[P2-C-0602] 後足部外反角度変化が歩行立脚初期の足圧中心座標,速度に及ぼす影響
Keywords:後足部, 足圧中心, 歩行速度
【はじめに,目的】
歩行における流動性の低下は,足圧中心の移動速度に急激な増減が生じ,過剰な身体制御が必要となることから,疼痛のメカニカルストレスともなり得る。流動性の低下を引き起こす一因として,足部機能低下が挙げられる。特に後足部機能の破綻は,中足部や前足部への影響も大きいため,ロッカー機能や足関節制御機能の低下をきたすことが予測される。臨床上,足部機能低下例に対し,後足部機能を改善させることにより歩行の流動性が改善され,疼痛が軽減することを経験する。そのため,歩行を流動的に行う上で後足部機能は重要であると考える。
先行研究では,足部機能と歩行時の足圧中心軌跡の関連などについて多数報告されているが,個体差も関与するとされており,一定の見解は得られていない。さらに,歩行の流動性に着目し,後足部機能との関連性を報告している研究は散見される程度である。
よって,本研究では歩行の流動性を足圧中心の移動速度として捉え,後足部が歩行周期に最も影響を及ぼす立脚初期に着目し,後足部外反角度変化が足圧中心座標及び速度に与える影響を明確にし,歩行に対する足部介入における運動学的知見を得ることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患や足部変形(内側縦アーチ高率11.5%以下,18.5%以上)の無い健常成人10名(男性6名,女性4名,平均年齢22.1±0.8歳)20脚とした。
測定は,10mの歩行路の中央に足底圧分布測定装置win-pod(MEDI CAPTEURS社製)を置き,自然歩行にて8往復させた。得られたデータから,立脚初期時のX軸およびY軸における足圧中心座標,速度を算出し,平均値を代表値とした。立脚初期はKirsten Gots-Newmannの歩行周期分類を参考に,歩行立脚期の前半12%と規定した。足圧中心座標は,踵接地時から立脚初期間におけるX軸における外方への移動量,Y軸における前方への移動量を抽出した。また,速度は最大速度を抽出した。
後足部外反角度の測定は,静止立位と片脚立位の後足部及び下腿を,後正中方向75cmの位置からデジタルビデオカメラにて撮影した。撮影した画像は画像解析ソフトImageJ(NIH社製)にて,下腿軸と踵骨軸のなす角度を算出し,静止立位と片脚立位時の後足部外反角度変化量を求めた。測定は2回実施し,平均値を代表値とした。
統計学的検討は,立脚初期における足圧中心座標移動量および最大速度と,後足部外反角度変化量の関係をpearsonの積率相関係数を用いて分析した。なお,統計処理には統計ソフトSPSS Statistics13を用いた。
【結果】
後足部外反角度変化量とX軸における足圧中心座標移動量は正の相関を示した(r=0.55)。
後足部外反角度変化量とY軸における足圧中心座標移動量は相関を示さなかった(r=-0.28)。
後足部外反角度変化量と最大速度は負の相関を示した(r=-0.68)。
【考察】
本研究では,後足部外反角度変化量の増大に伴い,歩行立脚初期における外方への足圧中心座標移動量は増大し,最大速度は減少する傾向を示した。後足部外反は,距舟関節と踵立方関節の関節軸が横足根関節で平行に位置することから,可動性が増大し柔軟な足部を形成する。このような解剖学的背景から,後足部外反増大例では足部の支持性が低下し,ロッカー機能が破綻するため,推進力が得られないことが予測される。推進力の低下は,歩行動作の遅延を示すため,後足部外反に伴い速度は減少したと考えられる。
また,立脚初期における足部機能は,衝撃吸収や対側からの荷重受け継ぎが挙げられる。後足部外反増大例では,衝撃吸収および対側からの荷重受け継ぎが非流動的となることから,歩行立脚初期における外方への推進力を制御できず,外方への足圧中心座標移動量が増大したと考えられる。
後足部外反角度変化量と前方への足圧中心座標移動量との相関が得られなかった理由としては,後足部外反増大による推進力低下により,股関節や上半身など様々な部位で推進力を補ったため,不規則に分布したと考える。
【理学療法学研究としての意義】
歩行時の足圧中心軌跡は,距骨下関節回外で踵接地し,足圧中心が足部の外側を通り,足底全体接地後は内側へ向きを変え,前足部で蹴りだすのが望ましいとされている。本研究の結果から,後足部機能の低下は,理想とされる足圧中心制御機能の低下や速度低下に関与し,流動的な歩行を阻害する一因となると考える。今回得られた足部介入における歩行時の運動学的知見は,疾患群における歩行動作の改善や足部機能を考慮した理学療法を展開する上で意義があるものと考える。
歩行における流動性の低下は,足圧中心の移動速度に急激な増減が生じ,過剰な身体制御が必要となることから,疼痛のメカニカルストレスともなり得る。流動性の低下を引き起こす一因として,足部機能低下が挙げられる。特に後足部機能の破綻は,中足部や前足部への影響も大きいため,ロッカー機能や足関節制御機能の低下をきたすことが予測される。臨床上,足部機能低下例に対し,後足部機能を改善させることにより歩行の流動性が改善され,疼痛が軽減することを経験する。そのため,歩行を流動的に行う上で後足部機能は重要であると考える。
先行研究では,足部機能と歩行時の足圧中心軌跡の関連などについて多数報告されているが,個体差も関与するとされており,一定の見解は得られていない。さらに,歩行の流動性に着目し,後足部機能との関連性を報告している研究は散見される程度である。
よって,本研究では歩行の流動性を足圧中心の移動速度として捉え,後足部が歩行周期に最も影響を及ぼす立脚初期に着目し,後足部外反角度変化が足圧中心座標及び速度に与える影響を明確にし,歩行に対する足部介入における運動学的知見を得ることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患や足部変形(内側縦アーチ高率11.5%以下,18.5%以上)の無い健常成人10名(男性6名,女性4名,平均年齢22.1±0.8歳)20脚とした。
測定は,10mの歩行路の中央に足底圧分布測定装置win-pod(MEDI CAPTEURS社製)を置き,自然歩行にて8往復させた。得られたデータから,立脚初期時のX軸およびY軸における足圧中心座標,速度を算出し,平均値を代表値とした。立脚初期はKirsten Gots-Newmannの歩行周期分類を参考に,歩行立脚期の前半12%と規定した。足圧中心座標は,踵接地時から立脚初期間におけるX軸における外方への移動量,Y軸における前方への移動量を抽出した。また,速度は最大速度を抽出した。
後足部外反角度の測定は,静止立位と片脚立位の後足部及び下腿を,後正中方向75cmの位置からデジタルビデオカメラにて撮影した。撮影した画像は画像解析ソフトImageJ(NIH社製)にて,下腿軸と踵骨軸のなす角度を算出し,静止立位と片脚立位時の後足部外反角度変化量を求めた。測定は2回実施し,平均値を代表値とした。
統計学的検討は,立脚初期における足圧中心座標移動量および最大速度と,後足部外反角度変化量の関係をpearsonの積率相関係数を用いて分析した。なお,統計処理には統計ソフトSPSS Statistics13を用いた。
【結果】
後足部外反角度変化量とX軸における足圧中心座標移動量は正の相関を示した(r=0.55)。
後足部外反角度変化量とY軸における足圧中心座標移動量は相関を示さなかった(r=-0.28)。
後足部外反角度変化量と最大速度は負の相関を示した(r=-0.68)。
【考察】
本研究では,後足部外反角度変化量の増大に伴い,歩行立脚初期における外方への足圧中心座標移動量は増大し,最大速度は減少する傾向を示した。後足部外反は,距舟関節と踵立方関節の関節軸が横足根関節で平行に位置することから,可動性が増大し柔軟な足部を形成する。このような解剖学的背景から,後足部外反増大例では足部の支持性が低下し,ロッカー機能が破綻するため,推進力が得られないことが予測される。推進力の低下は,歩行動作の遅延を示すため,後足部外反に伴い速度は減少したと考えられる。
また,立脚初期における足部機能は,衝撃吸収や対側からの荷重受け継ぎが挙げられる。後足部外反増大例では,衝撃吸収および対側からの荷重受け継ぎが非流動的となることから,歩行立脚初期における外方への推進力を制御できず,外方への足圧中心座標移動量が増大したと考えられる。
後足部外反角度変化量と前方への足圧中心座標移動量との相関が得られなかった理由としては,後足部外反増大による推進力低下により,股関節や上半身など様々な部位で推進力を補ったため,不規則に分布したと考える。
【理学療法学研究としての意義】
歩行時の足圧中心軌跡は,距骨下関節回外で踵接地し,足圧中心が足部の外側を通り,足底全体接地後は内側へ向きを変え,前足部で蹴りだすのが望ましいとされている。本研究の結果から,後足部機能の低下は,理想とされる足圧中心制御機能の低下や速度低下に関与し,流動的な歩行を阻害する一因となると考える。今回得られた足部介入における歩行時の運動学的知見は,疾患群における歩行動作の改善や足部機能を考慮した理学療法を展開する上で意義があるものと考える。