[P3-A-0840] 感覚情報記述が運動学習の為の記憶保持に有効であった一症例
キーワード:感覚情報, ウエクスラー記憶検査, 運動学習
【目的】
ワーキングメモリ(以下WM)は,短期的に保持した情報を操作する情報処理機能といわれる。AngueraらはWMが良好なほど初期の運動学習は高いと述べている。今回,短期的な情報の保持が困難な右人工膝関節全置換術を施行した症例に対し,記憶に残る刺激を選択することで運動学習が行えた為,報告する。
【症例提示】
70代女性,HDS-Rは24点,右膝関節可動域は-10°~100°。MMTは右股・膝関節周囲筋3。右下肢の表在・深部覚は正常。術後10日から歩行開始し,その2週間後に担当。歩行観察は右膝関節屈伸運動や立脚後期の蹴り出しが乏しく,杖で過剰支持していた。言語指示で修正が困難な為ビデオ撮影し注意点を説明すると即時効果は得られたが,翌日には注意点を忘れており歩容は戻る。そこでウエクスラー記憶検査(以下WMS-R)を測定し,どのような刺激が記憶に残るか確認した。指標は言語性記憶76点,視覚性記憶80点,一般記憶76点,注意・集中力109点,遅延再生71点。下位検査のパーセンタイルは逆唱は9,論理的記憶は11と低く,視覚性記憶範囲は87,視覚性再生は22と他の項目よりも高かった。
【経過と考察】
WMS-Rの結果,視覚刺激に対して記憶保持が良好であった為ノートを活用した。内容は修正した動作時に感じた感覚を記述した。記述内容を確認し感覚を想起する課題を設定。2日後,筋力・可動域・感覚に変化ないが,感覚情報を基に歩行時のポイントや注意点が想起可能となり歩容も改善した。本症例は記憶保持が困難な為,WMも低下し運動学習も困難であったと考えられた。AngueraらはWMを高める訓練を行っても運動学習に影響が認めなかったと述べており,WM課題を実施せず記憶に残る刺激を選択した事で情報の保持が可能となり歩容が改善したと考える。久保田らは学習の初期段階には,感覚情報に注意を向ける必要があると述べており感覚情報を記述し注意した事で運動学習が行えたと考えられる。
ワーキングメモリ(以下WM)は,短期的に保持した情報を操作する情報処理機能といわれる。AngueraらはWMが良好なほど初期の運動学習は高いと述べている。今回,短期的な情報の保持が困難な右人工膝関節全置換術を施行した症例に対し,記憶に残る刺激を選択することで運動学習が行えた為,報告する。
【症例提示】
70代女性,HDS-Rは24点,右膝関節可動域は-10°~100°。MMTは右股・膝関節周囲筋3。右下肢の表在・深部覚は正常。術後10日から歩行開始し,その2週間後に担当。歩行観察は右膝関節屈伸運動や立脚後期の蹴り出しが乏しく,杖で過剰支持していた。言語指示で修正が困難な為ビデオ撮影し注意点を説明すると即時効果は得られたが,翌日には注意点を忘れており歩容は戻る。そこでウエクスラー記憶検査(以下WMS-R)を測定し,どのような刺激が記憶に残るか確認した。指標は言語性記憶76点,視覚性記憶80点,一般記憶76点,注意・集中力109点,遅延再生71点。下位検査のパーセンタイルは逆唱は9,論理的記憶は11と低く,視覚性記憶範囲は87,視覚性再生は22と他の項目よりも高かった。
【経過と考察】
WMS-Rの結果,視覚刺激に対して記憶保持が良好であった為ノートを活用した。内容は修正した動作時に感じた感覚を記述した。記述内容を確認し感覚を想起する課題を設定。2日後,筋力・可動域・感覚に変化ないが,感覚情報を基に歩行時のポイントや注意点が想起可能となり歩容も改善した。本症例は記憶保持が困難な為,WMも低下し運動学習も困難であったと考えられた。AngueraらはWMを高める訓練を行っても運動学習に影響が認めなかったと述べており,WM課題を実施せず記憶に残る刺激を選択した事で情報の保持が可能となり歩容が改善したと考える。久保田らは学習の初期段階には,感覚情報に注意を向ける必要があると述べており感覚情報を記述し注意した事で運動学習が行えたと考えられる。