[P2-C-0620] 重症心身障害児(者)の肺炎と脊柱側彎症との関係性について
Keywords:肺炎, 脊柱側彎症, 重症心身障害児(者)
【はじめに,目的】
重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))の合併症として,脊柱側彎変形は非常に多くみられる。重度な脊柱変形は胸郭の変形と関連性が強いとされ,一回換気量の低下や呼吸数の増加などの拘束性換気障害により,呼吸機能の低下につながると考えられている。また,このために呼吸器感染症などの二次障害を併発しやすいとされている。一方で,重症児において呼吸器疾患が重篤な合併症とされ,大半を占める肺炎が死亡原因の一位とされている。したがって,理学療法をする上でもその予防や対策が重要な検討課題となる。しかし拘束性障害を引き起こす要因ともなる脊柱側彎と,肺炎の関係について直接的に検討された報告はあまりない。そこで本研究では,脊柱側彎症と肺炎の関係について検討することを目的とした。
【方法】
当院に入院する重症児(者)56名(男性30名,女性25名,平均年齢36.9±14.9歳(4~66歳),平均身長134.±18.96cm,平均体重26.1±7.3kg,粗大運動能力分類システムレベルV)を対象とした。脊柱側彎変形は全脊柱レントゲン正面画像を用いて,胸腰椎移行部までのCobb角を算出した。肺炎の既往については,2013年度のカルテから調査し,生化学検査およびレントゲン画像撮影をもとに医師が「肺炎」と診断した回数を調べた。また,肺炎の調査項目として発熱期間,抗生剤の服用期間と生理学検査項目の白血球値,CRP値について収集した。発熱期間,抗生剤,白血球値,CRP値については一回の肺炎ごとの平均を算出した。一回でも肺炎を起こしたものを肺炎罹患群,一度も肺炎を起こさなかったものを対照群に分けた。さらに,Cobb角を60度以上の群(重度側彎群)と60度未満の群(軽度側彎群)とし,人数をカイ二乗検定により比較した。その後,肺炎を起こした人の肺炎の調査項目について,両側彎群の違いを対応のあるt-testにて検討した。統計学的有意差は5%未満とした。
【結果】
肺炎罹患,35名の平均年齢は35.6±16.9歳で,平均Cobb角は67.5±37.8度であった。対照群20名の平均年齢は39.2±11.2歳で,平均Cobb角は72.7±33.4度であった。身体的評価は,罹患群の平均身長は134.1±20.6cmで,平均体重は25.6±7.9kgであった。対照群の平均身長は135.3±16.8cmで,平均体重は27.1±6.5kgであった。年齢,Cobb角,身長,体重においては差は認められなかった。肺炎を起こさなかったもののうち,重度側彎群は13名,軽度側彎群は7名であり,肺炎罹患群における重度側彎群は22名,軽度側彎群は13名であった。両側彎群の肺炎罹患の有無には有意な差が認められなかった。肺炎罹患群で比較すると,発熱期間,抗生剤の服用期間,白血球値,CRP値には有意な差を認めなかったが,抗生剤の服用期間については側彎群間の差を認め,軽度側彎群では7.0±1.3日,重度側彎群では5.9±1.8日となった(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,重度側彎群では肺炎を起こしやすいという根拠は得られなかった。また,肺炎罹患した対象者において発熱期間や,生理検査項目に差を認めなかった。抗生剤の服用期間については側彎群間の差を認めたことについては,本研究は入院者を対象としているため,均一な環境下での肺炎罹患率を示していると考えられるが,1年間の調査であり,長期間の結果とは異なる可能性があると考えられる。しかし,本研究の結果は,側彎の有無のみでは肺炎のリスクを増加させているとは言えないことを示している。今後,体調に影響を可能性がある様々な状態における交互作用を加味した調査が必要になると考えられた。このことから肺炎に対する予防策として,脊柱側彎症や胸郭変形に対する治療に重きを置くだけでなく,日々のポジショニング(姿勢管理)を徹底し取り組んでいくことが重症ではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
重症児(者)の合併症である,脊柱側湾症と肺炎はともに様々な機能低下を引き起こし,重症化すると生命を脅かすものとなることから,理学療法を行う上でもその予防や対策は非常に需要である。よってこれらの関係性を知ることで,今後予測される合併症に対するリスク管理や理学療法の治療プログラムに反映することができ,重症児(者)の合併症の重症化を防ぐ役割を担うことができるかも知れないと考える。
重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))の合併症として,脊柱側彎変形は非常に多くみられる。重度な脊柱変形は胸郭の変形と関連性が強いとされ,一回換気量の低下や呼吸数の増加などの拘束性換気障害により,呼吸機能の低下につながると考えられている。また,このために呼吸器感染症などの二次障害を併発しやすいとされている。一方で,重症児において呼吸器疾患が重篤な合併症とされ,大半を占める肺炎が死亡原因の一位とされている。したがって,理学療法をする上でもその予防や対策が重要な検討課題となる。しかし拘束性障害を引き起こす要因ともなる脊柱側彎と,肺炎の関係について直接的に検討された報告はあまりない。そこで本研究では,脊柱側彎症と肺炎の関係について検討することを目的とした。
【方法】
当院に入院する重症児(者)56名(男性30名,女性25名,平均年齢36.9±14.9歳(4~66歳),平均身長134.±18.96cm,平均体重26.1±7.3kg,粗大運動能力分類システムレベルV)を対象とした。脊柱側彎変形は全脊柱レントゲン正面画像を用いて,胸腰椎移行部までのCobb角を算出した。肺炎の既往については,2013年度のカルテから調査し,生化学検査およびレントゲン画像撮影をもとに医師が「肺炎」と診断した回数を調べた。また,肺炎の調査項目として発熱期間,抗生剤の服用期間と生理学検査項目の白血球値,CRP値について収集した。発熱期間,抗生剤,白血球値,CRP値については一回の肺炎ごとの平均を算出した。一回でも肺炎を起こしたものを肺炎罹患群,一度も肺炎を起こさなかったものを対照群に分けた。さらに,Cobb角を60度以上の群(重度側彎群)と60度未満の群(軽度側彎群)とし,人数をカイ二乗検定により比較した。その後,肺炎を起こした人の肺炎の調査項目について,両側彎群の違いを対応のあるt-testにて検討した。統計学的有意差は5%未満とした。
【結果】
肺炎罹患,35名の平均年齢は35.6±16.9歳で,平均Cobb角は67.5±37.8度であった。対照群20名の平均年齢は39.2±11.2歳で,平均Cobb角は72.7±33.4度であった。身体的評価は,罹患群の平均身長は134.1±20.6cmで,平均体重は25.6±7.9kgであった。対照群の平均身長は135.3±16.8cmで,平均体重は27.1±6.5kgであった。年齢,Cobb角,身長,体重においては差は認められなかった。肺炎を起こさなかったもののうち,重度側彎群は13名,軽度側彎群は7名であり,肺炎罹患群における重度側彎群は22名,軽度側彎群は13名であった。両側彎群の肺炎罹患の有無には有意な差が認められなかった。肺炎罹患群で比較すると,発熱期間,抗生剤の服用期間,白血球値,CRP値には有意な差を認めなかったが,抗生剤の服用期間については側彎群間の差を認め,軽度側彎群では7.0±1.3日,重度側彎群では5.9±1.8日となった(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,重度側彎群では肺炎を起こしやすいという根拠は得られなかった。また,肺炎罹患した対象者において発熱期間や,生理検査項目に差を認めなかった。抗生剤の服用期間については側彎群間の差を認めたことについては,本研究は入院者を対象としているため,均一な環境下での肺炎罹患率を示していると考えられるが,1年間の調査であり,長期間の結果とは異なる可能性があると考えられる。しかし,本研究の結果は,側彎の有無のみでは肺炎のリスクを増加させているとは言えないことを示している。今後,体調に影響を可能性がある様々な状態における交互作用を加味した調査が必要になると考えられた。このことから肺炎に対する予防策として,脊柱側彎症や胸郭変形に対する治療に重きを置くだけでなく,日々のポジショニング(姿勢管理)を徹底し取り組んでいくことが重症ではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
重症児(者)の合併症である,脊柱側湾症と肺炎はともに様々な機能低下を引き起こし,重症化すると生命を脅かすものとなることから,理学療法を行う上でもその予防や対策は非常に需要である。よってこれらの関係性を知ることで,今後予測される合併症に対するリスク管理や理学療法の治療プログラムに反映することができ,重症児(者)の合併症の重症化を防ぐ役割を担うことができるかも知れないと考える。