[P2-C-0562] 変形性膝関節症患者における改訂版Frenchay Activities Indexの妥当性
Keywords:変形性膝関節症, SR-FAI, 妥当性
【はじめに,目的】大規模臨床統合データベースROADプロジェクトの解析結果から60歳以上での変形性膝関節症(膝OA)の有病率は男性で約50%,女性で約75%とされている。膝OAの病態は加齢現象と密接に関わっていることから,高齢化の進む本邦では患者数の増加が予想される。また,膝OAは患者の運動機能を大きく低下させ,要介護とさせる原因疾患の第4位,要支援では1位であることから,膝OA患者が地域で自立した生活を送るためには,予防的リハビリテーションが重要だとされる。地域での予防的リハビリテーションの実践において,リハ専門職は患者の状態を正確に評価する必要があるが,膝OA患者では社会参加の機会が減少することから,単純な運動機能やADLの評価に加え,より広義な意味を持つIADLの評価が重要となる。IADLにはいくつかの評価方法があるが,Holbrookらによって考案されたFrenchay Activities Indexは自己記入式の簡易版(SR-FAI)が開発され,検者間信頼性も確認されている評価法である。SR-FAIは15項目の45点満点(活動的)で評価され,欠損値が少なくなるように構成されていることから,多数症例の疫学的研究に適しているとされる。SR-FAIはADL尺度であるBarthel indexとの間に相関関係を認めることから,ADL尺度との一定の収束的妥当性を持つと報告されているが,その構成概念妥当性については不明な点もある。加えて,膝OA患者における構成概念妥当性については,過去に検討されていない。そこで本研究では,膝OA患者におけるSR-FAIの構成概念妥当性と,基準関連妥当性について解析し,膝OA患者のIADL評価尺度としての有用性を検討する。
【方法】対象の包含基準は2013年7月から2014年10月までの期間に多施設共同研究の参加病院において膝OAと診断された者とした。構成概念妥当性については,膝OA患者の特異的なQOL尺度であるJapanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM),本邦で最も用いられている臨床評価基準であるJOA score,運動機能であるTimed Up & Go Test(TUG)との相関を,Pearsonの相関係数を用いて解析した。基準関連妥当性としては,目的変数をTKA術後の5m最大歩行速度,説明変数をSR-FAI,JKOM,JOA score,TUGとして予測的妥当性の観点から解析した。階層的重回帰分析にて交絡因子(年齢,性別,BMI,Kellgren-Lawrence分類)を強制投入した後,ステップワイズ法にて交絡因子から独立して説明変数が目的変数に寄与するかを検討した。解析ソフトはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】対象者は137名(男性19名,女性118名)である。対象者の平均年齢は75.7±7.1歳,平均BMIは25.3±3.9 kg/m2であった。SR-FAIと各尺度との相関係数(r)は,JKOMでは-0.34,JOA scoreでは0.35,TUGで-0.42となり,全ての項目で統計学的に有意な相関関係を認めたが相関係数は低値を示した。予測的妥当性については,交絡因子を含めて階層的重回帰分析を実施した結果,有意な変数としてKellgren-Lawrence分類が選択され,SR-FAIは回帰式から除外された。
【考察】SR-FAIはQOL尺度であるJKOMと臨床評価基準として用いられているJOA scoreおよびTUGと有意な相関関係にあったが,その妥当性係数は低値であることから,これらの評価方法と弁別的妥当性があると考えられる。SR-FAIには仕事,趣味,旅行などの項目も含まれていることから,ADLよりもより高いレベルの社会での自立度を評価できるといえ,保存療法時の膝OA患者の評価として有用であると考える。つまり,SR-FAIはQOLや運動機能と一部関係を有しているが,これらの尺度とは異なった側面を評価しており,膝OA患者の評価方法として新たな視点を与えるものと考えられた。一方でSR-FAIは運動機能である術後の5m歩行速度を説明する変数としては選択されなかった。これらのことからSR-FAIは運動機能を一部評価しているが,術後の運動機能を予測への有用性は乏しいと考えられた。今後はアウトカムを他の評価尺度を用いてSR-FAIの予測的妥当性を検討することにより,異なった側面からのSR-FAIの有用性について検討したい。
【理学療法学研究としての意義】SR-FAIは膝OA患者の評価法として一定の妥当性を有しており,臨床での使用において有用であると考えられる。
【方法】対象の包含基準は2013年7月から2014年10月までの期間に多施設共同研究の参加病院において膝OAと診断された者とした。構成概念妥当性については,膝OA患者の特異的なQOL尺度であるJapanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM),本邦で最も用いられている臨床評価基準であるJOA score,運動機能であるTimed Up & Go Test(TUG)との相関を,Pearsonの相関係数を用いて解析した。基準関連妥当性としては,目的変数をTKA術後の5m最大歩行速度,説明変数をSR-FAI,JKOM,JOA score,TUGとして予測的妥当性の観点から解析した。階層的重回帰分析にて交絡因子(年齢,性別,BMI,Kellgren-Lawrence分類)を強制投入した後,ステップワイズ法にて交絡因子から独立して説明変数が目的変数に寄与するかを検討した。解析ソフトはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】対象者は137名(男性19名,女性118名)である。対象者の平均年齢は75.7±7.1歳,平均BMIは25.3±3.9 kg/m2であった。SR-FAIと各尺度との相関係数(r)は,JKOMでは-0.34,JOA scoreでは0.35,TUGで-0.42となり,全ての項目で統計学的に有意な相関関係を認めたが相関係数は低値を示した。予測的妥当性については,交絡因子を含めて階層的重回帰分析を実施した結果,有意な変数としてKellgren-Lawrence分類が選択され,SR-FAIは回帰式から除外された。
【考察】SR-FAIはQOL尺度であるJKOMと臨床評価基準として用いられているJOA scoreおよびTUGと有意な相関関係にあったが,その妥当性係数は低値であることから,これらの評価方法と弁別的妥当性があると考えられる。SR-FAIには仕事,趣味,旅行などの項目も含まれていることから,ADLよりもより高いレベルの社会での自立度を評価できるといえ,保存療法時の膝OA患者の評価として有用であると考える。つまり,SR-FAIはQOLや運動機能と一部関係を有しているが,これらの尺度とは異なった側面を評価しており,膝OA患者の評価方法として新たな視点を与えるものと考えられた。一方でSR-FAIは運動機能である術後の5m歩行速度を説明する変数としては選択されなかった。これらのことからSR-FAIは運動機能を一部評価しているが,術後の運動機能を予測への有用性は乏しいと考えられた。今後はアウトカムを他の評価尺度を用いてSR-FAIの予測的妥当性を検討することにより,異なった側面からのSR-FAIの有用性について検討したい。
【理学療法学研究としての意義】SR-FAIは膝OA患者の評価法として一定の妥当性を有しており,臨床での使用において有用であると考えられる。