[P2-C-0614] 足趾筋群への筋腱移行部及び腱骨移行部刺激がバランス能力に及ぼす影響について
~タオルギャザー実施群とのFRT値変化量の比較から~
Keywords:筋腱移行部及び腱骨移行部刺激, FRT, 足趾機能
【はじめに,目的】
近年,高齢者に限らず若年者でも足趾機能の低下が問題視され,足趾筋群の機能不全が指摘されている。一方,我々は臨床において筋機能改善に即時的効果が得られる筋腱移行部及び腱骨移行部刺激(Muscle tendon junction and Enthesis Stimulation以下,MES)を各関節機能不全へのアプローチに用いており,足趾機能不全に対しても一定の効果を得ている。足趾筋群へのMESの効果として,足趾開排能力の向上及び立位・歩行バランスの改善が認められる。足趾開排能力はバランス能力に関与するとされる足趾把持能力と関連性があるとする報告もあり,開排能力の向上がバランス能力の改善につながっているのではないかと考えている。今回は,一般的に足趾機能向上を目的に用いることの多いタオルギャザー(以下,TG)を実施した群と足趾筋群へのMESを実施した群の実施前後の前方重心移動能力の即時的変化についてFunctional Reach Test(以下,FRT)を用いて比較検討したので報告する。
【方法】
MESとは)骨格筋の筋腱移行部及び腱骨移行部に1~5秒間触圧刺激を加えることで刺激部位のメカノレセプターへの刺激入力によるIb抑制を誘起するコンディショニングテクニック。筋緊張の抑制による柔軟性向上が得られる(第44回及び47回学術大会にてその効果について報告)。また筋線維を伸張しないため筋紡錘の脱感作などの問題を引き起こす事がなく,同時に筋収縮能力の向上が得られる。対象)疾患を持たない健常成人33名(年齢33±7.9歳),MESを行うMES群11名とTGを行うTG群11名,コントロール群(以下,C群)11名に分けた。方法)MES群は母趾外転筋(基節骨底内側部),短母趾屈筋(基節骨底と内外側の種子骨,第1中足骨体遠位部底側面内側),母趾内転筋(基節骨底外側部),短趾屈筋(第2-5趾中節骨底底側部),虫様筋(第2-5趾中節骨体背側面),短小趾屈筋(小趾基節骨底),小趾外転筋(小趾基節骨底外側部)に約1秒間の軽い触圧刺激を各々2回ずつ実施し,TG群は椅子座位にて両側足趾で1分間実施した。FRTの測定は裸足,自然立位にて片側上肢リーチで測定。リーチの際,股関節中間位,膝関節伸展位を保持させ踵部が離床しないよう説明し,練習を行った後に3回測定し平均値を算出した。各測定間に安静立位で5秒間の休憩を入れた。MES群,TG群は実施の前後で,C群については実施の代わりに椅子座位での休憩を1分間入れ休憩前後に測定。実施前後の測定値の差を変化量とし,各々の群で変化量の平均値を算出,各群間でその差を比較した。統計処理にはWilcoxonの順位和検定を用い,有意水準は1%とした。
【結果】
各群のFRTの変化量の平均値はC群で10.5±14mm,MES群では39.7±21mm,TG群で23.6±23mmであった。各群の変化量を比較すると,TG群とC群との間に有意な差は認めなかったが,MES群ではC群に比べ有意な増加(p<0.01)を認めた。しかしMES群とTG群の間では有意な差は認めなかった。
【考察】
今回,MES群においてC群に比べ有意な増加を認め,TG群においては差が認めないという結果となったが,MES群とTG群の間では有意な差は認められなかった。TG群がMES群に及ばなかったのは,MESでは実施筋の収縮能力の向上に加え足趾開排能力の向上などの関節柔軟性の向上も同時に得られるのに対し,TG群においては,筋収縮への取り組みのみとなったことが一因と思われ,臨床場面においては関節可動域練習などを併用することで同様の効果は期待できるものと思われる。しかしながら今回確認された足趾機能に対するMESの効果はTG等のトレーニングに比べ即時的であり,実施時の肢位を問わず,実施時間の短さや患者負担の無さといった点からMESの臨床における有用性を示す結果となった。また今回,足底部に存在する足趾筋群のほぼ全てを刺激したが,その即時性を活かし個々の筋への個別刺激による変化を確認することで患者の抱える問題と各筋機能との関係を明確にすることができ,評価場面においても利用価値が高いものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
最近では高齢者のみならず若年層でも問題視されているロコモティブシンドロームの一因として足部機能の低下があげられており,インソールや各種トレーニング法などによる取り組みがなされている。今回の結果から,MESが足趾機能に対するアプローチや評価の一助となればと考える。
近年,高齢者に限らず若年者でも足趾機能の低下が問題視され,足趾筋群の機能不全が指摘されている。一方,我々は臨床において筋機能改善に即時的効果が得られる筋腱移行部及び腱骨移行部刺激(Muscle tendon junction and Enthesis Stimulation以下,MES)を各関節機能不全へのアプローチに用いており,足趾機能不全に対しても一定の効果を得ている。足趾筋群へのMESの効果として,足趾開排能力の向上及び立位・歩行バランスの改善が認められる。足趾開排能力はバランス能力に関与するとされる足趾把持能力と関連性があるとする報告もあり,開排能力の向上がバランス能力の改善につながっているのではないかと考えている。今回は,一般的に足趾機能向上を目的に用いることの多いタオルギャザー(以下,TG)を実施した群と足趾筋群へのMESを実施した群の実施前後の前方重心移動能力の即時的変化についてFunctional Reach Test(以下,FRT)を用いて比較検討したので報告する。
【方法】
MESとは)骨格筋の筋腱移行部及び腱骨移行部に1~5秒間触圧刺激を加えることで刺激部位のメカノレセプターへの刺激入力によるIb抑制を誘起するコンディショニングテクニック。筋緊張の抑制による柔軟性向上が得られる(第44回及び47回学術大会にてその効果について報告)。また筋線維を伸張しないため筋紡錘の脱感作などの問題を引き起こす事がなく,同時に筋収縮能力の向上が得られる。対象)疾患を持たない健常成人33名(年齢33±7.9歳),MESを行うMES群11名とTGを行うTG群11名,コントロール群(以下,C群)11名に分けた。方法)MES群は母趾外転筋(基節骨底内側部),短母趾屈筋(基節骨底と内外側の種子骨,第1中足骨体遠位部底側面内側),母趾内転筋(基節骨底外側部),短趾屈筋(第2-5趾中節骨底底側部),虫様筋(第2-5趾中節骨体背側面),短小趾屈筋(小趾基節骨底),小趾外転筋(小趾基節骨底外側部)に約1秒間の軽い触圧刺激を各々2回ずつ実施し,TG群は椅子座位にて両側足趾で1分間実施した。FRTの測定は裸足,自然立位にて片側上肢リーチで測定。リーチの際,股関節中間位,膝関節伸展位を保持させ踵部が離床しないよう説明し,練習を行った後に3回測定し平均値を算出した。各測定間に安静立位で5秒間の休憩を入れた。MES群,TG群は実施の前後で,C群については実施の代わりに椅子座位での休憩を1分間入れ休憩前後に測定。実施前後の測定値の差を変化量とし,各々の群で変化量の平均値を算出,各群間でその差を比較した。統計処理にはWilcoxonの順位和検定を用い,有意水準は1%とした。
【結果】
各群のFRTの変化量の平均値はC群で10.5±14mm,MES群では39.7±21mm,TG群で23.6±23mmであった。各群の変化量を比較すると,TG群とC群との間に有意な差は認めなかったが,MES群ではC群に比べ有意な増加(p<0.01)を認めた。しかしMES群とTG群の間では有意な差は認めなかった。
【考察】
今回,MES群においてC群に比べ有意な増加を認め,TG群においては差が認めないという結果となったが,MES群とTG群の間では有意な差は認められなかった。TG群がMES群に及ばなかったのは,MESでは実施筋の収縮能力の向上に加え足趾開排能力の向上などの関節柔軟性の向上も同時に得られるのに対し,TG群においては,筋収縮への取り組みのみとなったことが一因と思われ,臨床場面においては関節可動域練習などを併用することで同様の効果は期待できるものと思われる。しかしながら今回確認された足趾機能に対するMESの効果はTG等のトレーニングに比べ即時的であり,実施時の肢位を問わず,実施時間の短さや患者負担の無さといった点からMESの臨床における有用性を示す結果となった。また今回,足底部に存在する足趾筋群のほぼ全てを刺激したが,その即時性を活かし個々の筋への個別刺激による変化を確認することで患者の抱える問題と各筋機能との関係を明確にすることができ,評価場面においても利用価値が高いものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
最近では高齢者のみならず若年層でも問題視されているロコモティブシンドロームの一因として足部機能の低下があげられており,インソールや各種トレーニング法などによる取り組みがなされている。今回の結果から,MESが足趾機能に対するアプローチや評価の一助となればと考える。