[P2-C-0638] 外反扁平に対する下肢装具Jump Start Leap Frogの効果
Keywords:扁平足, 短下肢装具, CASCADE dafo
【はじめに,目的】
従来の下肢装具は足関節の動きを制限・固定し,支持性を高めることで歩行補助用具として用いられている。しかし,歩行とはあらゆる関節が複雑に複合した一連の運動であり,単純なものではない。そのため装具の選定には固定のみでなく柔軟性が求められ,関節の動きを制限し過ぎない装具が理想であり,それが円滑な歩行の獲得につながっていくものと考えている。
今回紹介する下肢装具Jump Start Leap Frog(以下JSLF;CASCADE dafo社製)はそれらを持ち合わせており,様々な歩行特性に対応可能な装具とされている。
JSLFは1985年よりアメリカで製作されている装具である。基礎となる製作理論は,Nancy Hylton(PT/LO)によって提唱され,Dynamic Ankle Foot Orthosisに基づき製作されたDAFO4がベースとなっている。そのコンセプトは,如何に薄く柔らかい素材で,患者の負担にならず,しかも確実に保持が出来るかということである。現在,世界17か国で使用されており,特に欧米では小児領域において非常にポピュラーな装具として使用されている。
そこで我々は重度の外反扁平を呈する患児に対してJSLFを使用し,良好な結果を得ることができたので報告する。
【方法】
3名の被験者を対象とし,JSLF装着の有無におけるレントゲン写真からTPF角(talar-plantar flexion Angle)を測定し,比較した。
【結果】
症例1は基礎疾患24トリゾミーがある3歳女児である。全身的に低緊張で関節弛緩があり,立位荷重時に著明な外反扁平を呈し,母趾は過度の外反母趾を呈している。裸足での歩行は不安定であり,これまで採型したインソールを挿入した加工した靴を履くことで安定した歩行ができている。しかし,さらなる身体機能の改善と室内歩行における実用性の向上を目的に,今回JSLFを使用した。レントゲン画像は,これまで使用しているインソールと靴を履いた状態とJSLFと靴を履いた状態で比較した。結果TPF角は右側で40度から30度となり,左側も42度から34度となり,両側ともに改善がみられた。
症例2は外傷後に筋力低下がみられ左外反扁平足を呈した8歳女児である。下肢MMTは膝関節・足関節3+で立位は可能であり,歩行器歩行を行っている。裸足時とJSLF装着時のレントゲン画像を比較した。結果左TPF角は51度から30度と改善がみられた。
症例3は特に基礎疾患はないものの,重度の左外反扁平足を呈している独歩可能な5歳女児である。筋力低下等は確認できないが,関節弛緩が非常に強い状態である。インソールタイプでの保持は困難との医師の判断によりJSLFを使用した。症例2と同様に,裸足時とJSLF装着時のレントゲン画像を比較した。結果TPF角は左側52度から30度となり改善がみられた。
【考察】
今回の3症例は基礎疾患はそれぞれ異なるものの,関節弛緩によって立位荷重時,歩行時に不安定さを生じており,JSLFを使用したことでインソールでは改善できなかった重度の外反扁平足に対する効果が示唆された。JSLFは支持部に特殊な素材を用いており,非常に柔らかく,しかも支持性が強い材料を使用しており,足部全体を覆うことが可能である。そのため,踵骨部,中足骨部,前足部を含む足部全体の保持力が高まったものと考えられる。また支持部は2層構造であることから踵骨部の安定性を高め,TPF角の改善に影響したのではないかと推察する。装具の特徴から,足部の底屈・背屈運動が制限されないことや装具自体を足部に固定して使用することができる。このことにより,室内・外を問わず使用することができ,常に良好なアライメント状態を保つことが可能となる。さらには,支持部の特性の効果によって舟状骨部の傷など装具装着による弊害もなく,患児のコンプライアンスも非常に良好であり,日常生活での姿勢や運動に関与するとともに良好な予後に繋がるものと期待できる。
JSLFには患児の歩容状態(低・過緊張姿勢,立脚期での膝関節の過伸展,遊脚期での足関節の過剰な底屈・背屈など)やその程度(軽度・中等度・重度)を判断して,装具の種類を選択できるガイドがあり,それに沿って装具の選択が可能である。理学療法士による歩行評価を加え,医師,義肢装具士,患児とその保護者との連携によって必要に応じた適切な装具を提供することができる。JSLFを有効活用することで理学療法の幅も広がり,機能面のみならず能力面においてもさらなる向上を図ることができるものと考えられる。
今後症例を増やし,他のタイプの装具との比較も行いJSLFの効果について検討を重ねていきたい。
従来の下肢装具は足関節の動きを制限・固定し,支持性を高めることで歩行補助用具として用いられている。しかし,歩行とはあらゆる関節が複雑に複合した一連の運動であり,単純なものではない。そのため装具の選定には固定のみでなく柔軟性が求められ,関節の動きを制限し過ぎない装具が理想であり,それが円滑な歩行の獲得につながっていくものと考えている。
今回紹介する下肢装具Jump Start Leap Frog(以下JSLF;CASCADE dafo社製)はそれらを持ち合わせており,様々な歩行特性に対応可能な装具とされている。
JSLFは1985年よりアメリカで製作されている装具である。基礎となる製作理論は,Nancy Hylton(PT/LO)によって提唱され,Dynamic Ankle Foot Orthosisに基づき製作されたDAFO4がベースとなっている。そのコンセプトは,如何に薄く柔らかい素材で,患者の負担にならず,しかも確実に保持が出来るかということである。現在,世界17か国で使用されており,特に欧米では小児領域において非常にポピュラーな装具として使用されている。
そこで我々は重度の外反扁平を呈する患児に対してJSLFを使用し,良好な結果を得ることができたので報告する。
【方法】
3名の被験者を対象とし,JSLF装着の有無におけるレントゲン写真からTPF角(talar-plantar flexion Angle)を測定し,比較した。
【結果】
症例1は基礎疾患24トリゾミーがある3歳女児である。全身的に低緊張で関節弛緩があり,立位荷重時に著明な外反扁平を呈し,母趾は過度の外反母趾を呈している。裸足での歩行は不安定であり,これまで採型したインソールを挿入した加工した靴を履くことで安定した歩行ができている。しかし,さらなる身体機能の改善と室内歩行における実用性の向上を目的に,今回JSLFを使用した。レントゲン画像は,これまで使用しているインソールと靴を履いた状態とJSLFと靴を履いた状態で比較した。結果TPF角は右側で40度から30度となり,左側も42度から34度となり,両側ともに改善がみられた。
症例2は外傷後に筋力低下がみられ左外反扁平足を呈した8歳女児である。下肢MMTは膝関節・足関節3+で立位は可能であり,歩行器歩行を行っている。裸足時とJSLF装着時のレントゲン画像を比較した。結果左TPF角は51度から30度と改善がみられた。
症例3は特に基礎疾患はないものの,重度の左外反扁平足を呈している独歩可能な5歳女児である。筋力低下等は確認できないが,関節弛緩が非常に強い状態である。インソールタイプでの保持は困難との医師の判断によりJSLFを使用した。症例2と同様に,裸足時とJSLF装着時のレントゲン画像を比較した。結果TPF角は左側52度から30度となり改善がみられた。
【考察】
今回の3症例は基礎疾患はそれぞれ異なるものの,関節弛緩によって立位荷重時,歩行時に不安定さを生じており,JSLFを使用したことでインソールでは改善できなかった重度の外反扁平足に対する効果が示唆された。JSLFは支持部に特殊な素材を用いており,非常に柔らかく,しかも支持性が強い材料を使用しており,足部全体を覆うことが可能である。そのため,踵骨部,中足骨部,前足部を含む足部全体の保持力が高まったものと考えられる。また支持部は2層構造であることから踵骨部の安定性を高め,TPF角の改善に影響したのではないかと推察する。装具の特徴から,足部の底屈・背屈運動が制限されないことや装具自体を足部に固定して使用することができる。このことにより,室内・外を問わず使用することができ,常に良好なアライメント状態を保つことが可能となる。さらには,支持部の特性の効果によって舟状骨部の傷など装具装着による弊害もなく,患児のコンプライアンスも非常に良好であり,日常生活での姿勢や運動に関与するとともに良好な予後に繋がるものと期待できる。
JSLFには患児の歩容状態(低・過緊張姿勢,立脚期での膝関節の過伸展,遊脚期での足関節の過剰な底屈・背屈など)やその程度(軽度・中等度・重度)を判断して,装具の種類を選択できるガイドがあり,それに沿って装具の選択が可能である。理学療法士による歩行評価を加え,医師,義肢装具士,患児とその保護者との連携によって必要に応じた適切な装具を提供することができる。JSLFを有効活用することで理学療法の幅も広がり,機能面のみならず能力面においてもさらなる向上を図ることができるものと考えられる。
今後症例を増やし,他のタイプの装具との比較も行いJSLFの効果について検討を重ねていきたい。