[P3-A-1009] 第3次救急病院における早期退院前訪問指導は大腿骨頸部/転子部骨折症例の術後在院日数・在宅復帰率に影響するか
Keywords:大腿骨頸部/転子部骨折, 退院前訪問指導, 在宅復帰率
【はじめに,目的】
高齢者に多い疾患の1つである大腿骨頸部/転子部骨折は,高齢化に伴い発生数の増加が予想されている。医療経済学的側面より急性期病院において在院日数の短縮が求められている。当疾患の多くは虚弱高齢者であり,在宅復帰にはリハビリテーション(リハ)による機能改善と,住環境や社会資源活用などの環境因子へのアプローチが不可欠である。当院では,早期退院計画の一環として2013年11月より術前・術後早期に退院前訪問指導を実施している。本研究の目的は,退院前訪問指導実施による早期退院計画が急性期病院での術後在院日数や在宅復帰率に影響したかを検討することである。
【方法】
研究デザインは後ろ向きコホート研究。対象は2012年11月から2014年10月末までに当院入院の65歳以上大腿骨頸部/転子部骨折手術症例。除外基準は院内死亡例,術後免荷例,受傷前施設入所例,併存疾患/合併症による転科例,多発外傷例,他院からの周術期管理目的例とし,2012年11月~2013年10月末までをA群,早期退院前訪問指導を開始した2013年11月~2014年10末までをB群に群分けした。各群のベースラインとして,年齢,性別,障害高齢者の日常生活自立度判定基準,要介護度,認知症の有無,同居人の有無,骨折型,術式,術前待機日数,リハ総単位数/在院日数,術後離床開始日数,退院時FIM,訪問実施率,術日からの訪問実施日数を評価した。メインアウトカムを術後在院日数,在宅復帰率として群間比較を実施。各評価項目は電子カルテより収集した。統計解析は,両群間で各評価項目における平均値の比較をt検定,χ2検定を用いて解析した。統計的有意水準はα=0.05とし,統計ソフトはSPSSを用いた。
【結果】
電子カルテより抽出された対象症例数は185例。66例は除外基準に該当し,最終的にA群69例,B群50例に群分けされた。B群の訪問実施率は62%,術日からの訪問実施日数は5.92±5.42日であった。両群のベースラインは,リハ総単位数/在院日数はA群3.36±1.07日,B群3.9±1.06日で有意な差を認めたが,他項目では有意な差は認めなかった。術後在院日数はA群20.78±11.58日,B群21.83±9.52日で有意な差を認めず,在宅復帰率はA群13%,B群46%で有意な差を認めた。
【考察】
リハ総単位/在院日数において有意な差を認めたが,退院時FIMにおいて差がなかったことより,両群間ではリハ実施状況の違いがADL改善に影響はしなかったと考える。術前・術後早期の退院前訪問指導により,環境を考慮した具体的なリハゴールの設定と早期の環境調整が可能になったことが在宅復帰率改善の要因として挙げられる。実施者の主観ではあるが,早期に自宅訪問することにより患者家族と医療者側の早期在宅復帰へ向けた意識の共有ができたことも実感された。本邦における当疾患の多くは回復期病院を経由し自宅復帰される。術後在院日数に変化はなかったが,急性期病院での在宅復帰率を高めることにより,自宅退院までに要する在院日数は短縮されたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,急性期病院での退院前訪問指導実施による早期退院計画は在宅復帰率の改善,それに付随する在院日数短縮に寄与する可能性が示唆された。
高齢者に多い疾患の1つである大腿骨頸部/転子部骨折は,高齢化に伴い発生数の増加が予想されている。医療経済学的側面より急性期病院において在院日数の短縮が求められている。当疾患の多くは虚弱高齢者であり,在宅復帰にはリハビリテーション(リハ)による機能改善と,住環境や社会資源活用などの環境因子へのアプローチが不可欠である。当院では,早期退院計画の一環として2013年11月より術前・術後早期に退院前訪問指導を実施している。本研究の目的は,退院前訪問指導実施による早期退院計画が急性期病院での術後在院日数や在宅復帰率に影響したかを検討することである。
【方法】
研究デザインは後ろ向きコホート研究。対象は2012年11月から2014年10月末までに当院入院の65歳以上大腿骨頸部/転子部骨折手術症例。除外基準は院内死亡例,術後免荷例,受傷前施設入所例,併存疾患/合併症による転科例,多発外傷例,他院からの周術期管理目的例とし,2012年11月~2013年10月末までをA群,早期退院前訪問指導を開始した2013年11月~2014年10末までをB群に群分けした。各群のベースラインとして,年齢,性別,障害高齢者の日常生活自立度判定基準,要介護度,認知症の有無,同居人の有無,骨折型,術式,術前待機日数,リハ総単位数/在院日数,術後離床開始日数,退院時FIM,訪問実施率,術日からの訪問実施日数を評価した。メインアウトカムを術後在院日数,在宅復帰率として群間比較を実施。各評価項目は電子カルテより収集した。統計解析は,両群間で各評価項目における平均値の比較をt検定,χ2検定を用いて解析した。統計的有意水準はα=0.05とし,統計ソフトはSPSSを用いた。
【結果】
電子カルテより抽出された対象症例数は185例。66例は除外基準に該当し,最終的にA群69例,B群50例に群分けされた。B群の訪問実施率は62%,術日からの訪問実施日数は5.92±5.42日であった。両群のベースラインは,リハ総単位数/在院日数はA群3.36±1.07日,B群3.9±1.06日で有意な差を認めたが,他項目では有意な差は認めなかった。術後在院日数はA群20.78±11.58日,B群21.83±9.52日で有意な差を認めず,在宅復帰率はA群13%,B群46%で有意な差を認めた。
【考察】
リハ総単位/在院日数において有意な差を認めたが,退院時FIMにおいて差がなかったことより,両群間ではリハ実施状況の違いがADL改善に影響はしなかったと考える。術前・術後早期の退院前訪問指導により,環境を考慮した具体的なリハゴールの設定と早期の環境調整が可能になったことが在宅復帰率改善の要因として挙げられる。実施者の主観ではあるが,早期に自宅訪問することにより患者家族と医療者側の早期在宅復帰へ向けた意識の共有ができたことも実感された。本邦における当疾患の多くは回復期病院を経由し自宅復帰される。術後在院日数に変化はなかったが,急性期病院での在宅復帰率を高めることにより,自宅退院までに要する在院日数は短縮されたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,急性期病院での退院前訪問指導実施による早期退院計画は在宅復帰率の改善,それに付随する在院日数短縮に寄与する可能性が示唆された。