[P3-A-0997] 人工膝関節置換術患者の術後早期の歩行速度に影響する身体機能の検討
キーワード:5m最大歩行速度, 膝伸展筋力, 股関節伸展ROM
【はじめに,目的】
近年の医療情勢において医療費削減は重要な課題である。医療費削減のための一つとして在院日数の短縮が必要であり,理学療法でも術後早期の介入が重要とされている。また,人工膝関節置換術後早期の理学療法に関しては諸家の報告などによって有用性が報告されており,術後早期からの効果的な理学療法介入が必要である。術後早期の目標の一つとして歩行機能改善が挙げられる。歩行評価指標の一つとしては最大歩行速度があり,術後早期より歩行速度を高めることによって歩行機能改善がみられるのではないかと考えられる。本研究は,術後早期の歩行速度に影響する身体機能について検討することを目的とした。
【方法】
2013年7月~2014年9月までに,多施設共同研究への参加協力が得られた全国6施設において,人工膝関節全置換術(TKA)および単顆関節置換術(UKA)の適用になった患者174名を対象とした。そのうち,術後2週に杖歩行が可能であり,身体機能検査が計測可能であった92名(男性13名,女性79名),平均年齢76歳を本研究の分析対象とした。研究デザインは横断研究であり,術後2週の測定項目は,身体機能として術側・非術側筋力(膝伸展筋力・膝屈曲筋力),術側・非術側関節可動域(股伸展ROM・膝伸展ROM・膝屈曲ROM),疼痛(NRS),運動機能として5m最大歩行速度とした。また交絡因子として年齢,BMI,性別,術式を調査した。データ解析は階層的重回帰分析を用い,従属変数に対して回帰モデルを作成し,変数選択はステップワイズ法により行った。従属変数である術後2週の5m最大歩行速度に影響を与える因子を検討するために独立変数を術後2週の身体機能として重回帰分析を行った。事前に単変量解析にてスクリーニングを行い,従属変数との関係がp<0.25であった説明変数を投入した。また,抽出された変数に対して交絡因子を分析モデルに強制投入し調整を行った。統計ソフトはIBM SPSS Statistics 22を使用し,有意水準は両側5%とした。
【結果】
単変量解析によって抽出された説明変数は,術側膝伸展筋力,術側膝伸展筋力,術側股伸展ROMであった。重回帰分析の結果(p=0.021,R=0.480,R2=0.230),術後2週の5m最大歩行速度に影響を与える因子は術側股伸展ROM(p=0.021,β=0.224),術側膝伸展筋力(p=0.003,β=0.291)術側膝伸展筋力(p=0.032,β=0.214)であった。さらに,交絡因子投入後の重回帰分析の結果(p=0.001,R=0.531,R2=0.282)においても,術側膝伸展筋力(p=0.006,β=0.302)と術側股伸展ROM(p=0.017,β=0.231)が抽出され,交絡因子では年齢(p=0.006,β=-0.278)が抽出された。
【考察】
術後2週の5m最大歩行速度が速い患者では術後2週の術側股関節伸展ROM制限が少なく,術側膝伸展筋力が高い特徴があることが示唆された。これらの変数は交絡因子の要因からも独立して術後2週の5m最大歩行速度に関連することが示唆された。術後早期の歩行機能改善に向けての理学療法として身体機能を考慮することは重要であり,特に術側膝伸展筋力や術側股伸展ROMに対して理学療法を行うことで効果的な介入ができるのではないかと考えられる。本研究の限界として,隣接関節である足関節可動域測定を実施していないことが挙げられる。今後の課題として術前後の変化,術後の経時的変化を調査することが挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,人工膝関節置換術患者の術後2週の5m最大歩行速度改善を検討するうえでの一助になると考える。人工膝関節置換術後早期の最大歩行速度改善目的の理学療法に関しては術側膝伸展筋力,術側股関節伸展ROMに着目する必要性が示唆された。
近年の医療情勢において医療費削減は重要な課題である。医療費削減のための一つとして在院日数の短縮が必要であり,理学療法でも術後早期の介入が重要とされている。また,人工膝関節置換術後早期の理学療法に関しては諸家の報告などによって有用性が報告されており,術後早期からの効果的な理学療法介入が必要である。術後早期の目標の一つとして歩行機能改善が挙げられる。歩行評価指標の一つとしては最大歩行速度があり,術後早期より歩行速度を高めることによって歩行機能改善がみられるのではないかと考えられる。本研究は,術後早期の歩行速度に影響する身体機能について検討することを目的とした。
【方法】
2013年7月~2014年9月までに,多施設共同研究への参加協力が得られた全国6施設において,人工膝関節全置換術(TKA)および単顆関節置換術(UKA)の適用になった患者174名を対象とした。そのうち,術後2週に杖歩行が可能であり,身体機能検査が計測可能であった92名(男性13名,女性79名),平均年齢76歳を本研究の分析対象とした。研究デザインは横断研究であり,術後2週の測定項目は,身体機能として術側・非術側筋力(膝伸展筋力・膝屈曲筋力),術側・非術側関節可動域(股伸展ROM・膝伸展ROM・膝屈曲ROM),疼痛(NRS),運動機能として5m最大歩行速度とした。また交絡因子として年齢,BMI,性別,術式を調査した。データ解析は階層的重回帰分析を用い,従属変数に対して回帰モデルを作成し,変数選択はステップワイズ法により行った。従属変数である術後2週の5m最大歩行速度に影響を与える因子を検討するために独立変数を術後2週の身体機能として重回帰分析を行った。事前に単変量解析にてスクリーニングを行い,従属変数との関係がp<0.25であった説明変数を投入した。また,抽出された変数に対して交絡因子を分析モデルに強制投入し調整を行った。統計ソフトはIBM SPSS Statistics 22を使用し,有意水準は両側5%とした。
【結果】
単変量解析によって抽出された説明変数は,術側膝伸展筋力,術側膝伸展筋力,術側股伸展ROMであった。重回帰分析の結果(p=0.021,R=0.480,R2=0.230),術後2週の5m最大歩行速度に影響を与える因子は術側股伸展ROM(p=0.021,β=0.224),術側膝伸展筋力(p=0.003,β=0.291)術側膝伸展筋力(p=0.032,β=0.214)であった。さらに,交絡因子投入後の重回帰分析の結果(p=0.001,R=0.531,R2=0.282)においても,術側膝伸展筋力(p=0.006,β=0.302)と術側股伸展ROM(p=0.017,β=0.231)が抽出され,交絡因子では年齢(p=0.006,β=-0.278)が抽出された。
【考察】
術後2週の5m最大歩行速度が速い患者では術後2週の術側股関節伸展ROM制限が少なく,術側膝伸展筋力が高い特徴があることが示唆された。これらの変数は交絡因子の要因からも独立して術後2週の5m最大歩行速度に関連することが示唆された。術後早期の歩行機能改善に向けての理学療法として身体機能を考慮することは重要であり,特に術側膝伸展筋力や術側股伸展ROMに対して理学療法を行うことで効果的な介入ができるのではないかと考えられる。本研究の限界として,隣接関節である足関節可動域測定を実施していないことが挙げられる。今後の課題として術前後の変化,術後の経時的変化を調査することが挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,人工膝関節置換術患者の術後2週の5m最大歩行速度改善を検討するうえでの一助になると考える。人工膝関節置換術後早期の最大歩行速度改善目的の理学療法に関しては術側膝伸展筋力,術側股関節伸展ROMに着目する必要性が示唆された。