第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

脳損傷理学療法7

Sun. Jun 7, 2015 9:40 AM - 10:40 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-1012] 脳血管障害患者の立ち上がり軽介助群と監視群における下肢筋力の検討

高尾和孝, 荒木督隆, 土山裕之 (医療法人社団浅ノ川金沢脳神経外科病院リハビリテーション部)

Keywords:ハンドヘルドダイナモメーター, 立ち上がり, 大殿筋

【はじめに】
ハンドヘルドダイナモメーター(Hand-Held Dynamometer:以下HHDとする)は,臨床では筋力測定を行うのに簡便で客観的な評価が得やすい。徒手筋力検査(Manual muscle test:以下MMTとする)は,MMT3以下の評価としては有用だが,MMT4以上になると主観的な部分が大きく,HHDが必要と報告されている。脳血管障害患者の立ち上がりは,移乗動作や歩行自立を目指す上でも極めて重要な動作といえる。立ち上がりに必要な筋肉として腸腰筋,大腿四頭筋,大殿筋,ハムストリングスが重要であるが,脳血管障害患者に対しての検討は,比較的少ない。今回,脳卒中片麻痺患者に対して立ち上がり軽介助群と監視群に分け,立ち上がりが軽介助から監視になる為に必要な筋肉に対して検討した。
【方法】
対象は,当院回復期リハビリテーション病棟に平成26年1月~6月に入院していた脳血管障害患者28名(立ち上がり軽介助群7例,監視群21例)とした。但し,腹臥位が困難な患者や運動指示に対して理解困難な患者は除外した。軽介助群の下肢Brunnstrom recovery stage(以下BRSとする)は,III1名,IV2名,V1名,VI3名,監視群の下肢BRSは,III1名,IV1名,V9名,VI10名であった。HHDは,日本メディクス製マイクロFET2を使用した。測定部位は,両腸腰筋,両大腿四頭筋,両大殿筋,両ハムストリングスとした。腸腰筋は,車椅子に座り,両上肢は組んだ状態とし,大腿遠位端にHHDで抵抗を加えた。大腿四頭筋は,車椅子に座り,両上肢を組んだ状態とし,下腿遠位端にHHDを使用し,ベルトで固定をサポートして抵抗を加えた。大殿筋は,腹臥位で膝関節90°屈曲位で股伸展方向に動かし,HHDを下腿遠位端で抵抗を加えた。ハムストリングスは,腹臥位の股関節中間位で膝関節90°屈曲位とし,下腿遠位端にHHDで抵抗を加えた。検者は1名とし,運動方向の練習を2回行い,測定回数は,2回とした。筋収縮は1~2秒間で力を入れ3秒間で最大筋収縮に達するように指示し,5秒間実施した。データの分析には,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準を危険率5%未満とした。
【結果】
立ち上がり軽介助群と監視群の非麻痺側の腸腰筋,大腿四頭筋,大殿筋,ハムストリングスの有意差(P>0.05)は認められなかった。また,麻痺側の腸腰筋,大腿四頭筋,ハムストリングスでも有意差(P>0.05)は認められなかった。しかし,麻痺側大殿筋において有意差(P<0.05)が認められた。
【考察】
立ち上がり動作は,体幹前傾,下腿前傾,腰背部伸展,股伸展等の関節運動により,可能となる動作である。座位から立位になるにつれ,徐々に支持基底面が小さくなる為,筋肉の協調的な活動が必要である。脳血管障害患者の立ち上がり軽介助群と監視群の非麻痺側腸腰筋,大腿四頭筋,大殿筋,ハムストリングスの有意差が認められなかった。このことから,立ち上がり軽介助から監視となる際には非麻痺側下肢筋力の影響は少ないと考えた。脳血管障害患者の立ち上がり軽介助群と監視群の麻痺側腸腰筋,大腿四頭筋,ハムストリングスでも有意差は認められず,大殿筋のみ有意差が認められた。大殿筋は,離臀から立位姿勢に移行する際に体幹を起こす為に必要な筋肉である。また,着座時にゆっくり座る為に働く筋肉としても知られている。今回,脳血管障害患者の軽介助群において離臀後に麻痺側前方へふらつく場面が多く見られ,その際に大殿筋が前方のふらつきを抑制する働きを担っていると考えた。また,離臀後に体幹前傾位のままである事が多く,体幹正中位へ起こす事にも大殿筋が重要であると考えた。よって,立ち上がり軽介助から監視へと向上する為には,麻痺側大殿筋の重要性は高いと考え,理学療法プログラムを立案する際に早期より配慮していく必要性があると考えた。