第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

体幹1

Sun. Jun 7, 2015 9:40 AM - 10:40 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0947] 妊婦への理学療法介入による腰痛変化と満足度調査

杉本結実子1, 小川陽子1,2, 江川千秋1, 大和田沙和1, 矢崎高明1 (1.東京北医療センター, 2.文京学院大学)

Keywords:妊娠, 腰痛, 患者満足度

【はじめに,目的】
女性は妊娠により様々な身体変化を生じ,近年周産期の理学療法介入が注目されている。その中でも腰痛は妊婦の約半数に発生していると言われている。しかし,妊婦への理学療法介入には保険制度の影響や危険を伴うこともあり一般病院では対応していない施設が多い。そのためか妊婦の理学療法に対する報告は少なく,その中でも満足度に関する報告は少ない。
そこで今回,腰痛を呈し理学療法の介入をした妊婦へアンケートを実施し,理学療法への満足度を調査した。同時に各自ホームエクササイズ(以下ホームEx)を継続し,その後の疼痛変化やその満足度も合わせて調査した。
【方法】
対象は腰痛を呈し理学療法を受けた妊婦25名(年齢33.7±4.7歳 身長158.6±4.3cm 体重55.6±6.7kg BMI22.1±2.6kg/m2 妊娠周期22.6±5.4週)とした。対象者には,介入前に既往歴や痛みの状態を問診票で確認した後,理学療法を約30分実施した。介入は主に,腹横筋の動きを視覚的に確認しながら腹式呼吸を学習することと,その呼吸に合わせてストレッチポールや上下肢外転等の複合運動(布施らの先行研究で疼痛緩和や姿勢の変化の有用性について立証)を対象者の状態に合わせて行い自宅でも行えるよう指導した。評価項目は1)介入前後での痛みの変化(NRS)2)介入に対する満足度(大変良いから大変悪いまでの5段階)3)妊婦への理学療法介入の必要性の有無である。
継続フォローが可能であった12名を継続群とし,ホームExを継続してもらい,一定の期間の後に再度介入,評価を行った。評価項目は,4)介入前後での痛みの変化(NRS),5)ホームExの難易度(易しいから難しいまでの3段階),6)前回と比べた体調変化(大変調子がいいから大変不調であるまでの5段階)である。
統計的処理は,理学療法実施前後の痛みの変化に関して対応のあるt検定を実施し有意水準5%未満で検討した。継続群ではNRSの初回介入前を[介入前],介入後を[介入後],継続時介入前を[2回目前],介入後を[2回目後]とし,その痛みの変化に対してFriedman検定の後Tukeyの方法にて多重比較を実施し有意水準5%未満で検討した。
【結果】
1)理学療法介入でNRSは有意に減少した(p<0.0001)。2)理学療法介入について67%が大変良かった,33%が良かったと回答し,普通から大変悪かったとの回答はなかった。3)全ての被験者より妊婦への理学療法介入は必要で有るとの回答を得た。4)継続群の痛みの変化は[介入前]と[介入後]間では有意に低下し(p<0.05),[介入前],[2回目前]と[2回目後]間ではそれぞれ有意に低下した(p<0.01)。[介入後]と[2回目前]間では差を認めなかった。5)ホームExの難易度について58%が易しかった,42%が普通だったと回答し,難しかったとの回答は無かった。6)体調変化について,17%が大変調子が良い,58%が調子が良い,17%が変わらない,8%が不調であると回答した。
【考察】
妊娠期はホルモン変化や子宮の増大に伴い,経過とともに腰痛が増悪しやすいと言われている。本研究では腰痛を呈する妊婦での理学療法介入では疼痛の緩和を認め,高い満足度を得ることができた。また,対象者の4分の3は調子が良いとの回答であった。これは,腹横筋アプローチの即時的な効果と共に,ホームExを継続することで良好な状態を維持することができたのではないかと考える。今回,約6割の対象者はホームExが容易であったという回答をであった。これより,腹横筋アプローチは自宅でも行いやすいものであり,良好な状態で過ごすことができたと考えられる。一方で,体調変化については変わらない,不調であるとの回答が4分の1を占めた。今後は,痛みのみの結果だけではなく機能面や客観的指標より腹横筋アプローチの効果について検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
現在国内では,ウィメンズヘルスに対する理学療法の関わりは少ない。今回の結果より,周産期に生じる腰痛に対しての理学療法士の介入による有用性を示唆し,疼痛予防という側面からも妊婦へのIADL維持に寄与することができると考えられる。