第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

足部・足関節

Sat. Jun 6, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0608] 脊椎椎体骨折に対するBalloon Kyphoplasty施行症例において,術後の日常生活活動に影響を与える因子の検討

白井智裕1, 池田陽香1, 清水菜穂1, 小谷俊明2, 加藤宗規3 (1.聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室, 2.聖隷佐倉市民病院整形外科, 3.了德寺大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:BKP, 日常生活活動, 術後1週

【はじめに,目的】
脊椎椎体骨折に対しての治療はこれまで保存療法が主であり,安静臥床,装具療法,運動療法が多く行われてきた。2011年よりBalloon Kyphoplasty(以下BKP)が国内にて公的保険適応となり,低侵襲の経皮的椎体形成術として近年国内で施行されている。BKPの治療効果として,即時的な疼痛軽減,椎体高や局所後弯角の改善などがいわれているが,一方で隣接椎体の続発性骨折の危険性も報告されている。そこで当院ではBKP施行症例に対し,続発性骨折の予防と術後の継続的フォローを含め,2012年より地域連携パスを用い,術後1週の退院計画にそった理学療法を実施している。しかし臨床では術後1週で退院できない症例も経験し,またその影響する因子についての報告も少ない。本研究の目的は,当院にて脊椎椎体骨折に対し,BKPを施行した症例の術後1週の日常生活活動(以下ADL)に影響を与える因子を検討することである。
【方法】
対象は当院で地域連携パスを開始した2013年2月から2014年10月に,脊椎圧迫骨折にて当院でBKPを施行した78例のうち,口頭指示が理解でき,後方視的に調査可能であった60例(男性15例,女性45例,平均年齢77.4±7.2歳,羅患椎体高位第5胸椎から第4腰椎)である。方法は,対象者を術後1週時に日常生活活動(以下ADL)が自立した36例(以下自立群)と,非自立であった24例(以下非自立群)の2群に分け,年齢,性別,BMI,インタクトP1NP,TRACP-5b,発症から手術までの日数,術後日数,手術前,術後2日,術後1週の疼痛,手術前,術後2日の基本動作,ADL能力について2群間で比較した。評価指標は,疼痛はvisual analogue scale(以下VAS),基本動作はAbility for basic movement scale(以下ABMS),ADLはBarthel Index(以下BI)を用いた。次に2群間の比較にて有意差の認めた因子を独立変数,術後1週ADLの自立可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。さらに回帰分析にて採択された因子については,一部詳細な分析を行った。統計学的検討は,2群比較にはt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を用い,有意水準5%とした。
【結果】
2群比較では年齢,インタクトP1NP,TRACP-5b,術後日数,手術前と術直後のABMS,BI,術後1週のVASにおいて有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,有意に関連したのは術後2日のABMS(p<0.05,オッズ比2.539),術後2日のBI(p<0.05,オッズ比1.109)であった。そこで術後2日の基本動作に着目すると,非自立群では起き上がり,立ち上がりの自立者が約25%であるのに対し,自立群では約85%であった。
【考察】
今回BKP後1週のADL能力に影響する因子として,術後2日の基本動作,ADL能力が採択された。BKPは術後即時的な除痛効果を示し,早期退院,QOLを改善できる場合が多いとされる一方,術後の疼痛機序については一定の見解が得られていない,と報告されている。今回,影響する因子として疼痛が推測されたが,結果より術後早期の動作能力が考えられた。一般に整形外科領域の手術後は,早期に動作を獲得すると予後が良いことは容易に想像でき,BKP後においても,術後1週の予後予測に術直後の動作能力評価が重要と結果より示された。また術直後の動作能力の中で起き上がり,立ち上がり動作能力がその指標となる可能性が考えられた。しかしながら本研究では,対象者の術前のADL能力を考慮していない点,また影響する因子が臨床で使用できる有用な指標には至っていない点が今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
今回,脊椎椎体骨折に対しBKPを施行した症例における,術後1週のADLに影響する因子について,一定の見解が得られた。今後さらにBKP後の理学療法の意義,必要性について長期的なフォローも含め,詳細な検討を継続したいと考えている。