[P2-C-0626] ストレッチポールエクササイズが脳性麻痺児の身体機能に及ぼす影響について
Keywords:脳性麻痺児, 腹横筋, ストレッチポール
【はじめに,目的】
Richardsonによると腹横筋は体幹深部筋として腹圧の上昇に関与し,予測的姿勢制御に重要な役割があるとされている。腹横筋エクササイズ(以下EX)には様々な方法があり健常成人や腰痛患者,妊婦でその有効性が検証されている。腹横筋収縮は成人でも難しいとされており,脳性麻痺児を対象とした報告はみられない。一方先行研究によるとストレッチポールは無意識に腹横筋収縮が行える方法として有効であるとされ,腹横筋筋厚増加や姿勢変化などの介入効果が報告されている。そこで今回脳性麻痺児に対して背臥位での体幹運動を行った時期とストレッチポールEXを行った時期の腹横筋筋厚,歩行時間の推移を分析し,脳性麻痺児の身体機能にどのような影響を及ぼすのかを比較し,脳性麻痺児へのストレッチポールEX導入の効果を検討したので報告する。
【方法】
対象は,脳性麻痺児の9歳女児1名。粗大運動能力分類システム(GMFCS)レベルIIIを対象者とした。調査は,体幹運動導入期(以下A期:3週間),ストレッチポールEX導入期(以下B期:9週間)に分けて行った。調査中は個別療法を週1回行い,ホームEXを毎日実施するように促した。A期は体幹屈曲・殿部挙上運動を行い,その課題を紙面の資料として渡し,毎日実施するように指示した。B期は個別療法に加え,先行研究をもとにストレッチポールEX課題(背臥位保持,u・oの発声,上肢挙上)を3種類行い,毎回動作確認を行った。これも課題内容は紙面の資料として渡し,毎日実施するように指示した。また運動頻度を確認するため,セルフモニタリング用の資料を渡し,EXを継続しやすいように工夫した。計測項目は腹横筋筋厚と10m歩行時間の2項目とし,超音波画像装置,ストップウォッチを用いて計測した。腹横筋筋厚計測には超音波画像装置(東芝メディカルシステムズ社製Xario)を用い,その操作に慣れた1名を検者とした。測定肢位は安静背臥位で,安静呼吸で姿勢を保持し,安静呼気終末の腹部超音波画像を左右記録した。測定部位は上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側の1/3点を通る床と平行な直線上で,肋骨下縁と腸骨稜間の中点とした。腹筋層が平行になるまで押した際の画像を記録した。超音波静止画像の腹筋厚は,筋膜の境界線を基準に0.1mm単位で測定し,上下の筋膜が平行となる部位の中央でかつ筋膜の距離が最大となるところを計測した。10m歩行は2回測定し,2回目の測定値を記録した。以上2項目を介入前,3週間後,6週間後,介入後(12週間後)の4回を計測した。
【結果】
腹横筋筋厚は,介入前は3.0mmであり,A期は変化がみられなかったが,B期では6週後3.2mm,9週後3.3mm,介入後3.5mmと増加した。歩行時間は介入前1分00秒88,3週後51秒00,6週後56秒36,6週後56秒36,9週後41秒03,介入後42秒95と変化がみられた。
【考察】
結果より腹横筋筋厚はB期で0.5mm増加がみられた。歩行時間は介入前後を比較し低下がみられた。金子らによると骨盤前傾位では腹横筋の働きが優位に減少すると述べている。脳性麻痺児では筋緊張や筋力低下などの影響で立位・歩行時にはかがみ肢位になりやすく,骨盤は中間位を保ちにくい。ストレッチポールEXの導入により骨盤中間位を保った状態での腹横筋収縮がフィードバックしやすく,姿勢が変化しても同様のことが可能となった。そのため歩行時の骨盤の安定性が高まり,歩容が変化することで歩行時間短縮につながったと推察される。またA期は運動方法が単調であり,児にとって継続した実施が難しく,家族の介助も必要であったが,B期は開始肢位をとることができれば,後は自分で運動を実施できるため,家族への負担が減り,児の自己効力感が高まった。また運動を行う際に,方法の理解が難しい児にとって,発声や上肢挙上などの児にとってわかりやすく実施しやすい課題であったことも積極的にプログラムを継続することができたと要因であった考える。以上のことから脳性麻痺児においてもストレッチポールは,腹横筋収縮が容易に行える方法であり,腹横筋EXの一つとして有効で,導入しやすいホームEXとしても有用であることが推察された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究より,ストレッチポールEXは脳性麻痺児においても負担が少なく施行可能であり,導入しやすいセルフEXとして有用である可能性が推察された。
Richardsonによると腹横筋は体幹深部筋として腹圧の上昇に関与し,予測的姿勢制御に重要な役割があるとされている。腹横筋エクササイズ(以下EX)には様々な方法があり健常成人や腰痛患者,妊婦でその有効性が検証されている。腹横筋収縮は成人でも難しいとされており,脳性麻痺児を対象とした報告はみられない。一方先行研究によるとストレッチポールは無意識に腹横筋収縮が行える方法として有効であるとされ,腹横筋筋厚増加や姿勢変化などの介入効果が報告されている。そこで今回脳性麻痺児に対して背臥位での体幹運動を行った時期とストレッチポールEXを行った時期の腹横筋筋厚,歩行時間の推移を分析し,脳性麻痺児の身体機能にどのような影響を及ぼすのかを比較し,脳性麻痺児へのストレッチポールEX導入の効果を検討したので報告する。
【方法】
対象は,脳性麻痺児の9歳女児1名。粗大運動能力分類システム(GMFCS)レベルIIIを対象者とした。調査は,体幹運動導入期(以下A期:3週間),ストレッチポールEX導入期(以下B期:9週間)に分けて行った。調査中は個別療法を週1回行い,ホームEXを毎日実施するように促した。A期は体幹屈曲・殿部挙上運動を行い,その課題を紙面の資料として渡し,毎日実施するように指示した。B期は個別療法に加え,先行研究をもとにストレッチポールEX課題(背臥位保持,u・oの発声,上肢挙上)を3種類行い,毎回動作確認を行った。これも課題内容は紙面の資料として渡し,毎日実施するように指示した。また運動頻度を確認するため,セルフモニタリング用の資料を渡し,EXを継続しやすいように工夫した。計測項目は腹横筋筋厚と10m歩行時間の2項目とし,超音波画像装置,ストップウォッチを用いて計測した。腹横筋筋厚計測には超音波画像装置(東芝メディカルシステムズ社製Xario)を用い,その操作に慣れた1名を検者とした。測定肢位は安静背臥位で,安静呼吸で姿勢を保持し,安静呼気終末の腹部超音波画像を左右記録した。測定部位は上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側の1/3点を通る床と平行な直線上で,肋骨下縁と腸骨稜間の中点とした。腹筋層が平行になるまで押した際の画像を記録した。超音波静止画像の腹筋厚は,筋膜の境界線を基準に0.1mm単位で測定し,上下の筋膜が平行となる部位の中央でかつ筋膜の距離が最大となるところを計測した。10m歩行は2回測定し,2回目の測定値を記録した。以上2項目を介入前,3週間後,6週間後,介入後(12週間後)の4回を計測した。
【結果】
腹横筋筋厚は,介入前は3.0mmであり,A期は変化がみられなかったが,B期では6週後3.2mm,9週後3.3mm,介入後3.5mmと増加した。歩行時間は介入前1分00秒88,3週後51秒00,6週後56秒36,6週後56秒36,9週後41秒03,介入後42秒95と変化がみられた。
【考察】
結果より腹横筋筋厚はB期で0.5mm増加がみられた。歩行時間は介入前後を比較し低下がみられた。金子らによると骨盤前傾位では腹横筋の働きが優位に減少すると述べている。脳性麻痺児では筋緊張や筋力低下などの影響で立位・歩行時にはかがみ肢位になりやすく,骨盤は中間位を保ちにくい。ストレッチポールEXの導入により骨盤中間位を保った状態での腹横筋収縮がフィードバックしやすく,姿勢が変化しても同様のことが可能となった。そのため歩行時の骨盤の安定性が高まり,歩容が変化することで歩行時間短縮につながったと推察される。またA期は運動方法が単調であり,児にとって継続した実施が難しく,家族の介助も必要であったが,B期は開始肢位をとることができれば,後は自分で運動を実施できるため,家族への負担が減り,児の自己効力感が高まった。また運動を行う際に,方法の理解が難しい児にとって,発声や上肢挙上などの児にとってわかりやすく実施しやすい課題であったことも積極的にプログラムを継続することができたと要因であった考える。以上のことから脳性麻痺児においてもストレッチポールは,腹横筋収縮が容易に行える方法であり,腹横筋EXの一つとして有効で,導入しやすいホームEXとしても有用であることが推察された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究より,ストレッチポールEXは脳性麻痺児においても負担が少なく施行可能であり,導入しやすいセルフEXとして有用である可能性が推察された。