[P3-A-1033] 脳卒中患者の急性期病院退院時栄養状態が機能転帰に及ぼす影響
~CONUT Scoreとmodified Rankin Scaleを用いた検証~
Keywords:急性期脳卒中, 栄養障害, 予後調査
【はじめに,目的】
脳卒中ガイドライン2009では,入院時の低栄養は肺炎などの合併症を有意に増加させ,入院1週間後の低栄養が独立した予後不良因子となっている。また脳卒中患者は入院後に栄養状態が悪化すると報告されており,栄養状態が悪いと入院期間が長く機能予後が悪くなるとも報告されている。当院でもNutrition support teamを中心に栄養管理を行っているが,回復期病院へ転院した脳卒中の患者は先行研究同様低栄養の患者が増加し,低栄養患者ほどADLが低く在院日数も長くなっていたことが明らかになっている。しかしそれらの患者が回復期転院後,どのような経過を辿り退院したのか現状把握が出来ていなかった。そこで本研究では,急性期病院退院時のCONUT Scoreが回復期病院退院時のmodified Rankin Scale(以下mRS)や在院日数,退院先に関連するのか検討した。
【方法】
対象は2012年4月から2014年3月までに,自宅から当院急性期病院に入院し同法人回復期病院へ転院された脳卒中入院患者で,入院時点で重篤な感染症を有していた患者やデータ欠損がある患者を除外した62名(男性30名,女性32名,平均年齢75.0±9.8歳)とした。疾患内訳は,脳梗塞49名,脳出血10名,くも膜下出血3名であった。回復期在院日数と退院先を診療録から後方視的に調査し,栄養評価はGonzalezらが提唱した蛋白代謝・免疫能・脂質代謝の3つの生体指標から評価するCONUT Scoreを採用した。身体機能に関しては,良好な一致性と再現性が示されているmRSを採用し理学療法士が評価した。統計解析は,CONUT Scoreと回復期病院退院時のmRS・在院日数・退院先をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで正常と軽度以上の栄養障害の2群に分け,それぞれの項目にMann-Whitney検定を行った。
【結果】
全対象者の急性期病院退院時CONUT Scoreは2.0±1.4で,軽度以上の栄養障害と評価されたのは33名であった。また回復期病院在院日数は85.9±48.9日で,退院先は自宅41名,特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設が15名,療養型病院などの医療機関が6名であった。CONUT Scoreとの相関関係は,回復期病院退院時mRS(rs=0.47,p<0.01)と退院先(rs=0.55,p<0.01)に有意な中等度の相関が認められた。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで正常と軽度以上の栄養障害の2群に分けた検定では,回復期病院退院時mRS(p<0.05)と退院先(p<0.01)で有意差を認めた。栄養障害の有無に関わらず,急性期病院退院時と回復期病院退院時のmRSには有意差を認めた。(p<0.01)
【考察】
本研究は脳卒中患者の急性期病院退院時の栄養状態が,回復期病院退院時のADLや退院先に関連があるか検討した。その結果,急性期病院退院時のCONUT Scoreが回復期病院退院時のmRSと退院先に相関がみられた。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで2群に分けた検討では,CONUT Score正常群に対し栄養障害を有する群がADLが低い結果となった。これは急性期病院退院時のmRSを比較しても同様な結果となっており,急性期病院退院時からADLに差がある両群がその後追いつくことなく経過を辿ることを示している。栄養状態の推移に関しても,CONUT Scoreを回復期病院転院後に調査することはできなかったが,多くの症例で体重減少などがみられ栄養状態が著明に改善したとは考えにくい結果となっていた。その為栄養管理を含めた急性期リハビリテーションは,患者のスタートラインとして重視すべきであることが考えられた。また回復期病院在院日数に関しては,社会的因子が多く関わる項目であり栄養状態が反映しづらい結果になったと考える。
脳卒中ガイドライン2009では,発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められており,また量や頻度を増やすことも推奨されている。当院でもそのような観点から,プロトコールを作成し積極的なEarly mobilizationを実践しているが,摂食・嚥下障害の経口摂取困難な患者に対し一時的に絶食となる症例が多い為,機能面が低い患者ほど低栄養に陥ってしまう現状がある。その点が今後の課題であり,患者の機能転帰を向上させる可能性と考えている。その為急性期からNutrition support teamと協働し,ADLが低い患者ほど栄養状態に注意し運動負荷量にあわせた栄養摂取量を考慮する必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
急性期から栄養状態を含めてICFで評価し,生活機能を最大限に発揮できるように栄養管理を行う「リハビリテーション栄養」という概念を理解し,急性期から積極的な運動療法と栄養管理を行う事で,より良好な機能転帰を辿る可能性がある。
脳卒中ガイドライン2009では,入院時の低栄養は肺炎などの合併症を有意に増加させ,入院1週間後の低栄養が独立した予後不良因子となっている。また脳卒中患者は入院後に栄養状態が悪化すると報告されており,栄養状態が悪いと入院期間が長く機能予後が悪くなるとも報告されている。当院でもNutrition support teamを中心に栄養管理を行っているが,回復期病院へ転院した脳卒中の患者は先行研究同様低栄養の患者が増加し,低栄養患者ほどADLが低く在院日数も長くなっていたことが明らかになっている。しかしそれらの患者が回復期転院後,どのような経過を辿り退院したのか現状把握が出来ていなかった。そこで本研究では,急性期病院退院時のCONUT Scoreが回復期病院退院時のmodified Rankin Scale(以下mRS)や在院日数,退院先に関連するのか検討した。
【方法】
対象は2012年4月から2014年3月までに,自宅から当院急性期病院に入院し同法人回復期病院へ転院された脳卒中入院患者で,入院時点で重篤な感染症を有していた患者やデータ欠損がある患者を除外した62名(男性30名,女性32名,平均年齢75.0±9.8歳)とした。疾患内訳は,脳梗塞49名,脳出血10名,くも膜下出血3名であった。回復期在院日数と退院先を診療録から後方視的に調査し,栄養評価はGonzalezらが提唱した蛋白代謝・免疫能・脂質代謝の3つの生体指標から評価するCONUT Scoreを採用した。身体機能に関しては,良好な一致性と再現性が示されているmRSを採用し理学療法士が評価した。統計解析は,CONUT Scoreと回復期病院退院時のmRS・在院日数・退院先をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで正常と軽度以上の栄養障害の2群に分け,それぞれの項目にMann-Whitney検定を行った。
【結果】
全対象者の急性期病院退院時CONUT Scoreは2.0±1.4で,軽度以上の栄養障害と評価されたのは33名であった。また回復期病院在院日数は85.9±48.9日で,退院先は自宅41名,特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設が15名,療養型病院などの医療機関が6名であった。CONUT Scoreとの相関関係は,回復期病院退院時mRS(rs=0.47,p<0.01)と退院先(rs=0.55,p<0.01)に有意な中等度の相関が認められた。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで正常と軽度以上の栄養障害の2群に分けた検定では,回復期病院退院時mRS(p<0.05)と退院先(p<0.01)で有意差を認めた。栄養障害の有無に関わらず,急性期病院退院時と回復期病院退院時のmRSには有意差を認めた。(p<0.01)
【考察】
本研究は脳卒中患者の急性期病院退院時の栄養状態が,回復期病院退院時のADLや退院先に関連があるか検討した。その結果,急性期病院退院時のCONUT Scoreが回復期病院退院時のmRSと退院先に相関がみられた。また急性期病院退院時のCONUT Scoreで2群に分けた検討では,CONUT Score正常群に対し栄養障害を有する群がADLが低い結果となった。これは急性期病院退院時のmRSを比較しても同様な結果となっており,急性期病院退院時からADLに差がある両群がその後追いつくことなく経過を辿ることを示している。栄養状態の推移に関しても,CONUT Scoreを回復期病院転院後に調査することはできなかったが,多くの症例で体重減少などがみられ栄養状態が著明に改善したとは考えにくい結果となっていた。その為栄養管理を含めた急性期リハビリテーションは,患者のスタートラインとして重視すべきであることが考えられた。また回復期病院在院日数に関しては,社会的因子が多く関わる項目であり栄養状態が反映しづらい結果になったと考える。
脳卒中ガイドライン2009では,発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められており,また量や頻度を増やすことも推奨されている。当院でもそのような観点から,プロトコールを作成し積極的なEarly mobilizationを実践しているが,摂食・嚥下障害の経口摂取困難な患者に対し一時的に絶食となる症例が多い為,機能面が低い患者ほど低栄養に陥ってしまう現状がある。その点が今後の課題であり,患者の機能転帰を向上させる可能性と考えている。その為急性期からNutrition support teamと協働し,ADLが低い患者ほど栄養状態に注意し運動負荷量にあわせた栄養摂取量を考慮する必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
急性期から栄養状態を含めてICFで評価し,生活機能を最大限に発揮できるように栄養管理を行う「リハビリテーション栄養」という概念を理解し,急性期から積極的な運動療法と栄養管理を行う事で,より良好な機能転帰を辿る可能性がある。