎週数(平均値±標準偏差)が25±2週・28±3週,出生体重が696±204g・928±273g,人工呼吸器管理期間が82±18日・40±30日であった。調査項目は,経口哺乳開始日の修正週数,自律哺乳獲得日の修正週数を診療録から後方視的に調査した。分析は,経口哺乳開始日の修正週数の2群間における比較にマン・ホイットニー検定を行い,自律哺乳獲得日の修正週数の2群間における比較にt検定を行った。経口哺乳開始日から自律哺乳獲得日までの日数を自律哺乳獲得期間として求め,マン・ホイットニー検定を用いて2群間の比較を行った。次に,修正週数ごとに自律哺乳を獲得した児の割合を自律哺乳獲得率として求め,CLD群と非CLD群ごとに自律哺乳獲得の経過をまとめた。統計学的解析には,R-2.8.1を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
経口哺乳開始日の修正週数は,CLD群が37±2週,非CLD群が36±1週であり,CLD群の方が有意に遅延していた。自律哺乳獲得日の修正週数は,CLD群が43±3週,非CLD群が40±2週であり,CLD群の方が有意に遅延していた。自律哺乳獲得期間は,CLD群が37±13日,非CLD群が29±13日であり,CLD群の方が有意に長かった。経過における自律哺乳獲得率(CLD群・非CLD群の順に記載)は,36週で0%・4%,37週で0%・13%,38週で0%・25%,39週で13%・48%,40週で25%・60%,41週で35%・67%,42週で51%・85%,43週で61%・92%,44週で77%・94%,45週で87%・98%,46週で93%・98%,47週で93%・100%,48週で96%・100%であった。
【考察】
本研究の結果,VLBWIではCLDの合併により経口哺乳の開始と自律哺乳の獲得が遅延し,さらに自律哺乳獲得期間が長かった。哺乳は,持続的に嚥下と呼吸を繰り返し行う行動であり,誤嚥せずに必要量を摂取するためには嚥下と呼吸の協調性が重要である。CLDを合併している児は,もともとの未熟性に加え,人工呼吸器管理期間が長いことで呼吸と嚥下の経験値が低いことから嚥下と呼吸の協調性が著しく低下していることが影響していると考えた。自律哺乳獲得率の結果から,各修正週数におけるCLDの有無ごとの自律哺乳獲得率が明らかとなり,CLD群は修正39週から46週の7週間,非CLD群は修正36週から43週の7週間において1週ごとに獲得率が増加して90%以上の児がこの期間内に自律哺乳を獲得し,それ以降の週数では獲得率に大きな変化を認めなかった。このことから,CLD群は修正46週,非CLD群は修正43週までに自律哺乳を獲得することが目安になると考えられた。本研究では,自律哺乳獲得期間の7週間のうちの獲得時期に影響する要因は明らかにできないが,1症例ごとの経過と各修正週数における自律哺乳獲得率を比較することで,自律哺乳獲得の時期に対して順調または遅延など評価することができ,今後は早期獲得に関わる因子を検討することが課題である。これらのことから,CLDの有無により自律哺乳の獲得期間が異なるため,経口哺乳練習を進めるにあたりそれぞれにあった目標設定,介入内容を検討することが重要であると考えられた。

【理学療法学研究としての意義】
本研究は,NICUにおけるVLBWIへの経口哺乳に対してCLDの有無が自律哺乳獲得を遅延する因子であること明らかにし,CLD群は修正46週,非CLD群は修正43週までに自律哺乳を獲得することが目安になること提示したことは,経口哺乳練習を進めるにあたり有用である。