第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0744] 当院心臓リハビリテーション患者の運動耐容能に影響を与える因子の検討

上村幸子, 末松直子 (独立行政法人労働者健康福祉機構九州労災病院門司メディカルセンター)

キーワード:心疾患, 運動耐容能, 30秒椅子立ち上がりテスト

【はじめに,目的】
心疾患患者の心肺運動負荷試験(以下,CPX)から得られる最高酸素摂取量(以下,peakO2)は生命予後と関連し,嫌気性代謝閾値(以下,AT)は運動処方をする際の指標となる。また,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS30)は転倒予測のカットオフ値として用いられ,心疾患患者における歩行自立度判定にも有効であるとの報告がある。しかしながら,心疾患患者へのCPXは臨床場面において頻用されているものの,その報告は少なく身体機能との関連については明らかではない。
そこで,本研究の目的は,当院心疾患患者の運動耐容能に影響を与える要因を明らかにし,下肢機能や身体所見との関連性を検討することである。
【方法】
対象は当院心臓リハビリテーション(以下,心リハ)を実施し,CPXを行った患者29例(平均年齢73.9±5.5歳,男性14名女性15名)とし,疾患の内訳は,心不全・心筋梗塞・狭心症・閉塞性動脈硬化症である。CPXより,AT,peakO2を測定した。また,下肢筋力の評価としてCS30,バランス評価として開眼片脚立位時間,歩行耐久性の評価として,連続歩行距離を計測した。また,左室駆出率(LVEF),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)など心機能検査・血液データに関しては,カルテより後方視的に調査した。
統計学的解析方法は,各評価項目の関連性をピアソンの相関係数を用いて検討した。対象者を予後指標のカットオフ値であるpeakO2 14ml/kg/minで2群にわけ,14ml/kg/min未満17名をA群と,14ml/kg/min以上12名をB群とし,対応のないt検定を用いて比較検討した。また,Receiver Operating Characteristic(以下,ROC)曲線よりカットオフ値を算出した。いずれの検定において危険率5%未満を有意差判定の基準とした。
【結果】
peakO2とCS30(r=0.50),片脚立位保持時間(r=0.51),連続歩行距離(r=0.48)ATO2(r=0.55)において有意な正の相関関係が,VEvsO2slope(r=-0.45)において有意な負の相関が認められた。両群間の比較では,CS30と連続歩行距離に有意差が認められ,CS30がA群では11.6±4.2回B群15.7±4.2回で,B群が有意に高値を示し,連続歩行においてはA群342.3±80.7mB群521±59mとB群が有意に高値を示した。また,ROC曲線より,CS3012.5回,連続歩行距離365mとカットオフ値が算出された。
【考察】
心疾患患者の運動耐容能と身体機能の関係を明らかにすることを目的にCPXの結果と,心機能検査・血液データ,下肢筋力,バランス,歩行耐久性の評価を用い比較した。peakO2と下肢機能,バランス,歩行耐久性と有意な相関関係を認めた。また,予後指標のカットオフ値であるpeakO2 14ml/kg/minで2群に分け比較検討を行った。CS30と連続歩行距離において2群間に有意な差を認めた。運動耐容能は下肢筋力・歩行耐久性との関連が明らかとなった。このことは,CPX値より下肢機能,連続歩行距離に影響を及ぼすことが示唆され,下肢機能や歩行耐久性の予測可能なことが明らかとなった。さらに,カットオフ値がCS3012.5回,連続歩行距離365mと算出されたことより,CS30が13回以上,連続歩行距離が365m以上の症例は,peakO2 14ml/kg/min以上であると判断され,予後良好ということが示唆された。このことは,低ADLや低活動患者においてCPXが実施できない場合でも,CS30や連続歩行距離などを用い,予後予測の推定ができる可能性が考えられる。
今回は患者のQOLの評価など詳細な項目の検討を行っておらず,今後そのような多角的な評価も参考に検討を行う必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
心疾患患者の運動耐容能と下肢機能,歩行耐久性との関連を明らかにした。CPXを実施できない場合も,臨床的数値として示され,予後予測が可能となり,理学療法学研究において,有益な情報となることが示唆された。