第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

大腿骨頚部骨折

Sun. Jun 7, 2015 9:40 AM - 10:40 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-1006] 当院における大腿骨頚部骨折患者に対する地域連携パスの効果と課題

内田佑樹, 田辺篤志, 髙橋昭宏, 水本梓, 青谷亮輔, 荒井美玖, 柴田健治 (大津赤十字病院リハビリテーション科)

Keywords:大腿骨頚部骨折, 地域連携パス, 入院日数

【はじめに,目的】
大腿骨頚部骨折地域連携クリティカルパス(以下,地域連携パス)の目的は「医療機能の分化・連携の推進による切れ目のない医療の提供」「効率的で質の高い医療の提供に繋げる」と述べられている。当院では病院内に回復期リハビリテーション病棟を有しているが平成22年4月より地域連携パスも導入した。今回は地域連携パス導入後の当院での変化,連携先医療機関の結果の検討を行ったので報告する。
【方法】
当院での地域連携パス導入前大腿骨頚部骨折群395症例(平成20年4月~平成22年3月 平均年齢79.8±11.8歳)と地域連携パス導入後大腿骨頚部骨折群742症例(平成22年4月~平成26年9月 平均年齢81.1±11.5歳)を導入前後で比較検討した(①)。また連携先医療機関との結果の検討には,平成25年4月~平成26年9月に大腿骨頚部骨折を受傷し,当院回復期リハビリテーション病棟から自宅退院した群80症例(平均年齢77.7±13.3歳)と地域連携パスで転院し,地域連携パス検証シートが確認され,かつ入退院を繰り返すことが無かった群90症例(平均年齢82.6±9.01歳)を一般病床(A),回復期リハビリテーション病床(B),療養型病床(C)の3群に分類し比較検討した。まず当院から自宅退院群と転院群2群の年齢,開始FIMを比較した。T検定を行い有意水準5%未満とした(②)。次に当院と転院3分類群を比較検討した。検討項目は年齢,総入院日数,開始FIM,FIM利得(退院時FIM-開始時FIM),認知FIMである。それぞれ一元配置分散分析を用いて検討し,事後検定としてTukeyのHSD法を用いて多重比較検定を行い,有意水準5%未満とした(③)。なお統計解析にはSPSS 11.0 J for Windowsを使用した。
【結果】
①地域連携パス導入前後の比較では,自宅退院(導入前59.1±28.2日,導入後52.8±27.0日),転院(導入前42.0±23.5日,導入後33.8±18.9日)共に在院日数が短縮した(p<0.05)。②当院での自宅退院群と転院群の比較では年齢に有意差があった(p<0.05)。③当院と転院3分類群を比較する。年齢はB群が84.7±9.22歳で他群より有意に高い。総入院日数は当院44.8±27.8日,A群47.5±12.7日,B群108.7±23.3日,C群149.2±68.8日でB群,C群が有意に高い。開始FIM,認知FIMには有意差なし。FIM利得は当院13.1±13.0,A群10.4±8.02,B群28.3±21.4,C群29.5±10.7でB,Cが有意に高かった。在宅復帰率は当院100%,A群87.5%,B群80%,C群92.9%であった。
【考察】
地域連携パスを導入することで大腿骨頚部骨折患者の急性期病院における入院期間が短縮すると言われている。当院でも導入後,連携先医療機関へ転院した患者の当院在院日数が有意に短縮していた。また当院回復期病棟から自宅に退院した患者の在院日数も短縮された。その理由として当院からの自宅退院群と転院群の比較から年齢において自宅退院の方が有意に若く,開始時FIMには有意差が無かった。このことから当院から退院した群には改善予備能力の高い患者が多かったことが考えられる。一方で当院回復期病棟,他院回復期病棟,他院一般病棟,他院療養型病棟で在院日数やFIM利得に有意な差が出たことは興味深いことである。当院の地域連携パスは入院時に主治医が説明し,術後状態が安定した時点で当院のケースワーカーが患者家族と面談し転院先を決定している。転院先の決定は家族の意向を優先し,身体機能面は考慮されずに決定されている。今後はこの結果を参考とした転院調整をすることも有効であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
大腿骨頚部骨折地域連携パスは導入するだけでなく,導入後にも連携の質やリハビリテーションの効率を高める必要がある。また現在の当院での地域連携パスでは各連携先医療機関が各々にどのような結果で,どのような特徴があるのかを利用者に情報提供出来ることも必要であると考える。そのため,今回のように急性期病院,連携先医療機関の結果を定期的に検証することが必要であると考える。